MLB“テック判定”導入に賛否…人間味が消滅?元審判「キャッチング技術が不要になり、センサーありきでは捕手の価値が変わる」

MLB“テック判定”導入に賛否…人間味が消滅?元審判「キャッチング技術が不要になり、センサーありきでは捕手の価値が変わる」

大谷翔平選手の大活躍もあり、ますますの盛り上がりを見せているMLBで、来期から“テクノロジー判定”が導入されようとしている。

高性能カメラで、ストライクかボールかを機械判定するシステムで、「ABSチャレンジ制度」とも呼ばれる。基本的には人間の球審が判定し、その判断に異議があれば、チームで1試合2回まで機械でのチェックができるという。

すでに韓国のプロ野球では、2024年から全ての投球で、こうしたテックでの審判を導入している。誤審を防ぎ公平性を向上させるため、Xでは「勝負事で正確な審判は重要」「日本も早く導入して」といった声が見られる。一方で、「人間味がなくなる」「間違うから面白い」といった意見も。『ABEMA Prime』では、審判経験者とともに、スポーツ判定における人間とテクノロジーについて考えた。

■ABSとは

MLBで来季から導入されるABS(Automated Ball-Strike)とは、球場に複数のカメラを設置し、投球のストライク・ボールを判定するものだ。そして「ABSチャレンジ制度」は、通常は球審がストライク・ボールを判定するが、球審のジャッジが間違っていると思った場合には選手(投手・捕手・打者)が“チャレンジ”を要求、球場のビジョンに“テック判定”の結果が表示されるといった内容になっている。

オールスターゲームも担当した元プロ野球審判員で、現在は“審判系”YouTuberとして活動している坂井遼太郎氏は、「難しいが、プロの審判目線から見ると、いいことではないか。ただ、やるなら韓国のように、全球やった方がいい」と語る。「韓国の友だちに聞くと、導入されて負荷が減ったと」。

一方で、ABS導入のためには、ルールブックとは異なる“ABS専用のストライクゾーン”を用意する必要があるという。「従来のストライクゾーンでは広すぎて、前だけでもかすれば、ワンバウンドでもストライクになる。そうならないために、今回アメリカでは、ベースの中心付近に平面のストライクゾーンを作り、そこを通過すれば“ストライク”と判定されるように運用する」。

■「審判をいかにうまく騙すことも、競技としては重要」

テレビ朝日の寺川俊平アナウンサーは、「ピッチャーは変化球を投げる。メジャーリーグでは、バッターの目線の端から、球がえぐってストライクゾーンに入ってくる球種もあり、それを審判が後ろから判断している」といった現状から、「どれだけ正確に空間把握できているのか」と疑問を持つ。

そして、「ABSではMRIのようにストライクゾーンを判定する。外から入ってきた変化球は、ABSではボール判定されるが、最終的にど真ん中でキャッチャーが取れば、審判はストライクと判定したくなる。審判をいかにうまく騙すことも、競技としては重要じゃないか」と問いかける。

これに坂井氏が賛同する。「契約社会のアメリカで、審判側がABS導入に前向きだった理由には、金銭面の対価があった。仕事が楽になり、かつ給料が上がれば、断る理由はない」。一方で選手からすると、「センサーありきになると、キャッチング技術が不要になり、捕手の価値が変わる」ため、「選手会は反対していて、折衷案として『全球ではないチャレンジ』で進められている」と解説する。

■竹中平蔵氏「AIにもある種の確率で誤審させたらいい」

坂井氏の持論は「プロとアマで分けて考えた方がいい」といったものだ。「プロは仕事のため、正確性を求めるのは重要だが、アマチュアにはそもそもABSを導入できる資金があるのか。またアマチュアには、選手も観客も審判も、趣味や生きがいとしている人もいる。ボランティア精神で、土日もつぶしてきた審判の役割を奪うのは、本当に正しいのか」。

自身の誤審経験を問われると、「覚えていないくらい間違っているはずだ」としつつ、「ストライクボールでも、センサー判定すると間違っている投球は、各試合に数球あるはずだ。ただ、それは選手自身も合っていると思っている。ストライクゾーンは、審判だけでなく打者や守備者全てが作り上げている」と返した。

経済学者の竹中平蔵氏は「大リーグでは、以前から全ての投球・打球の速さや回転数を、デジタルで記録しているため、ストライクゾーンの判定は簡単だ。キャッチング技術の判定も、将来的には可能になる。過去のデータベースの有無が判定を決めるため、ストライクボールと、ファーストベースのアウトの判定はすべきだ」と考える。そして「誤審のおもしろさもあるため、AIにもある種の確立で誤審させたらいい」とした。

(『ABEMA Prime』より)

【映像】来期から導入予定の“テック判定”(実際の映像)

【画像】来期から導入予定の“テック判定”(複数カット)

【画像】大谷選手の“疑惑”とされている判定(詳細)