トランプ氏、破壊した米中関係を再構築へ 自らの流儀で

トランプ米大統領は来年初めに北京を訪問する見通しだ

ドナルド・トランプ米大統領は第1期政権で、数十年にわたる米国の対中関与政策を破綻させた。しかし現在、ビル・クリントン氏からバラク・オバマ氏まで歴代大統領が採用したような対中政策を再び始めようとしている。ただし、それは自身のやり方で、だ。

米中両国の通商交渉担当トップは26日、マレーシア・クアラルンプールでの2日間にわたる緊迫した協議を終え、30日に韓国で会談するトランプ氏と中国の習近平国家主席が大きな合意に達するための土台となる枠組み合意に到達したと発表した。

合意そのものは取引的な休戦を意味するとみられ、中国による米国産大豆の購入再開や、レアアース(希土類)鉱物の新たな輸出規制の延期が含まれる可能性がある。米国側では、新たな関税の棚上げ、米国内の合成麻薬フェンタニル危機における中国の役割を理由とした20%の追加関税撤回、中国に対する新たな政策措置の見送りが検討されている。

しかし、この合意は一時的な停戦以上の意味を持つ。新たに構築されたハイレベル対話の第一歩であり、首脳主導の外交を1年間確実に継続することを目的としている。スケジュールは野心的で、トランプ氏は来年早々に北京を訪問し、その後習氏が同年中に答礼訪問する予定だ。

トランプ氏にとって、これは驚くべき方針転換だ。

オバマ政権下で国家安全保障担当高官を務め、現在はジョージタウン大学教授のエバン・メデイロス氏は「第1次トランプ政権は、米中対立とは言わないまでも、長期にわたる疑いの余地のない競争の道へと導いた」と指摘。「今やトランプ氏は自らの中国戦略を転換し、よりハイレベルな関与の新たな段階を開始しているようだ」と述べた。

ハイレベル外交を超えて、この休戦は今後1年間の関係の戦術的安定化への道筋を整える。

この緊張緩和により、トランプ氏は自ら好む「中心的な交渉役」の役割に戻り、大豆購入再開などの短期的な経済的救済を確保できる。これにより共和党支持州の有権者に好印象を与えられる。

この新たな、高度に構造化された外交日程は、第1期政権のアプローチとは好対照をなす。トランプ氏は政権1期目に習氏と会談したが、その関与はしばしば場当たり的で、エスカレートする関税合戦の陰に隠れており、現在提案されているような正式で相互的な日程設定を欠いていた。

またこの動きは、アナリストが指摘するように中国政府に有利に働く。

中国当局者と協議する関係者によると、中国政府の政策立案者らの考えでは、習氏は短期的目標である「戦略的膠着(こうちゃく)状態」に近づいている。これは、米国の圧力が管理可能になり、中国が米国に追いつく時間を稼げる持続的な均衡状態だ。

とはいえ、トランプ氏の方針転換は過去への回帰を意味するものではない。

数十年にわたり米国の政策立案者が推進してきた従来の関与は、リベラルで理想主義的な希望に基づいて構築されていた。経済統合がより開放的で政治的に改革された中国を必然的にもたらすという希望だ。オバマ政権下のいわゆる「アジア重視」戦略でさえ、同地域での軍事力増強に支えられた中国との関与を前提としていた。

トランプ氏は2019年、大阪で開催されたG20サミットで習氏と会談した

対照的に、トランプ政権バージョン2.0は必要性から生まれたもののようだ。この新たな枠組みはパートナーシップ、協力、価値観の共有に関するものではない。むしろ一部のアナリストが指摘するように、公然たる対立のコストがあまりに高くなった現実を冷静に認識した結果であり、レアアースに対する中国の支配管理からフェンタニルの流入阻止に至るまで、米国の重要利益を守るには取引型の対話が必要だという認識に基づくものだ。

これは管理された超大国間の長期的な競争のルールを確立しようとする試みだと、これらのアナリストは言う。

この緊張緩和は脆弱(ぜいじゃく)な基盤の上に築かれている。台湾の将来、南シナ海での軍事演習、人工知能(AI)・量子コンピューティングでの覇権争いなど、両国関係の根本的なストレス要因は未解決で不安定なままだ。

予測不可能性を糧とする政権にとって、この新たな筋書きは、たった一つの地政学的挑発やトランプ氏のソーシャルメディア投稿で、再び一変する可能性がある。

トランプ氏は米国産大豆の購入を再開するよう中国に圧力をかけると述べている

第1次トランプ政権下に中国との貿易交渉に関与したダニエル・バハール元米通商代表部(USTR)代表補は「貿易休戦は米中競争の道筋を変えることも、米中間の信頼を高めることもないだろう」と指摘する。

現在、米コンサルティング会社ロック・クリーク・グローバル・アドバイザーズのマネジングディレクターを務めるバハール氏は「しかし、これは双方が相手国からのリスクを軽減し続けるための時間稼ぎにはなる。中国は半導体分野での自給自足を進め、米国はレアアースの代替サプライチェーン(供給網)構築を急いでいる」とし、「双方はこの休戦を利用して、次の貿易戦争に備えるだろう」と述べた。

時間こそが習氏が最も必要としているものだ。中国経済が持続的な減速に直面する中、この枠組みは安定のための重要な時間的猶予を提供する。貿易戦争を一時停止させ、差し迫った経済的脅威を取り除き、中国政府が国内の脆弱性に集中する余裕を与えるのだ。

先週の共産党高官会議の終了時、中国政府はこの時間を使って何を成すかを明確にした。製造業と技術分野への国家主導の大型投資に焦点を当てた5カ年成長戦略を強化させる方針だ。

南シナ海を航行する中国海警局の船舶(8月)

重要なのは、今週の中国政府からの譲歩が戦術的であって構造的ではない点だ。米国産大豆を購入するいかなる合意も現状復帰に過ぎず、根本的な改革ではない。こうした妥協は、習氏がトランプ2.0対策として考案した新たな戦術を反映している。トランプ氏をなだめるための計算された譲歩を行いつつ、中国政府の核心的利益に関わる問題では断固とした姿勢を貫くというものだ。

この休戦は、トランプ氏の第1期政権中に対立を引き起こした核心的問題(中国の巨額の国家補助金、知的財産権の窃取、国家主導の技術覇権への取り組み)には触れていない。

休戦はまた、習氏とトランプ氏双方にとって貴重な象徴的意味も提供する。

トランプ氏にとって、これは主要なライバルと対峙(たいじ)する「名交渉人」としてのイメージを演出する舞台となる。対中強硬姿勢が中国政府を交渉のテーブルに引き戻したことを実証し、しかも全てが自らの条件下での成果だとアピールできるのだ。

一方、習氏にとって国賓としての訪米は、オバマ政権下の2015年以来享受していない栄誉で、国際舞台での自身のイメージを高める強力な手段となる。

中国側はトランプ氏の訪中を画策してきた。それが実現すれば、9月にロシアのウラジーミル・プーチン大統領と北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)総書記に囲まれて北京で盛大な軍事パレードを開催した習氏は、米国大統領さえも中国に来たがっていると国民に示せるだろう。

国内で経済不安が続く中、この華やかな演出は極めて大きな政治的贈り物となるだろう。習氏は国際的な政治家としてのイメージを磨き、国内の聴衆と世界に「中国が米国の対立の嵐を乗り切り、米国政府を交渉のテーブルに引き戻した」とアピールできるのだ。

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――筆者のリンリン・ウェイはWSJ中国担当チーフコレスポンデント。WSJ Chinaニュースレターの執筆者も務める