なぜ観光バスツアーは「食べ放題」ばかりなのか? 若年層も熱狂する人気プランの秘密
観光バス食べ放題人気
観光バスツアーは手頃な価格で参加できる人気のレジャーだ。近年は若い世代の利用も増えている。観光バスツアーにはさまざまなプランがあるが、「食べ放題」というキーワードが目立つ。
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・寿司食べ放題
・海鮮浜焼き食べ放題
・ローストビーフ食べ放題
・ホテルビュッフェでのスイーツ食べ放題
・フルーツ食べ放題
など多彩だ。なかには複数の食べ放題をはしごするプランもある。食べられるのか心配になるほどだが、これらのプランは人気が高い。
なぜ観光バスツアーには食べ放題が多いのか。要因のひとつは、食べ放題がイメージしやすく、訴求力のあるキーワードだからだ。観光バスのプランは各社から多数提供されている。利用者はおおむね予算や行き先を決め、後はプランを眺めて気になったものを選ぶ。最初はツアータイトルを見て感覚的に選ぶため、インパクトのあるキーワードで目に止める必要がある。
近年の観光には「体験要素」が求められている。食も五感を使った体験といえる。スポーツやものづくり体験のように、体力や能力を問わず、老若男女誰もが共感しやすい体験である。寿司や焼き肉などのメニューは味がイメージしやすく、食べ放題になるインパクトも想像しやすい。
「おいしいものを思いっきり食べたい」
という根源的欲求に訴えかけるプランだ。
観光施設の集客戦略

食べ放題イメージ(画像:写真AC)
要因のひとつには食べ放題の根強い人気がある。食べ放題には不思議な高揚感がある。普段は我慢していることを思いきりできるため、ストレス発散効果が高い。
食べ放題では、多くの場合、元を取るための食べる量が計算される。損益分岐点が算出されると、多少無理してでもその量まで食べる。そこから無料になる領域で量を競うと、食事ではなく勝負事やスポーツの域に達する。食事の満足感だけでなく、
「得をした」
「店に勝った」
という不思議な達成感も得られる。
観光施設の視点で見ると、観光バスツアーは施設に直接乗り入れるため、多くの利用者を一度に集客できるメリットがある。食事を大幅にディスカウントしても、併設の物販でお土産を購入してもらえば売上を稼げる。客数が読めるため、販売計画も立てやすい。閑散期対策としても有効だ。
また、個別に食事を提供するより、メニューを一択にした食べ放題の方が大量仕入れできる。食事を1か所に山盛りにしてセルフサービスにすることで、人件費や経費も節約できる。
この観光バスツアーによる集客スキームは従来型の手法だ。昔は観光バスツアーに集客が左右され、施設側は誘致活動を激化させ、ディスカウント合戦になった。しかしFIT(個人旅行客)が増えはじめると、過度のディスカウントは疑問視された。団体を受け入れることでイメージダウンを避ける施設も現れた。
近年、観光バス人気はFITによって復活している。一般的な観光施設にとって、大量集客できる魅力は依然として大きいといえる。
団体旅行と食文化変遷

食べ放題イメージ(画像:写真AC)
高度経済成長期からバブル初期までは、現在よりも団体旅行が多かった。社員旅行や自治会の団体旅行が毎年定期的に行われ、観光バスツアーが主流だった。
当時の観光バスツアーでは、食事はあまり重視されなかった。昼食は社員食堂のような団体専用大型食堂でとり、安価なメニューが提供されることも多かった。幹事は限られた予算でやりくりし、食事の優先順位は低かった。
当時、多くの男性の関心は「食」より
「酒」
だった。社員旅行でサロンバスを用意すると、出発と同時に後部座席は持ち込んだ酒やつまみで酒場と化す。昼食休憩のときにはすでに酔っている人もおり、女性社員や飲まない若手社員は眉をひそめた。しかし酒好きの男性社員にとっては、飲みたいだけ飲める高揚感があった。さらに夕食には宿で大宴会が開かれ、翌日は二日酔いでダウンする人も多かった。
観光バスツアーの利点のひとつは、観光施設や昼食場所、宿の前まで直接乗り入れてくれることだ。人目にあまり触れず、長く歩く煩わしさもない。二日酔いならバスのなかで寝ていればよい。この点は現在の食べ放題ツアーにも共通する。満腹でもすぐにバスに乗り、次の目的地に連れて行ってくれる。
「飲んで、飲んで、飲みまくる」
「食べて、食べて、食べまくる」
と、日頃のうさを気兼ねなく晴らせる高揚感は、過去も現在も変わらないのかもしれない。
近年は大手ファストフードチェーンでも食べ放題が増え、人気は拡大している。一方で、意識の高い層からはフードロスなどSDGs(持続可能な開発目標)の観点で疑問視する声もある。最近は取り皿に残すと罰金を課すなどの対策もあるが、食べ放題の時間中は食材を切らせないため、残ったものの扱いが気になる。しかし、高額食材を頻繁に食べられる人は少なく、食べ放題は一般消費者のたまの贅沢だ。対応策を講じてもらい、多少は大目に見てもらいたい。
物価高下の旅行戦略

観光バスイメージ。生成AIで作成。
現在、食品や日用品の値上げで物価は高騰しており、家計の節約志向は徐々に高まっている。しかしホテルなどの宿泊代は強気に高騰し、一般消費者には手が届きにくい状況だ。
・家族旅行の回数を減らす人
・日帰りや近場に切り替える人
も出てきている。テーマパークなど大型レジャー施設も高額化が進み、食事やお土産代、交通費を含めると、ひとり2万円以上の予算が必要になることもある。高額支出できる人だけ来てほしいという割り切り感も否めない。
観光バスツアーも値上げはあるが、内容を考えるとまだまだ値ごろ感のあるレジャーだ。予算1万円程度で複数の観光地を巡り、食べ放題も楽しめ、さまざまなお土産がもらえることもある。もちろん交通費込みだ。このように庶民の味方である観光バスツアーに、庶民の支持が高い食べ放題が組み込まれるのは必然ともいえる。
今後も価格と内容の両面で充実した、魅力的な観光バスツアーのプランが増えることが期待される。