離婚を告げたら息子が言った「俺はあの家が嫌いだった」 片づけで人生を変えた西崎彩智さんの原点

「家が片づかない」「どこから手をつけていいかわからない」。そんな悩みを抱える人は少なくありません。お片づけ習慣化コンサルタントの西崎彩智さん(58)は、「片づけは単なるテクニックではない」と指摘します。これまでに1万人を超える受講者を見てきた西崎さんに、片づけとの向き合い方をお聞きしました。

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――まずは西崎さんについて、教えてください。

 24歳で結婚してから、44歳まで専業主婦として過ごしました。「お母さん」として、子育てや家事をする生活を20年続けていました。46歳で離婚し、事業を始めたのは48歳のころでした。

 起業のきっかけは、自分の実体験です。「片づけができていない人は、何か悩みがあるのではないか」という感覚を抱いた時期がありました。

――つまり、西崎さん自身も片づけができていない時期があったということですか。

 そうです。父親がきれい好きだったので、子どものころから整理整頓や片づけをするように言われて育ちました。自分としては苦ではなかったし、得意なほうだとも思っていたんです。

 その気持ちは結婚後も変わらなかったのですが、今思うと、私はきれいにした自分の家に友達が遊びに来るのが好きだったんですね。なぜ好きかというと、褒めてもらえるからなんです。

 当時は仕事もしていないし、夫からも「家事はやって当たり前だ」と言われていました。でも、友達は家に来るたび、部屋がきれいだと褒めてくれる。それがすごくうれしかったんです。

――24時間365日、「やって当たり前」と言われるのは精神的にもすり減りますね。

 44歳になるタイミングで夫がリストラにあい、急に家にいるようになりました。それまでもうまくいっていなかった夫が家にいることがストレスフルで、どんどんけんかになるわけです。

 小学生、中学生、高校生と3人の子どももいて、パパはリストラされたまま。私は専業主婦だなんて、生活ができません。とりあえず仕事を見つけなければと、時給800円でヨガスタジオの受付を始めました。

 働き始めたら、社会って優しいんだなと気づきました。私がちょっと何かすれば褒めてくれる。感謝されるし、すっごい楽しくなってきて、仕事をやればやるほど家の中が散らかり始めました(笑)。

――仕事にエネルギーを向けていると、どうしても掃除や片づけがおろそかになってしまいますよね。

 おまけに家には嫌な夫がいるので、帰りたくないわけです。それで仕事に逃げるのですが、家はますます散らかっていく。ある日ふと、好きだった家のことを嫌いになっている自分に気づきました。

■180センチを超える息子が号泣

――そこから約2年後に離婚されたんですよね。お子さんにはどう伝えたんですか。

 当時中学3年生の息子には、学校まで迎えに行って、車の中で伝えました。「ママ、今日離婚したんだよね」と言ったら、それまで何があっても絶対に泣かなかった180センチを超える大きな息子が号泣し始めたんです。

 そのときに言われたのが、「俺はあの家が嫌いだった」「おとんもおかんも自分のことばかり主張して、お互いを思いやらない」ということでした。私は謝ることしかできませんでした。

――息子さんの本音を初めて聞いた瞬間でもあったんですね。

 そんな気持ちをわーっと話したあと、「もう友達を呼んでもいい?」って聞かれたんです。専業主婦のときはいつも家がきれいだったので、息子の友達もよく遊びに来ていました。でも、荒れた部屋を見られたくないと思って、「友達を呼ばないで」と言ってしまったんです。

 家がどんどん散らかっていくなかで、息子はそれでも踏ん張っている。私もこのままではいけないなと気づいたんです。

――お子さんの言葉が西崎さんを奮い立たせたんですね。

 息子はバスケをしていて、7月が引退のタイミングでした。その打ち上げを家でやろうと話して、離婚してからちょうど45日後に、2年近く呼んでいなかった友達を集めてお祝いをしました。

 その経験を通じて気づいたのは、片づけはやり方を知っていても、生活がうまくいかない状態ではうまくできないということでした。私が片づけをできなくなったのは、「夫との関係」という現実から目を背けていたからなんです。

――そこから起業に至ったんですか。

 離婚することや夫との関係に苦しんでいたことは、周りに話していませんでした。家庭内の恥ずかしい話をママ友に言うなんて、と思っていたんです。でも、離婚後にふと当時感じていたことを話したら、他のママ友たちも悩みを打ち明け始めて……。世の中の女性は誰にも言えない苦しみや問題を我慢しながら生きているのかなと気づいたことが、起業のきっかけです。

――言えずに抱えていることがたくさんありますよね。

 離婚してから、「お母さんをやめる宣言」をしました。父親の役割も担わないといけなくなったから、今日から家族はチームになります、と。一人ひとりに役割があって、私ができないことは助けてほしいと子どもたちに初めて頭を下げました。そこから「頑張らない」ことを覚えていった気がします。

――育児もそうですが、つい頑張りすぎてしまいますよね。

「すべてきちんとやらなければ」と思うことをやめてから、家族が協力的になったように感じています。みんなが当事者意識を持って暮らすと、生活がガラリと変わるんです。

――1万人を超える人と片づけを通して向き合ってきました。共通点はありましたか。

 最初はみんな、片づけの方法が知りたいと相談してきます。ただ、それは表面的なことに過ぎません。話を聞いていくと、何かに執着していたり、家族とうまく話ができていなかったりと、本当の原因が見えてくるんです。「片づけ」という表層の下にいろんな問題があるのだと思います。なかでも多いのは、やはり夫婦関係と子どもの教育に関する悩みですね。

――自分や家族と向き合うことが、「汚部屋」の解消にもつながるんですね。今日はノウハウもお聞きしたいなと思っておりまして……。

 メソッドも気になりますよね(笑)。一つ挙げるとすれば、いきなり収納グッズは買わないことでしょうか。インスタグラムを見ていると、良さそうな棚がおすすめで流れてきたりしますよね。ついつい買っちゃっていませんか? あれはダメですよ。後は、何でもかんでも捨てれば片づくという考えも違います。

 どんな家に暮らしたいかゴールを決めて、そこに向けて必要なものを考えてください。収納棚などのグッズは手段でしかありません。棚を買うことを目的にしていては、ずっと片づかないままです。

――耳が痛いです。

 片づけは、「お祭り」にしないでください。お祭りというのは、長期休みにごっそり片づけて、また散らかって、また片づけて……と繰り返すことです。結局、日々の時間をどう使っていくかに尽きるんです。いかに習慣化できるかがポイントですね。

――なんでもかんでも捨てれば片づくわけではないとのことですが、とはいえものは減らしたい。捨てることを片づけと結びつけるには、どうすればいいのでしょうか。

 ものを減らしても片づかないのには、大きな理由が二つあります。まず、ものの住所が明確に決まっていないことです。ペン1本とっても、「なんとなくこの辺に置いておく」という感じでは、ふらふら家の中をさまようし、それが家族が揉める原因になったりもします。

 もう一つは、ものの入り口を断つことです。「減らしても減らしても増えていく」という悩みをよく聞きますが、放っておけば増えていくのは当たり前なんです。学校のプリントや出張先のお土産などが、気づかない間に増えていくのは自然なこと。入ってくるものと出ていくもののバランスを取ることも大切です。

 おすすめしているのは、新しくものを買うときには、どうやって捨てるかのゴールを意識することです。ものの入り口と出口をセットで考えてみてください。

――祖父母時代からのものが捨てられないという悩みも届いています。

 実家の片づけ問題に悩む人は多いですね。私は父親が亡くなるタイミングで実家を処分したのですが、片づけ自体は前もって進めていたんです。父もきれい好きだったので、70歳を超えてすぐ、何を処分していくかを話し合っていました。

 ただ、一度地雷を踏んでしまったことがあります。ふとしたときに、「パパがいなくなったら」という言い方をしてしまったんですね。もともと自分の死後を考えて整理を進めてはいましたが、私の一言で傷つけてしまった。実家の片づけというのは、「あなたがいなくなること」が前提の話ではあります。でも、豊かな老後を暮らしていくために片づけるんだということを意識しなければいけないなと反省しました。

――大切なことですね。

「重たい鍋は持てない」「スーツは着るタイミングがない」とか言ってしまいがちじゃないですか。でも、「これを使いたいかどうか」という判断のほうが心地よく片づけも進められます。子どもの一方的な決めつけは、すごくさみしくなるんですよ。

――リアルな相談をしてもいいですか? 我が家には娘のために祖父母が買った雛人形があるんです。かなり存在感があって、どうしようかなと……。

 お孫さんを思ってくれたものをむげにできないという気持ちはよくわかります。まずは、お嬢さんがどうしたいかから、話してみることがいいのかなと思います。

 私も似たような経験があって、大きな雛人形を買ってもらったのですが、娘がいらないと言い出したんです。両親には、「買ってくれたのに申し訳ないのだけど、本人がいらないと言っている」「もう少し小さいのを買ってもらえたらうれしい」と伝えました。1万円ぐらいの小さなお内裏様とお雛様を買ってもらったのですが、娘は一人暮らし先にも持っていくほど気に入っています。そんなふうに代替案を出してみるのも一つの手ですよね。

――「メルカリで売れるのではないかと思って捨てられない」という悩みもありました。

 メルカリで売るなら、期限を切ることが大事ですね。その日までに売れなければ店頭に持ち込む。それもダメなら引き取ってもらう。そんなふうに段階をつけるといいかもしれません。

「売れるかも」「痩せたら着よう」もあるあるですよね。

――「片づけの本を読んで、頭ではわかっているのにできない」という切実な声も届いています。

 本やユーチューブでノウハウを学んでも、行動しないと結果は変わりません。まずは引き出し一つ、10分でいいからやってみてください。お風呂のお湯をため始めて音楽が鳴るまでの間とか、テレビのCM中とか、スキマの時間でやっているうちに少しずつ習慣になっていきますよ!

(聞き手/AERAブランドプロデューサー・木村恵子、構成/AERA編集部・福井しほ)

※9月12日に東京・築地の朝日新聞社で開催したイベント「アエラボカフェ by AERA Woman」の講演から構成しました。

■アエラボカフェご応募フォームはこちらです↓

https://x.gd/dld9m

【10月】

日時:10月21日(火)19時~21時

テーマ:50歳からをどう生きるか/ゲスト:小倉弘子さん(元TBSアナウンサー)

【11月】

日時:11月11日(火)19時~21時

テーマ:テーマ:女性が自信をもってキャリアアップする方法

ゲスト:梶原奈美子さん(ユニリーバ・ジャパン株式会社、キリンビール株式会社を経て、2013年にスタンフォード大学でMBAを取得)

※場所はいずれも朝日新聞東京本社(築地)です。

※いずれも無料でご参加いただけます!