車持たない40代夫婦「低収入で豊かに暮らす秘訣」

少ない収入でも満足感を得られる、40代夫婦が実践する方法とは…?(撮影:メグミ)
生活の定番品を決めて無駄な支出を回避
買い物が好きだった頃、とにかく欲しいからと収入に見合わない散財も数多くしていました。今考えるとなんて無謀なことをしていたのだろうと思います。
【画像を見る】「手放し」を通して自分の定番を決めた深尾双葉さん。ご夫婦で紡ぐ、五感が満たされる暮らしの様子はこちら
そんな不毛な時代を経て、無駄な買い物をしないために決めたのが、自分の定番品。食材も洋服も消耗品も、ある程度自分の定番となる物を決めてからは、不要な物をほとんど買わなくなりました。今では、定番の物だけで十分完結できると実感しています。
時には100円ショップで買っていた排水口のネットを無印良品の物にするなど、機能的に優れている物や価格的に納得できる物へとアップデートするために定番を変えることはありますが、あくまで置き換わるだけ。同じような用途の物を何種類も買ったり、飾るだけになりそうな物を増やしたりということは、全くしなくなりました。
息をするように買い物をしていた頃は、「あれもいい」「これも試してみたい」と、目新しい物を買っては時間も経たずして飽きてしまったり。先のことを考えず、その時の欲求のままに手に入れていました。
ただ、納得のいく定番にたどり着けたのは、数多く試した経験があったからこそだとも思っています。これまでの失敗はきっと今に至るまでの勉強代だったと考えるようにしています。

基本食材を決めて買うことで、冷蔵庫の中も常にすっきりした状態に(撮影:メグミ)
ほとんどしない外食は、行くなら妥協しない
お金の使い方もずいぶん変わりました。たとえば外食。
以前は街中に住んでいたこともあり、仕事後や休日など週の半分くらいは外食をしていました。
それが今では、ほとんど外食をしなくなりました。郊外に引っ越したことと出費を抑えたいという思いが大きいのですが、台所や冷蔵庫が整って心地よい空間になり、食材や器と向き合う料理の時間が面白くなったので、自然と3食自炊が当たり前になっています。
居酒屋に行けば、少なく見積もっても1人3000円、夫婦で6000円以上はかかるでしょう。居酒屋の料理や雰囲気は好きですが、それだけのお金があれば高級な食材だって買えますし、同じお金を使うのならば、それを使って家で美味しいものを作ろうと思ってしまいます。

発酵食品を取り入れた料理を作るなど、嫌いだった食事作りに興味が湧くように(撮影:メグミ)
だからこそ、外食をする貴重な機会には、絶対に妥協しないと決めています。心から満たされる料理を味わいたいというシンプルな願い。値段の高い安いにかかわらず、心も体も喜ぶ料理。間に合わせでお店を選んだり、中途半端にお金を使いたくないというのが、我が家の考えです。
また、旅先で食事をする時も、とっておきのお店を選ぶようにしています。以前行った旅先で、驚くほど美味しい餃子に出合いました。食の勘が冴えている夫が見つけたお店です。暑さと疲れで食欲のなかった私も、この時ばかりは夢中で頬張りました。この餃子のおかげで旅がより良い思い出になったことは間違いありません。旅先でとっておきの物を食べることで、食の体験を色濃く記憶に留めることができると思います。

自炊は無理せず健康的なものを、外食はとっておきのスペシャルなものを選ぶ(撮影:メグミ)
低収入でのやりくりの鉄則は、固定費を下げること
現在は夫婦ともにフリーランスなので、正直、収入は不安定です。2人で暮らし始めた時は会社員でしたが、家賃やローンといった固定費はできるだけ少なくすることに決めました。
夫がまた会社員に戻ったとしても、この方針は変えないつもりです。心地よい生活を続けるには、背負い込むものはなるべく減らし、できるだけ身軽でいた方がいいと思うのです。そんな価値観については、夫婦間でもよく話し合って一致しています。
たとえば我が家は車を持っていません。私が暮らしている石川県は車社会で、車は1人1台という感覚なので時には珍しがられます。固定費を減らしたい私たちにとって、車の維持費は大きな出費。もとから持たない暮らしだったので、昔も今も、特に違和感や不便さは感じていません。物件選びの時点で、公共交通機関と街中とスーパーまでの距離はしっかりとチェックしていました。どこに行くにも便利で快適な暮らしです。
キャンプに行く時だけはレンタカーを利用しますが、普段はバスと徒歩と電車で、遠くまで出かけています。
車を持たないようにしたら些細な幸せに気づいた
車を持たないで良かったことの1つが、街の観察が楽しいということ。車だと見過ごしてしまうような場所や街並みも、歩いていれば気になった時に、自分のペースで立ち止まることができます。
足元の小さな草花を眺めたり、気まぐれに知らない裏路地に入ってみたり。自分の興味ですぐに行動できるのは、徒歩ならではの自由さです。今では、「趣味は散歩」と言うほど歩くことが好きになりました。

車社会の地域でも徒歩や公共交通機関を組み合わせることで困らず暮らせる(撮影:メグミ)
旅行先でも、観光スポットより住宅街や商店街を歩くことが好きです。散歩しながら、古びた建物を見つけては、何かのアイデアの種になりそうだと写真におさめたり、味のある小さなお店を覗いて毎日どんな会話がされているのか思いを馳せたり。家もお店も、暮らしの息づかいが感じられる存在です。歩きながらにして、知らない土地で暮らす人たちの生活に触れられる気がして心惹かれるのだと思います。
子どもの頃、休日の早朝に父がよく家の近くの大きな公園に連れていってくれました。双眼鏡を片手に鳥のさえずりを聞きながら、季節によって姿を変える木や花を観察して歩き回ることが週末の楽しみでした。そんな思い出があるからこそ、「歩く時間」を大切にしているのかもしれません。
今も天気の良い日は、家の近くにある大きな川沿いをよく散歩しています。なんてことない普通の川なのですが、金木犀の香りに秋の訪れを感じたり、寒さが緩んできたことを風で感じたり。
お金をかけなくても、四季の変化を楽しめるだけで日常は豊かになるもの。遠くに行かなくても、ほんの数十分の散歩が気分転換になっています。
物質的な物にばかり興味があった自分にとって、こうやって身の回りの何気ないことに敏感になってきたのは、精神的にも健康になってきた証拠だと感じています。
お金を使わなくても、五感を働かせればいくらでも楽しさは見つけられる。ならば最低限の収入があれば、もうそれで大丈夫。十分に幸せなのだと思えるようになりました。

街中を散歩する時間がせわしない日々の余白を生み出す(撮影:メグミ)