「タンパク質はなぜ大事なの?」「1日に必要なタンパク質はどれくらい?」「最適なタンパク質源は?」などの疑問に専門家が回答

近年は「健康のためにはタンパク質を摂取するべき」という考えが広く浸透し、スーパーやコンビニの棚で高タンパクなドリンクやエナジーバーを見かけることも増えています。しかし、タンパク質の重要性をうたう宣伝文句の中には、医学的ニーズではなく商業上のニーズに駆り立てられたものも多いとのこと。カナダのブリティッシュコロンビア大学で栄養学准教授を務めるジェームズ・マッケンドリー博士が、タンパク質を巡るさまざまな疑問に回答しています。

An excellent source of protein: Health, hype and hard truths

https://theconversation.com/an-excellent-source-of-protein-health-hype-and-hard-truths-259984

◆なぜタンパク質を摂取することが大事なのか?

タンパク質は炭水化物と脂肪と並び、大量に必要とされる三大栄養素の1つとされています。炭水化物と脂肪は主にエネルギー源として利用されていますが、タンパク質は体組織の構築と修復、免疫力の向上、酵素やホルモンといった分子の生成など、より構造的・機能的な役割を果たしています。

タンパク質はアミノ酸で構成されており、人間は体内で一部のアミノ酸を生成することができるものの、9種類のアミノ酸は食物からでないと十分な量が得られません。これらは「必須アミノ酸」と呼ばれ、毎日の食事で摂取する必要があります。

また、炭水化物や脂肪は体内に蓄えることができ、摂取量が減ってもある程度は体内の貯蔵分を使うことができますが、タンパク質には専用の貯蔵システムがありません。そのため、タンパク質は定期的に食事から補給する必要があり、もし断食や重病などによってタンパク質が摂取できなくなった場合、自身の筋肉を分解して必要なアミノ酸を放出します。マッケンドリー氏は、「これは最後の手段であり、タンパク質がいかに生存にとって不可欠なものであるかを物語っています」と述べました。

◆1日に必要なタンパク質はどれくらい?

人間が1日に摂取するべきタンパク質の量は年齢や身体活動レベルなどによって異なりますが、1日の推奨タンパク質摂取量はほぼすべての人に共通して「体重1kgあたり0.8g」となっています。つまり、体重60kgの人であれば1日に48gのタンパク質を摂取することが目標となります。

重要なのは、この推奨摂取量はあくまでタンパク質欠乏症を防ぐためのものであり、最適な健康状態を促進するためのものではないという点です。たとえば栄養素の利用能力が低下している高齢者や、筋肉の修復と成長のためにより多くのタンパク質が必要なアスリート、胎児にも栄養を与える必要がある妊婦などは、体重1kgあたり1.2~2gものタンパク質を必要とする場合もあるとのこと。

中には、「タンパク質の摂り過ぎは健康に悪いのではないか」と懸念する人もいるかもしれませんが、一般に健康な人であれば、タンパク質の摂取量を増やしても腎不全になったり、がんになったり、骨粗しょう症になったりすることはないとマッケンドリー氏は説明しています。

◆タンパク質を摂取するべきタイミングは?

一部の著名なインフルエンサーは、「運動後はすぐにタンパク質を摂取しなければ筋肉を増やせない」「閉経後の女性は運動後45分以内にタンパク質を摂取しないと無駄」といった主張を展開しています。しかし、実際のところ運動後すぐにタンパク質を摂取しなければ意味がないという主張に根拠はなく、筋肉の肥大に重要なのはタンパク質を摂取するタイミングではなく、全体のタンパク質摂取量が重要であることが研究によって示されています

運動後は少なくとも24時間にわたってタンパク質を摂取するのに十分な時間があるため、運動直後にプロテインシェイクをがぶ飲みする必要はないとのこと。マッケンドリー氏は、「毎日十分なタンパク質を摂取しているのであれば、毎日の習慣に合ったスケジュールで気軽に摂取してください」とアドバイスしました。

またダイエット的な観点で考えると、毎食のタンパク質摂取量を増やすことで満腹感が得られるため、結果的に食べ過ぎたり甘い物をつまんでしまったりする可能性が減るかもしれません。さらに、ダイエットをしたり食欲を抑える減量薬などを使ったりしている人は、急激な体重減少に伴って筋肉量も減ってしまいますが、積極的にタンパク質を摂取することで筋肉量の減少を抑えられることが示唆されています。

◆体に最適なタンパク質源とは?

タンパク質は肉や魚、卵、乳製品といった動物性食品から、豆類や全粒穀物、ナッツ、種子類、一部の野菜といった植物性食品に至るまで幅広い食品に含まれています。オンラインではしばしば、「動物性タンパク質の方が筋肉の成長をサポートする上では優れている」といった主張がされています。

確かに動物性タンパク質には必須アミノ酸がより多く含まれており、生体利用効率も高いため、体内で吸収・利用されやすい傾向があるとのこと。とはいえ、植物性タンパク質でもバランスよく多様な食物を食べることで、大事な必須アミノ酸をすべて摂取することは可能だそうです。

スーパーやコンビニではプロテインシェイクやエナジーバーなど、さまざまな「高タンパク質食品」を見かけるようになっています。しかしマッケンドリー氏は、「私のアドバイスは、多様な食材をバランスよく取り入れた、タンパク質重視の食生活を実践することです。これは食事ガイドラインとほぼ同じ方針です。タンパク質の摂取源が動物性か植物性かにかかわらず、朝食・昼食・夕食のそれぞれで、お皿やボウルの約4分の1をタンパク質源で満たすようにしましょう」とアドバイスしました。