まるで"ケンタ"な「フライドチキン」自作する極意

カリッとした衣がごちそう。鶏手羽元は安価な部位なので、コストパフォーマンスがいいのも自作するメリットです(写真:筆者撮影)

料理の腕を上げるために、まず作れるようになっておきたいのが、飽きのこない定番料理です。料理初心者でも無理なくおいしく作れる方法を、作家で料理家でもある樋口直哉さんが紹介する『樋口直哉の「シン・定番ごはん」』。今回は、みんな大好き、ケンタッキーフライドチキン(KFC)スタイルとも呼ばれるタイプのフライドチキンをご紹介します。

こしょうだけでも十分おいしい

フライドチキンはアメリカ南部の伝統料理。ブロイラーが普及する前の鶏肉は高価な食材でした。ただ、社会階層が高い人たちはムネ肉を食べるので、骨や皮の多い硬い部位は比較的安価で、それらの部位を揚げたフライドチキンは庶民のごちそうでした。

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1950年代に入ると、ファストフードとしてのフライドチキンが広まります。カーネル・サンダースによるKFCはその代表格。今では日本でもおなじみの料理になりました。

カーネル・サンダースの功績は2つ。当時、硬かった鶏肉を柔らかく揚げるための圧力揚げ鍋開発への資金提供と、門外不出とされるスパイスの配合です。

圧力揚げ鍋が自宅にないからといって諦めないでください。現在の鶏肉は当時よりずっと柔らかくなっているので、普通の揚げ鍋でもおいしく揚げられます。

次に考えるべきはスパイスの配合。KFCは11種の秘伝スパイス&ハーブと公言していますが、全種類をそろえるのは大変ですし、買っても使い切れるか心配なところ。そこで今回は、主要なスパイスであるこしょうだけで揚げ衣とします。

シンプルフライドチキン

材料 2人分

鶏手羽元  400g程度

卵白    1個

薄力粉   100g

片栗粉   25g

ベーキングパウダー 4g

塩     6g

うま味調味料 2g

テーブルコショー 5g

秘密の材料が卵白です。卵白で鶏肉をコーティングすることで、凝固した卵のタンパク質が肉汁を吸収するので、衣のカリカリ感が生まれます。

黒こしょうだけ、あるいは白こしょうだけでも作れます(写真:筆者撮影)

スパイスに使ったのは、エスビーの「テーブルコショー」です。これは白こしょうと黒こしょうがブレンドされたこしょうで、粒子が細かいのが特徴。フライドチキンらしいスパイス感を引き立てます。

粉を計量し、混ぜます。ベーキングパウダーを加えることで衣が膨らみ、クリスピー感が出ます。うま味調味料がなければ、市販の粉末タイプのコンソメで代用することも可能です。

冷めてもカリカリ感を残すための揚げ方

卵白は泡立て器やフォークなどで軽く泡立て、コシを切っておきます。この段階で揚げ油を140℃に熱しておきます。

卵黄は卵かけごはんやマヨネーズに利用してください(写真:筆者撮影)

鶏肉に卵白をまとわせたら、ブレンドした粉を表面にまぶします。140℃で8分揚げます。途中、5分経ったら裏返してください。

ちなみに、マイクロソフトの元CTO(最高技術責任者)で調理科学についての大著『Modernist Cuisine』を著したネイサン・ミアボルドは「油は揚げ物で最も重要な材料」とし、具体的には新しい油を使用する場合は古い油を小さじ数杯加えるとフライドチキンらしい風味が出ると述べています。

8分経過したら取り出し、余熱で3分さらに加熱を進めます。手羽や骨付きのモモ肉など結合組織(コラーゲン)の多い肉の部位は、じっくり加熱することでそれがゼラチン化し、ジューシーになりますし、食べたときの骨離れもよくなります。

この段階では揚げ色はそれほどついてなくても大丈夫です(写真:筆者撮影)

肉を休ませている間に、揚げ油の温度を180℃まで揚げ、二度揚げします。休ませている間に内側の水分が外側に移行しているので、それを蒸発させつつ、最終的な揚げ色を調整します。二度揚げすることで、冷めてもカリカリ感が残ります。油を切ったら出来上がりです。

二度揚げは手間ですが、行う価値は十分にあります(写真:筆者撮影)

オールスパイスを加えると、さらに「らしく」

今回はスパイスにこしょうだけを使いましたが、さらに再現性を高めるのであれば、オールスパイスという香辛料を0.5g加えるといいでしょう。

オールスパイスの名前の由来は「シナモン、クローブ、ナツメグの3つの香りを併せ持つ​​」というもので、単独のスパイスですが複雑な香りを持っているので「らしい」香りが比較的簡単に出せます。

さらに1gのパプリカパウダーで甘みとうま味、キャラウェイ、セージ、タイムで爽やかさを……と工夫していくとさらに近づくのですが、家庭ではこれぐらいでとどめたほうが無難かもしれません。鶏手羽元は安価な部位なので、コストパフォーマンスがいいのも自作するメリットです。