「太った?」37歳エリート夫が妊娠7ヵ月の妻から三下り半を突き付けられた本当の理由

「相談にくる妻には、夫が優秀でエリートゆえにモラハラがすごいパターンも少なくありません。また、体型ほか、外見の変化について、第三者がネガティブなコメントすることは、心に何らかのダメージを与えることが多いです。本人が気にしていることを、軽い気持ちで指摘したことで、関係が悪化したり、心の病につながったりすることもあります」

こう語るのは、キャリア10年以上、3000件以上の調査実績がある私立探偵・山村佳子さん。彼女は、メンタル心理アドバイザー、夫婦カウンセラーの資格を持つ。

モラハラといえば、TBSの火曜ドラマ『じゃあ、おまえが作ってみろよ』が大きな話題を呼んでいる。竹内涼真さん演じるイケメンエリート社員・海老原勝男が「ザ・昭和」の価値観を持っており、夏帆さん演じる献身的な女性・山岸鮎美からプロポーズを断られるところから第1話が始まった。「顔は違うけどうちの夫と同じ」「でもそうさせた鮎美もよくない」などと多くの声がSNSに溢れている。

山村さんは調査に入る前に、依頼者が抱えている困難やその背景を詳しく聞く。山村さんは相談から調査後に至るまで、依頼人が安心して生活し、救われるようにサポートするためにカウンセラーの資格も取得したのだ。

連載「探偵はカウンセラー」は、山村さんが心のケアをどのようにして行ったのかも含め、様々な事例から、多くの人が抱える困難や悩みをあぶりだしていく。個人が特定されないように配慮をしながら、家族、そして個人の心のあり方が、多くの人のヒントとなる事例を紹介していく。

マタニティヨガに, 電車に乗って向かった先は…, 話し合いをしようとしたところ…, 産休に入っても家賃を請求, 距離を縮めるつもりで「太った?」, 元芸能人の母親から厳しい体重管理

山村佳子さんのカウンセリングルーム

今回ご紹介しているのは大手企業に勤務する37歳の順一郎さん。妊娠7ヵ月になる妻が産休に入った後、月10日は実家に帰っているという。しかし順一郎さんの話を聞いていくと、順一郎さんからも実家からも逃げたくなるような状況も見えてきた。妻は果たしてどこにいるのだろう。

妊婦の外泊

今回の依頼者、大手企業に勤務する順一郎さんは結婚2年で、妊娠26週になる33歳の妻が早めの産休に入ってから、関係の良くない実家に月のうち10日間ほど外泊し始めたことが気になり、相談をしてきました。

子供を積極的に望まなかった妻を説得し、妊活を行い妊娠しました。それまでにも妻との関係を説明するさいに「妻はまともな企業に勤めているまともな人」「合格ラインなんです」「気が利かないのが難点」とちょっと引っかかる言葉に多く出会います。順一郎さんが認識している「きっかけ」は、体型を気にしている妻に「ふっくらした?」の一言だとか。妊娠したらふっくらするのは当たり前で、医師とのやりとりで体重管理をするならともかく、夫に言われたら傷つくのは間違いないでしょう。

そこから夫婦関係にかげりがあったそうです。妻は子供時代、芸能界にいたので、もしかすると体型を気にしていたのかもしれません。第三者による体型の指摘は、心に悪影響を及ぼすことが多いです。

しかし妻と実家との関係はいいものではないのに、頻繁に帰るのはおかしい。浮気の可能性はありませんが、何をしているのか知りたいとのことで、私たちに調査を以来しました。

マタニティヨガに

早速、調査に入ることにしました。妻は基本的に月〜水曜日の3日間のうちどこかで外泊するので、まずは月曜日の朝から都内の自宅マンション前で張り込みます。ここは家賃20万円程度のおしゃれな賃貸物件で、順一郎さんの美意識が反映されているような気がしました。

10時に出てきた妻を尾行します。黒髪にメガネで健康的な雰囲気です。目がぱっちりしており優しい印象の女性です。電車で移動し、10時30分にマタニティヨガの教室に入って行きました。

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12時前に出てくると、あるキャリア風の妊婦仲間の女性と区役所のフリースペースでお弁当ランチ。周囲が騒がしく会話の内容がほとんどわかりませんでしたが、メモなどを書き込みつつ、深刻な相談をしているような様子でした。メモの内容を望遠レンズで撮ろうとしましたが、妻は周到に隠しており、撮影は断念。

電車に乗って向かった先は…

ここで14時まで過ごした後、2人で図書館に行き、妊娠関係の本や小説、雑誌などを読みつつ17時に解散。妻は40分ほど電車に乗り、山手線の沿線の駅から徒歩15分のところにあるにある外廊下のアパートに慣れた様子で入って行きました。

表札には何も書いていません。また、外から見る限り、台所と思しき部分には調理器具が揃えてあり、生活の痕跡もある。妻は着替えなども持っていないので、この家に置いてあるのでしょうか。

妻は夕方に外に出てきて、近くのスーパーで鶏肉や納豆、バターと食パン、牛乳を購入し、再びアパートに戻ります。朝まで張り込みましたが、人の出入りは全くありませんでした。

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月曜、火曜とここで過ごし水曜日に自宅に帰る。この家を土日の夜に張り込みましたが、出入りは全くありません。妻の外泊先を突き止めたということで、順一郎さんに報告すると、「僕も何の検討もつきません。実家に帰っていないことは分かりましたが……」と驚いていました。

話し合いをしようとしたところ…

その日の夜、妻と話し合いの機会を持つと「なんでわかったの?」と驚いて以来、何も言わずに出ていってしまったそうです。私は順一郎さんの性格を考慮し、報告書に外泊先の詳細な住所を書かなかった。もしかするとハラスメントが関係していて、この住所は妻の避難先であるとも考えたからです。順一郎さんから「この家はどこですか?」と連絡がありましたが、人探しの場合は先方の許可が必要のため、教えられませんでした。

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それから1週間後、順一郎さんから憔悴した様子で連絡があり、「妻とは離婚することになりそうです。ちょっと相談に乗ってください。これから関係回復はできないのでしょうか」と話していたのでお会いすることにしました。

産休に入っても家賃を請求

「妻が月のうち10日を外泊するようになったのは、産休に入ってからも、妻の家賃の割り当て分を請求したことがきっかけでした。結婚するとき、お互いの収入を考慮して、家賃を僕が2で14万円、妻が1で半分の7万円払うことで合意したのです。妻の言い分では、僕の望み通りに妊娠したのだから、産育休で収入が減る期間はせめて家賃は全額払ってほしいということでしたが、そういう前例を作るとお金のルールが乱れるので、突っぱねました」

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妻はその話を受けてから、月のうち自分の家賃の割り当てである10日間を、別のところで泊まれば、家賃を払わなくてもいいという理論のもと、外泊をすることにしたそうです。

「僕は、妻が支払う家賃を、やがて購入する家の資金として貯めていました。驚かせようと思って話さなかったことも悪手になったようです。っていうか、そもそもあのマンションがいいと言ったのも妻なんですよ。僕はもっと古くていいのに、家賃が割高のあそこがいいと言った。ルールを守って責任を取るべきだと思うんです」

距離を縮めるつもりで「太った?」

家賃の問題以降、妻は順一郎さんと距離を置くようになります。そもそも、「ぽっちゃりした?」という一言で、妻の心ははっきり離れていました。順一郎さんは、妻が嫌がることを知りつつ、距離を縮めるつもりで「太った?」などの発言を繰り返していました。

「場を和ませるジョークというか、愛情表現ですよ。それに目くじら立てられて、傷ついたと言われても困る。だって夫婦じゃないですか。太ったとか痩せたとかの指摘は、健康管理につながるでしょ。そういうことを指摘して、お互いに病気にならないように生きていくのも夫婦じゃないですか」

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妻は結婚1年目あたりから順一郎さんの「常識」に疑問を抱くようになり、離婚を考えるようになったようです。いい学校や企業だと「まとも」という差別的な視点や、夫の一挙一動にケアをする「気の利いた」行動を求める姿勢に疑問を抱くのもよくわかります。

そうしてたまたまマタニティヨガで知り合った妊婦仲間でもある弁護士の女性に相談し、順一郎さんの発言を録音していたそうです。妻が月の10日間を過ごしていた家は、妻の親友の独身女性の家でした。海外出張が多い部署におり、妻に留守中の自宅管理を依頼していました。それが、今回の外泊先になりました。

元芸能人の母親から厳しい体重管理

「また、妻は幼い頃に芸能界にいるときに、元芸能人の母親から厳しく体重を管理されていたそうです。10歳ごろから親に隠れてものを食べて、肥満体型になったことで芸能界を辞めた過去があったことを知りました。そうと知っていれば言わなかったのに」

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順一郎さんは「言ってくれなきゃわからない」と繰り返していましたが、おそらく妻はやめてほしいと口にしたり態度に出していたのではないでしょうか。それが耳に届かなかったのでしょう。

「さらに妻は、僕がマッチングアプリで知り合った女の子と、会話しているLINE画面も押さえていた。絶対に浮気をしていないのですが、全く聞く耳を持ってくれない。家賃の他にも、光熱費を一円単位まで計算することや、妻の料理にケチをつけたこと、“気が利かない”と怒ったことなど、録音を撮られていました」

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離婚の準備を着々と進めていたのだ Photo by iStock

妻は離婚の意思を固めており、順一郎さんに新居と引っ越しの費用と慰謝料300万円、そして月6万円の養育費を請求ほか、しっかりと外堀を固めていました。そうなると、関係修復は難しいことが多いです。

最後に私に「僕は間違っていませんよね」と繰り返しました。夫婦や人間関係に「正解」はありませんが、順一郎さんは自分が妻に言っていたことをもし言われたら、どのように感じたでしょうか。妊娠・出産は奇跡的なことでコントロールできないことも多い中で、「太った?」と言われ続けていたらどうでしょうか。「まともな家」というような言葉を妻は日々聞いていたのではないでしょうか。

要は「妻に対するひとりの人間としての尊重」を感じられなくなり、妻は順一郎さんの考え方を「合わない」と判断したのでしょう。ルールと自身の中での“まともさ”を優先する順一郎さんと、妻との間にはそもそも溝があった。そこがわかって別の道を進んだ後に、きっといい未来が待っているのではないかと感じました。

調査料金は53万円(経費別)です。