「未婚の中年男性」の幸福度が低い悲しい理由

(写真: プラナ/PIXTA)
幸福度(主観的に自分は幸福であると感じられる割合)には、共通の法則性があります。
【画像でわかる】40代の年収別幸福度を調査した結果
若い時の幸福度は高いが、加齢とともに低下し、40〜50代で最低となり、60代以降高齢者になると復活するというものです。これを「幸福度のUの字曲線」と言います。
不思議なことに、この傾向は日本だけではなく、アメリカでの研究でも同様です。古くは、1970年代にアメリカの経済学者リチャード・イースタリンが提唱しており、時代によって変わるものでもないようです。
幸福度が低下する要因は?
加齢によって中年期に幸福度が低下する要因は、仕事や家族、子育てなど外部ストレス要因としての責任やプレッシャーが増えることに加え、40代過ぎくらいで若い頃のように肉体的に無理もきかなくなり、健康を損なう可能性が高いことにもよります。
一方、高齢期に復活するのも、仕事や人間関係などの外部ストレス要因から解放されるとともに、記憶力の低下などもあり(嫌な記憶も忘れてしまう)、主観としての幸福度があがるとされています。
ただし、幸福度に影響があるのは年齢だけではありません。男女別でも異なりますし、未婚か既婚かという配偶関係状況によっても違いがあります。
全国20〜60代の未既婚男女を対象とした私の独自調査から、男女年代別未既婚別の幸福度(「幸せである」と「まあ幸せである」のTOP2合算)の割合をまとめたものが以下です。
どれも、若い時に幸福度が高く、40〜50代で下がり、60代以降で復活するというUの字曲線の法則通りですが、男女で比べれば、幸福度は男より女の方が高く、未既婚で比べれば、未婚より既婚の方が高くなっています。特に、未婚男性はすべての年代において幸福度がもっとも低い位置にあります。40代未婚男性で幸福なのはわずか35%しかいません。
つまり、男女年代別配偶関係別でもっとも幸福度が低いのは、40〜50代の未婚男性ということになるのです。
ちなみに、2014年から10年以上同様の調査をしていますが、個々の幸福度割合の数値は多少前後するとはいえ、40〜50代未婚男性の幸福度がもっとも低いという傾向は不変です。
「中年未婚男性だけが特に幸福度が低い」のはなぜ?
なぜ、未婚の中年男性だけがこれほどまでに幸福度が低いのでしょうか。今回は、「中年未婚男性だけが特に幸福度が低い件」について深掘りしたいと思います。
ここで短絡的に考えてはならないのは、幸福度が既婚>未婚だからといって、「結婚すれば幸福になれる」という因果は存在しないということです。むしろ、因果としては「幸福度が高いからこそ結婚していく」と言えます。
よくよく考えれば当然のことで、たとえば婚活中の人の目の前に見るからにどんよりとした不幸そうな人が表れて、「僕と結婚してください」と言われても、承諾する人はいないでしょう。
「結婚したら幸福になれる」という考え方は、「いい会社に入ったら幸福になれる」「お金持ちになったら幸福になれる」と同様、フォーカシング・イリュージョンといって、ある特定の状態を手に入れれば幸福になれると信じ込んでしまう思考の偏向性を指します。
しかし、「〇〇になれば幸福になれる」という言葉は一見ポジティブなようでいて、逆に、「〇〇でない自分は幸福になれない」と自分に呪いをかけるようなものです。
本来、幸福感とはある特定の状態にあるかないかという条件に左右されるものではないはずです。
40代未婚男性の年収別幸福度
そうは言うものの、たとえば年収と幸福度の相関を見ると、年収が高くなればなるほど幸福度も高まるという正の相関は現実的に存在します。40代未既婚男性に絞って、年収別幸福度の推移を示したものが以下のグラフです。
確かに、年収が増えれば増えるほど幸福度はあがっています。が、注目すべきは、未婚と既婚の男性とでは、たとえ同じ年収であっても幸福度が大きく違う点です。特に、低~中間層年収帯では既婚より未婚の方が20ポイントも低い。未婚の幸福度が既婚に追いつくのは年収1000万円以上からです。
このように、年齢が同じでも、年収が同じでも、未既婚中年男性の幸福度に大きな差が生じるのはなぜでしょう。
より深掘りしていくとその要因の一端が見えてきます。
前述した私の独自調査から、40代の未既婚男性に絞って、「経済力の充実度」「仕事の充実度」「友人関係の充実度」「自己の能力への自信度」の項目で、それぞれ「充実」「普通」「不満」別の幸福度をクロス集計して比較してみました。
当然ながら、どの指標においても充実している場合は、たとえ未婚であっても幸福度は高くなり、ほぼ既婚と遜色ありません。差異が大きくなるのは、経済力、仕事、友人関係のいずれにおいても「普通」「不満」とした場合の幸福度の差です。
つまり、中年未婚男性は経済力、仕事、友人関係において「充実していなければ幸福を感じられない」ということがわかります。まさに、前述したように「〇〇でなければ幸福ではない」という呪いにかかっているようなものです。
既婚男性の幸福度が高い理由
既婚の幸福度が高いのは、たとえ経済的に充実とは言えないまでも、それだけをもって「不幸だ」とは感じず、「これくらいでもまあまあ幸せだよね」という心持ちがあるからでしょう。
特に注目したいのが、自分の能力に関するとらえ方と幸福度との差です。既婚は、「自分の能力に自信がある」場合の幸福度が高いのは当然として、「普通」「自信がない」とした場合でもその幸福度が大きく下がることはありません。対して、未婚は「自信がある」場合こそ幸福度は高いですが、それでも既婚の「自信がない」場合の幸福度と同程度しかありません。
「自分に自信がある」というのも主観的な評価であり、甘く見積もって自信満々な人もいれば、謙遜して低く見積もる人もいるでしょう。しかし、どういう見積もりで自己評価したとしても、その評価に過敏すぎる傾向が未婚男性にはあるようです。
逆にいえば、幸福度の高い既婚男性は、「自分はたいした才能も能力もないけれどまあ幸せだよね」というある種の鈍感力があるのに対し、未婚男性は「何の才能も能力もない自分は幸せになってはいけないのだ」と過敏に追い込んでしまってはいないでしょうか。
いつまでたっても満たされない生き方
本来、能力の有無と幸福とは関係ありません。にもかかわらず、「能力がないと幸福になれない」と囚われているのだとしたらそれこそ不幸です。このあたりが同じ年収でも既婚は幸福度が高く、未婚は低いという状況に表れているのでしょう。
「足りない・足りない」と自分の理想や希望に到達していない不足分ばかりを見ていても、人間の欲望には際限がないもので、結局いつまでたっても満たされない生涯餓鬼のような生き方になります。
人間ですから他人と比較して自分には「あれがない・これがない」と思うのは致し方ないことですが、それこそ「ないものねだり」をしても詮無い事です。誰もが何かしら「足りないもの」はありますが、「足りないもの」を数えてしまう行動こそが不幸の源なのでしょう。
とはいえ、いくら「足るを知る」が大事とはいっても、現実的に経済的に困窮すればそんな精神論を言っている場合ではありません。
先に年収別の幸福度の未既婚の差をお話ししましたが、男性の場合、そもそも未婚と既婚とで年収の差があることは明らかです。具体的に、2022年就業構造基本調査から、40代の未既婚男性の年収中央値を計算すると、既婚が約573万円であるのに対し、未婚は367万円にすぎません。この年収中央値の差は既婚が未婚の約1.6倍です。幸福である割合の差も未婚に対して既婚が約1.7倍ですから、幸福度の差はちょうど年収の差であると言ってもいいかもしれません。
出口のない負のスパイラル
もちろん、お金だけの問題ではないですが、今の40〜50代が20代の頃に置かれた就職氷河期や不況などの経済環境を考えると、「金がないからずっと幸福でない」→「ずっと幸福でないから結婚できない」→「結婚できないから幸福ではない」という、出口のない負のスパイラルにハマっている人達は少なくないでしょう。繰り返しますが、未婚中年男性でも経済的に余裕があれば既婚と同様幸福度は高いわけです。
身もふたもないことを言えば、40歳を過ぎて初婚するのは統計的にはかなり厳しいものがありますし、中年独身男性の幸福は別の方法でなんとかするしかないとは思いますが、ただでさえ不幸な中年独身男性たちをさらに不幸に陥れるようなお金の不安は避けてほしいものです。また、少なくとも今の若者を20年後の不幸な中年独身にする「不幸な中年独身の再生産」にならないような経済対策を期待したいものです。