制御不能「地上共振」の脅威――ヘリコプターの天敵、瞬時に機体を破壊する見えざる力とは

ヘリ事故の黒幕地上共振

 2025年3月2日、NHKが手配したヘリコプターが岡山空港に着陸する際、機体が損傷しカメラマンが負傷する事故が発生した。運輸安全委員会の報告書によると、乱気流の影響で機長が操作していたレバーが動き、機体が上下に振動する現象が起きたことが原因とされる。この現象は地上共振の一種であると考えられている。

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 海外でも類似の事故が確認されている。2025年2月25日、オーストラリア・クイーンズランド州のマッカイ沖約200kmの貨物船から離陸しようとしたヘリコプター「アグスタA109E」が激しい振動に見舞われ、パイロットは即座にシャットダウンを判断した。離陸は中止され、機体は直立の状態で停止したが、損傷が大きく飛行不能となった。オーストラリア運輸安全局(ATSB)の調査報告書では、事故の原因は地上共振の可能性が高いと結論付けられている。

 さらに2018年2月15日、カナダ・ノースウエスト準州ベアロックでは、エアバス・ヘリコプターズAS350B2がエンジン始動後に前後に大きく揺れたため、パイロットは振動を止めるために離陸した。しかしエンジン回転数は十分でなく、上昇直後に地面に激突。斜面を滑り落ち、ヘリポートから50mの地点で停止した。

 ヘリコプターを制御不能に陥れ、場合によっては機体を破損させる地上共振とは、いったいどのような現象なのだろうか。

振動増幅の恐怖と対策

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ヘリコプター。画像はイメージ(画像:写真AC)

 ヘリコプターの回転軸とローターの重心がずれると、振動が回転とともに増幅する。この力こそ、地上共振の源である。

 身近な例でいうと、洗濯機の脱水中に服が片寄ってバタバタと揺れ、異音が発生する現象に近い。洗濯機でも家中に響くほどの振動が起こることがある。空を飛ぶヘリコプターでは、出力が桁違いに大きいため、その影響は甚大になる。衣服のように重心が劇的に変わるわけではないが、わずかなズレでも強力なパワーが大きな力となって表れる。対策を怠れば、機体が大破することもあり得る。

 地上共振は旧式のヘリコプターで発生しやすい。新型機では設計段階から対策が組み込まれている。洗濯機も同様で、古い機種ほど揺れやすく、近年の製品ではほとんど起こらない。家電も航空機も、技術革新は確実に安全性を高めている。

ヘリ暴走の原因と防止策

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ヘリコプター。画像はイメージ(画像:写真AC)

 地上共振は、ハードランディングや接地の不均一、不安定な地面での離着陸で発生しやすい。基本的に接地時に起こるため、離陸に成功すれば振動は収まる。

 地上共振といっても、海上を航行する船の上でも発生する。実際、船上での離着陸における事例が多く報告されている。

 事前に振動解析を行い、物理的に危険な設計を避けることが必要だ。着陸装置やダンパーの整備不良は共振を誘発する。定期的なメンテナンスが欠かせない。減衰システムなど機械的な対策である程度は防げるが、限界を超えると地上共振は急激に悪化する。

 回転の均衡が崩れると、地上共振は瞬時に発生し制御不能な振動へと発展する。兆候を早期に察知し、迅速に離陸またはローター停止を行う必要がある。操縦士の判断力と日頃の訓練が不可欠だ。

 パイロットが即座に離陸して難を逃れた例もある。しかし、発生してしまった地上共振を制御するのは非常に困難である。腕の立つ操縦士であっても、機体が暴れ出すと制御はほぼ不可能になる。

ヘリ利点とリスク管理

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ヘリコプター。画像はイメージ(画像:写真AC)

 どれだけ技術が進歩しても、条件が重なれば地上共振は発生する。

 そのため、ヘリコプターは使うべきでないと考える人もいるかもしれない。しかし、それはやや極端な見方だ。どの乗り物にも利点と難点がある。状況に応じて最適な交通手段を選ぶことが重要である。

 回転翼機の大きな利点は、滑走路を必要とせず、少しの平らな空き地で離着陸できる点だ。山岳地帯や交通が寸断された災害被災地でも空路で救援に向かうことが可能だ。従来の飛行機にはできない芸当である。ドローンで代替できる部分も出てきたが、ヘリコプターの存在価値は依然として大きい。

 地上共振のリスクを管理しつつ、ヘリコプターの利点を生かして安全に運用することが、現実的な活用法である。社会や経済の多様なニーズに応えるため、ヘリコプターは今後も重要な役割を果たすだろう。