【阿佐ヶ谷・gion】「少しだけ夜更かししたい日」に行きたい純喫茶

長い時間をかけて愛されてきた飴色のインテリアに、いつもの席。

たくさんの人が通り過ぎていく純喫茶には、楽しい日も悲しい日にも寄り添う優しさがあります。東京喫茶店研究所二代目所長の難波里奈さんが気分に合わせて、行きたい純喫茶について綴ります。第5回目は「夏の夕暮れを見た日に行きたい純喫茶」について。

写真はすべて著者撮影

夜更かしのさまざまな理由

誰かと食事をして、まだ話し足りないとき。少しでも自分の時間を取り戻して、ほっとしたいとき。あるいは、漠然とした不安な気持ちを抱えて、すぐに眠りたくないとき……。

夜更かししたくなる気持ちには、さまざまな理由があるように思う。

9月に入っても、なかなか落ち着く気配のない暑さ。日中に比べるとだいぶ過ごしやすくなってくる夜が嬉しくて、「しばらく漂っていたい」と思うときもある。そんなとき、緑色に輝くネオンサインに手招きされて、ふらりと吸い込まれたくなるのが、阿佐ヶ谷駅近くにある「gion」。

童話に出てくるようなファンシーな店内を彩る季節の花々、まるで満天の星空のように光る青色の照明、視線の先にまるで森があるかのように感じられる窓際。そして、なんといっても特徴的なのは、ピンク色の壁に囲まれた空間に設けられた、あのブランコ席。

ひそやかな逃避行

それに揺られる人たちを横目で眺めながら、何時間もかけて作られるスパイスやハーブの効いたソースをまとったナポリタンを掬いあげるのが至福のひととき。一緒に注文した南国の海のような色をしたソーダ水のきらめきに、このまま吸い込まれてしまいたくなる心地よい時間が流れている。

夜更かしは、誰にも邪魔されない自分だけのひそやかな逃避行。昼の喧騒では聞こえなかった小さな心の声や、隠れていた本当の気持ちが、ふわりと舞い降りてくる。眠りへ向かう世界にそっと背を向けて、もう少しだけこの場所で今日と向き合っていたい。

「こんな日には、あの純喫茶へ」#7

【gion】

東京都杉並区阿佐谷北1丁目3−3 川染ビル 1F