平和賞に執着するトランプ氏、立ちはだかるノーベル委員会の独立性

平和賞に執着するトランプ氏、立ちはだかるノーベル委員会の独立性

【AFP=時事】ドナルド・トランプ米大統領が来月受賞者が発表されるノーベル平和賞に執着しているが、その選考を担うノルウェー・ノーベル委員会の厳格な独立性という障害にぶつかるかもしれない。委員会はAFPに対し、その独立性は揺るぎないと断言した。

平和賞に執着するトランプ氏、立ちはだかるノーベル委員会の独立性

1月の就任以来、トランプ氏はノーベル平和賞を受賞したいと明言している。ライバル視するバラク・オバマ元大統領が就任したばかりの2009年に同賞を受賞し、大勢を驚かせているからだ。

トランプ氏は事あるごとに、六つの戦争を終結させた自分は「ノーベル平和賞受賞に値する」と主張しているが、トランプ氏が解決する意向を示しているパレスチナ自治区ガザ地区とウクライナにおける紛争・戦争は依然として続いている。

ノルウェー・ノーベル委員会のクリスチャン・ベルグ・ハルプビーケン委員長はオスロでAFPのインタビューに応じ、「もちろん、特定の候補者に多くのメディアの注目が集まっていることは認識している」と述べた。

「しかし、それが委員会で行われている議論に影響を及ぼすことはまったくない」「委員会は各候補者をその功績に基づいて審査する」と続けた。

今年の受賞者は10月10日に発表される。

トランプ氏は、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相からアゼルバイジャンのイルハム・アリエフ大統領まで、複数の外国首脳に推薦、または支持されたことを指摘し、自身が受賞に値するという主張を裏付けている。

平和賞に執着するトランプ氏、立ちはだかるノーベル委員会の独立性

だが、今年のノーベル平和賞候補推薦は、トランプ氏の大統領就任からわずか11日後の1月31日に締め切られたため、それまでにトランプ氏を推薦した人がいたとすれば、極めて迅速に行動したか、先見の明を持っていたに違いない。

■電話

ベルグ・ハルプビーケン氏は、「推薦されることは必ずしも偉業ではない。偉業とは受賞者になることだ」「ご存知のとおり、推薦資格がある人はとても多い」と述べた。

推薦資格があるのは、世界各国の国会議員や閣僚、過去のノーベル平和賞受賞者、そして一部の大学教授などで、数千から数万人に上る。

今年のノーベル平和賞には、338の個人・団体が推薦されているが、候補者リストは50年間公表されない。

特にふさわしい候補者が最終候補リストに名を連ね、その後、専門家によって各候補者が評価される。

ベルグ・ハルプビーケン氏は、「委員会が議論する際、議論の枠組みを形成すのは専門家の知識を集めたデータベースだ。過去24時間で最も注目を集めたメディア報道がではない」「毎年多くの受賞運動があることは重々承知しており、いかなる受賞運動にも不当な影響を受けないよう、プロセスと会議の構成に最大限の努力を払っている」と述べた

委員長であるベルグ・ハルプビーケン氏は委員会を運営するが、ノーベル平和賞受賞者の選考では投票しない。

ノルウェーの経済紙ダーゲンス・ナーリングスリーブによると、トランプ氏は7月末、ノルウェーのイェンス・ストルテンベルグ財務相(前NATO事務総長)との関税をめぐる電話会談で、ノーベル平和賞問題に言及した。

ノルウェー財務省は電話会談があったことは認めたが、両者がノーベル賞について話し合ったかどうかについては明らかにしていない。

■受賞する可能性は低い?

ノルウェー・ノーベル委員会の委員5人はノルウェー国会によって指名されるが、委員会は党派政治や現政権とは独立して決定すると主張している。

好例なのが、ノルウェー政府の控えめな警告を無視して2010年のノーベル平和賞を中国の反体制作家、劉暁波氏に授与したことだ。これを受け、ノルウェーと中国の外交関係は長きにわたり冷え込んだ。

ベルグ・ハルプビーケン氏は、「ノーベル委員会は完全に独立して活動しており、個々の候補者について議論する際に、こうした事情を考慮することはできない」と述べた。

ノルウェーは、ノーベル賞の創設者であるアルフレッド・ノーベルが生涯にわたって擁護した多国間主義を固く信じているが、トランプ氏の「米国第一(アメリカファースト)」政策によってその理念は覆されている。そのため専門家たちは、トランプ氏がノーベル平和賞を受賞する可能性は低いと見ている。

ノルウェー国際問題研究所のリサーチディレクター、ハルバルド・レイラ氏は、「こうした圧力は通常、逆効果になる」「もし委員会が今、トランプ氏にノーベル平和賞を授与すれば、当然のことながら、こびへつらっていると非難され、委員会が主張する独立性も鼻であしらわれることになるだろう」と述べた。

8月には、ノーベル賞を受賞した歴史家3人がさらに踏み込み、トランプ氏が受賞すべきでない理由を列挙した。その中には、ウクライナに侵攻しているロシアのウラジーミル・プーチン大統領を称賛したことも含まれていた。

歴史家3人は論説記事で、「ノルウェー・ノーベル委員会のメンバーが正気を失いでもしない限り、トランプ氏がノーベル平和賞を受賞することはないだろう」と述べた。(c)AFP

【翻訳編集】AFPBB News