ほぼ話題にならず「万博船」乗ってみた率直な本音

「船で万博に行ける港」多数!実際には…, 数少ない定期航路に潜入!, 岩谷産業のハイテク船も就航している, なぜ、大阪・関西万博は「船で万博」という選択肢を準備したのか?

万博会場・夢洲から堺市に向かう船。ミャクミャクがラッピングされている(筆者撮影)

大阪・関西万博の会場(夢洲)に港が併設され、各地から船でアクセスできることをご存じだろうか?

【画像13枚】万博に行ける船、外観や船上からの光景はこんな感じ

混みあう地下鉄や渋滞に巻き込まれるバスに乗ることなく、水上をスイスイと移動して会場に到着できる。鉄道だと1時間近くかかるルートを、乗り換えなし・半分の時間で直通してくれる航路もあり、使い勝手はそれなりによい。

しかし、せっかく整備した「万博の船輸送」は、航路・運航本数ともに、当初の想定よりかなり少ないようだ。かつ、万博に間に合わせて完成した設備がことごとく稼働していないなど、当初の輸送計画の甘さ、行政の“お役所ぶり”が目立つ。

前編の本稿では、まず「万博航路」に乗って、心地よい川風を浴びながら、万博船の凄さを体感していこう。

「船で万博に行ける港」多数!実際には…

万博公式ホームページ内の「旅客船の運行情報」によると、会場がある夢洲へ直通する船の出航地点として「大阪湾広域」が神戸市・淡路島の4カ所、「大阪市内」からは「中之島GATE」「十三緊急用船着場」「天保山」など6カ所が案内されている。

しかし、よく見ると定期運航扱いは「淡路交流の翼港」「ユニバーサルシティポート・中之島GATE」「堺旧港」発着の3航路のみ。大半は「不定期(貸切)」扱いだが、問い合わせ先として記載されている各社ホームページをチェックしても、万博輸送に関連した情報は、軒並み出てこない。

「船で万博に行ける港」多数!実際には…, 数少ない定期航路に潜入!, 岩谷産業のハイテク船も就航している, なぜ、大阪・関西万博は「船で万博」という選択肢を準備したのか?

各社の旅客船の運航状況。4月20日時点(万博公式ホームぺージより)

どうやら、一般人が気軽に乗船できるのは、現状では「定期」と明記されている3航路だけのようだ。

「船で万博に行ける港」多数!実際には…, 数少ない定期航路に潜入!, 岩谷産業のハイテク船も就航している, なぜ、大阪・関西万博は「船で万博」という選択肢を準備したのか?

堺市と夢洲を結ぶ「万博シャトル」。堺旧港にて(筆者撮影)

「船で万博に行ける港」多数!実際には…, 数少ない定期航路に潜入!, 岩谷産業のハイテク船も就航している, なぜ、大阪・関西万博は「船で万博」という選択肢を準備したのか?

堺行き万博シャトルから眺める光景 背後に南港エリアのビル群が見える(筆者撮影)

数少ない定期航路に潜入!

さて、数少ない定期航路に乗船してみよう。まず、堺旧港~夢洲間(運航事業者「ユニバーサルクルーズ」)は、万博アクセスルートの「穴場航路」として使えそうだ。

南海本線・堺駅~万博会場間は、鉄道移動だと南海・JR・OsakaMetroなど複数回の乗り継ぎで、どの経路も1時間近くはかかる。

船なら難波も天王寺も通らず、海上を一直線に突っ切り、おおむね30分内で夢洲浮桟橋・会場に直通してくれる(桟橋~会場間の約1kmはシャトルバス乗車)。

しかも、「堺旧港」桟橋は堺駅から徒歩6分・400mという好立地にあり、鉄道からの乗り継ぎはきわめて便利だ。

「片道3800円」という料金がネックだが、大阪南港の工場街や高層ビル群を眺めながら、万博公式キャラクター「ミャクミャク」ラッピングの船で移動するというクルーズ船のような体験と割り切って使いたい。

筆者が乗船した際には「週末で乗船客4名」(うち家族連れ3名)ではあったが、もう少し利用されてもよさそうだ。

岩谷産業のハイテク船も就航している

別の航路も見ていこう。

万博ホームページに「中之島GATE~ユニバーサルシティポート~夢洲間」と記載されている航路には、岩谷産業が開発した水素燃料電池船「まほろば」が就航している。

「船で万博に行ける港」多数!実際には…, 数少ない定期航路に潜入!, 岩谷産業のハイテク船も就航している, なぜ、大阪・関西万博は「船で万博」という選択肢を準備したのか?

水素燃料電池船「まほろば」(筆者撮影)

「船で万博に行ける港」多数!実際には…, 数少ない定期航路に潜入!, 岩谷産業のハイテク船も就航している, なぜ、大阪・関西万博は「船で万博」という選択肢を準備したのか?

「まほろば」からは阪神高速・天保山大橋、天保山ハーバービレッジ・大観覧車などが一望できる(筆者撮影)

「岩谷産業」と聞くと、カセットコンロのボンベにプリントされた「Iwatani」ロゴを思い出す方も多いだろう。しかし同社は、実は国内の水素燃料の7割を供給するサプライヤー(供給元)でもあり、強みである水素事業を活かした「まほろば」を開発したという。

この「まほろば」は、水素(H₂)と空気中の酸素(O₂)を反応させ、発生した電気で水中のプロペラを動かす。普通の船だとガソリン・軽油を燃焼させるエンジンの「ドドドドド……」という轟音があるが、電気で動く「まほろば」は、至って静か。

揺れも少なく、天保山ハーバービレッジ、安治川河口などの景色を堪能しながら、船内や2階のデッキまで歩き回れるのは嬉しい。

かつ、水素ガスと酸素の反応で電気を作る場合は、普通の船のような排気ガス・CO2がまったく出ない。静かで揺れもなくスーッと進んで、かつエコな「まほろば」の性能・乗り心地は、岩谷産業が「動くパビリオン」と胸を張って宣伝するだけのことはある。

なぜ、大阪・関西万博は「船で万博」という選択肢を準備したのか?

「水都・大阪」とも呼ばれる大阪市は、河川・運河の総延長が146kmにも及ぶ。

市営渡船利用者は8航路で年間160万にも及ぶ大阪市で、鉄道・バスに次ぐ万博会場へのアクセス手段として船が整備されたのは、ある意味当然の流れとも言えるだろう。

ただ、この「万博の船運」には、さまざまな問題が発生している。万博誘致の決定後に喧伝されていた航路は開設されず、税金を投入した着岸設備は使われず、何よりも船会社があまり乗り気でなく……おもに万博の運営側・行政に起因する、万博の船運が「絵に描いた餅」となりつつある。

続く後編「万博「船ルート」が“超絶残念”に始まった本質要因」では、なぜ「絵に描いた餅」になりつつあるかを検証していこう。