マツダ「ロータリー推し」はRX-9登場の布石か?

「8」ではなく「7」後継としての「RX-9」, まだ見ぬ「RX-7」の後継モデル, いま最も有名な「RX-7」の前オーナーに聞く, マツダの「モノづくり」、そして「RX-9」への期待

ロータリーエンジンの技術展示をはじめ、さまざまな“ロータリー推し”が感じられたマツダファンフェスタ(筆者撮影)

マツダはいま、企業として難しい選択を迫られている。

【写真】いま最も有名な「RX-7」の姿も見られたマツダファンフェスタ

トランプ関税を踏まえた生産体制調整や、先行き不透明な電動化市場への対応など課題は多い。

そんな中、毎年恒例の「MAZDA FAN FESTA 2025 at FUJI SPEEDWAY(以下:マツダファンフェスタ)」を取材した。

会場内を巡ると、マツダを愛する人たちから「どんなことがあっても、マツダにはこれからもずっと元気でいてほしい」という応援のメッセージが聞こえてくる。

「8」ではなく「7」後継としての「RX-9」, まだ見ぬ「RX-7」の後継モデル, いま最も有名な「RX-7」の前オーナーに聞く, マツダの「モノづくり」、そして「RX-9」への期待

「ロードスター(NA)」と「RX-7(FD)」の周りには常に多くの人が集まっていた(筆者撮影)

一方で、マツダによる各種アトラクションや出展物を見ていると、例年以上に“ロータリー推し”をしているような印象を受けた。

たとえば、モノづくり体験「ロータリーエンジンの構造・機構を知ろう」コーナーでは、現役エンジニアによる「MX-30 ROTARY-EV」で導入した新型ロータリーエンジン「8C」の技術説明や、子どもも体験できるロータリーエンジン模型の組み立て体験が人気だった。

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ロータリーエンジンの模型を親子で組み立てる体験コンテンツ(筆者撮影)

初代「ロードスター(NA)」と3代目「RX-7(FD)」の展示では、ドライバーズシートに座る体験に長い列ができていた。

また、マツダファンフェスタで恒例となっている歴代レーシングカーのデモランも行われ、ロータリーエンジン独特のサウンドが、富士スピードウェイに響きわたった。

こうした今回の“ロータリー推し”を「第2回ジャパンモビリティショー(一般公開10月31日~11月9日)」で公開が噂される「RX-9コンセプト」への布石と見るのは、少々強引な解釈だろうか。

【写真】“ロータリー推し”なマツダファンフェスタ2025の会場より(10枚)

「8」ではなく「7」後継としての「RX-9」

時計の針を少し戻すと、2023年の「第1回ジャパンモビリティショー」で世界初公開となった「MAZDA ICONIC SP(アイコニックSP)」は、来場者はもとよりグローバルで大きな話題となった。

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2023年のジャパンモビリティショーで展示された「アイコニックSP」(筆者撮影)

その際、役員クラスの複数のマツダ幹部は「皆さんの声をしっかりと受け止めて、今後の対応を真剣に考えていく」という見解を示していた。

仮にアイコニックSPが量産モデルへと進化した場合、RX-7後継となるRX-9を名乗るのが妥当ではないか。そんな声が、ファンの間から聞こえてきた。

数字の順番でいえば「9」の前は「8」だが、多くの人が「7の後継」と表現する。

なぜならば、「RX-8」は「独創の4ドアスポーツカー」(マツダ百年史 正史編に基づく)だからだ。大人4人が快適に乗車できる実用性も備えた、画期的な4ドアスポーツカーだった。

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観音開き式の「フリースタイルドア」が採用された4ドアボディの「RX-8」(写真:マツダ)

RX-8の前段は、1995年の「東京モーターショー」に登場したコンセプトモデル「RX-01」。RX-7の後継として、ターボチャージャーを装備しない自然吸気ロータリーエンジンを搭載するアドバンスド・フロントミッドシップを提案した。

ところが、マツダはその翌年にフォード傘下となり、経営立て直しのためにコストがかかるわりに販売台数が見込めない次期RX-7プロジェクトは、凍結されてしまう。

それから4年を経て、1999年11月の東京モーターショーでRX-8の原型となる4シーター・4ドアスポーツ「RX-EVOLV(エボルブ)」が登場し、それからさらに4年後の2003年1月、「北米国際モーターショー(デトロイトショー)」で量産型RX-8が登場する。

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「RX-8」の市販型につながるコンセプトカー「RX-EVOLV」(写真:マツダ)

もう時効だと思うが、筆者が2000年代初めにアメリカ西部のサーキットでRX-8開発チームに遭遇した際、比較車両としてBMW「3シリーズ」を走らせていたことが印象的だった。

その光景を見て、RX-8の独創性を認識したと同時に、「RX-8はRX-7後継ではない」と確信した。

まだ見ぬ「RX-7」の後継モデル

RX-7後継に関する話題は、それからかなり先になる2015年の東京モーターショーに登場した「マツダ RX-VISION」まで待つ必要がある。

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写真からも「RX-7」とは異なるサイズ感であることがわかる「RX-VISION」(写真:マツダ)

「RX」を名乗るだけに、RX-7後継と考えるのが普通だが、実物を見ると「カッコよすぎて、RX-7後継っぽく見えない」という印象を、筆者のみならず詰めかけたマツダファンの多くが持ったのではないだろうか。

ボディサイズも大きく、仮に量産されるとしても超高額のスーパースポーツとなる印象で、マツダの事業実態を鑑みると非現実的だと筆者の目には映った。結局、RX-VISIONはゲーム「グランツーリスモ」の世界の中でのみ生きていくことになる。

さらに時代は進み、2023年に「アイコニックSP」登場となるが、その過程でマツダがさまざまなスタディを行っていたことを筆者は認識しており、同車のお披露目を見て「やっと出たか」とホッとした。

同時に、RX-8の事例のように、量産車登場までに長い時間を置いてしまうことへの不安も感じた。量産するのかプロジェクト凍結か、早めに決断するべきだろう。

いま最も有名な「RX-7」の前オーナーに聞く

話をマツダファンフェスタに戻す。開催2日目の朝、RX-7について長崎在住の西本尚子さんとお話しすることができた。

西本さんは、1999年式のRX-7(FD)を25年間にわたり相棒としてきた方だ。

2024年12月、80歳の誕生日に免許を自主返納し、RX-7をマツダへ譲渡。各種メディアで報道されているので、知っている人もいるだろう。

「8」ではなく「7」後継としての「RX-9」, まだ見ぬ「RX-7」の後継モデル, いま最も有名な「RX-7」の前オーナーに聞く, マツダの「モノづくり」、そして「RX-9」への期待

マツダファンフェスタにて西本尚子さんと後述するマツダの田中秀昭氏(筆者撮影)

なお、西本さんのRX-7は、マツダへの譲渡式ののち、マツダ本社の広報車両として第2の人生を過ごしている。

今回、改めて西本さんに質問をさせていただいた。以下、Q&A形式で記載する。

――そもそも、なぜRX-7を購入しようと思ったのですか?

西本:頭文字D(イニシャルD)を見て。ちょうどクルマの買い替え時だったものですから。

いろいろなクルマ会社(販売店)を見て回ったのですが、気にいったクルマがなく、決めきれずにいたら、頭文字Dでセブン(の描写)の走りを見て、「わぁこれだ」と感じたんです。

――もともとクルマはお好きだったのですか?

西本:若いころはスポーツタイプが好きだったのですが、子育てや仕事で忙しくて(クルマ選びの)余裕もなく。

以前、クーペモデルにも乗っていたのですが、それよりもっとカッコいいのがほしいと……。そこにセブンが出てきたから、「これしかない」となって買いました。

――それは何歳のときだったのでしょうか?

西本:55歳でした。現在は80歳ですので25年間乗りました。

いままでの取材を通じて(55歳で女性がRX-7を購入したことに)いろいろな見方をする人がいらっしゃったみたいですが、私は自分の歳を数えないことにしていました。最近、(この件で取材を受けるようになり改めて)自分が80歳なんだと認識するようになりました。

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西本さんがマツダへ譲渡した「RX-7」。大事に乗られてきたことがわかる(筆者撮影)

――ハイパワーなスポーツカーですが、どのようにお使いだったのでしょうか?

西本:最初のころは高速道路なども走っていましたが、仕事を辞めてからは買い物グルマになりました。

――RX-7はクルマそのものの良さもありますが、マツダに対する思いもありましたか?

西本:クルマは好きなんですが、どのモデルがどのメーカーだとは特に気にせず、ただカッコいいということで、セブンを買ったわけです。マツダの良さを実感したのは、(セブンを)譲渡することにしてからなんです。

最初、長崎の放送局の取材で、(セブンの)引き取り手を探していると申し上げたところ、全国から400数十通のメールが来ました。その中で、マツダの田中さんからのメールが私の心に響いたんです。

「8」ではなく「7」後継としての「RX-9」, まだ見ぬ「RX-7」の後継モデル, いま最も有名な「RX-7」の前オーナーに聞く, マツダの「モノづくり」、そして「RX-9」への期待

西本さんと「RX-7」とのストーリーが綴られたパネル展示(筆者撮影)

マツダの「モノづくり」、そして「RX-9」への期待

「マツダの田中さん」とは、マツダで広報シニアエキスパートを務める田中秀昭氏である。

エンジン設計、先行商品企画、商品企画、デザイン本部アドバンスデザインスタジオなど、各領域での豊富な知見がある人物だ。

田中氏によれば、マツダとしてFDの広報車をずっと探していたとのこと。

マツダは自動車メーカーとしてはめずらしく、歴代モデルを走行できる状態で広報用に所有している。たとえば、「ロードスター」はNA/NB/NCがあり、ロータリーではRX-8などがある。

「8」ではなく「7」後継としての「RX-9」, まだ見ぬ「RX-7」の後継モデル, いま最も有名な「RX-7」の前オーナーに聞く, マツダの「モノづくり」、そして「RX-9」への期待

本社の展示スペースに置かれたマツダ所有の「NAロードスター」(筆者撮影)

このうち、NAロードスターの1台は、90歳の女性から譲渡されたもの。そこに80歳の西本さんのFDが加わることで、田中氏は「クルマを通じて元気に生きる女性の原動力の象徴になるのではないか」と感じたという。

また、これはマツダが企業のパーパス(目的)として掲げる「前向きに今日を生きる人の輪を広げることにもつながる」と田中氏は言う。

こうした話を聞いて、次期RX-9がいつどのような形で世に出ようとも(あるいは出まいとも)、マツダの「人」への思いを込めたモノづくりは継承されるのだと信じようと思った。

なお、マツダは10月14日、ジャパンモビリティショー2025への出展概要を発表した。それによれば、日本で導入予定の新型「CX-5」(展示はヨーロッパ仕様)、「走る歓びは、地球を笑顔にする」というテーマを具現化した「ビジョンモデル」を世界初公開することがわかった。

RX-9を想起させるモデルの記載はないが、マツダはサプライズでワールド・プレミアを行うことがある。

果たして、RX-9に直結するモデルの発表はあるのか。期待を持って開幕を待ちたい。

【写真】マツダファンフェスタ2025の“ロータリー推し”な展示や催し(10枚)