アルカイダ、アフリカ・マリの首都制圧に近づく

バマコでは反政府勢力が輸送を阻止しているため、燃料が不足している
国際テロ組織アルカイダの戦闘員が、アフリカ西部マリの首都バマコ制圧に向けて前進している。バマコが制圧されれば、マリは米政府によってテロ組織に指定されているグループが統治する世界初の国となる。
アフガニスタンやシリアでは、イスラム主義組織がすでに権力を握っているものの、アフリカで急速な進撃を続けるジハディスト(聖戦主義者)がバマコを制圧すれば、アルカイダと直接および間接的なつながりを持つ武装勢力がこのような成果を挙げる初の例になる。
戦闘員はバマコ制圧に近づいているとみられるが、決定的な行動に出るまではある程度の時間を置くと複数の安全保障専門家は予想している。反政府勢力はバマコへの食料と燃料の輸送を阻止。現地や欧州当局者、またジハディストたちが投稿した映像によれば、これによってさまざまな物資が不足し、政府軍の対応能力にも影響が及んでいる。
欧州の複数の安全保障当局者は、「イスラム・ムスリムの支援団」(JNIM)と呼ばれるこの勢力が、全面攻撃ではなく段階的な制圧を狙っていると指摘。無党派の米シンクタンク「外交政策研究所(FPRI)」のフェロー、ラファエル・パレンズ氏は、「封鎖が長引くほど、バマコの崩壊は近づく」と述べた。
JNIMは古参のアルカイダ関連組織が2017年に手を組んで結成され、直ちにアルカイダへの忠誠を誓った。欧米およびアフリカの政府当局者によると、JNIMの戦闘員は、アフガニスタンとパキスタンを拠点とするアルカイダ指導部の中枢から、爆弾製造やイデオロギー訓練の支援を受けた。
28日には物資を運ぶために使われている道路を移動し、バマコへ燃料を輸送していた数十台のタンクローリーが、待ち伏せ攻撃を受けた。反政府勢力や欧米政府の請負業者、また当局者による映像では、ぼろぼろの裾上げズボンとターバンを身に着けたジハディストがサバンナから現れ、先頭車両に火を放ち、残りを奪取している様子が映っている。
マリを支配する軍事政権は、近くのカティを最大の拠点としているが、大規模な軍部隊は対応できなかった。軍は3週間前から燃料を要請していたが、一度も受け取れていなかったと事情に詳しい複数の関係者は述べた。
FPRIのパレンズ氏は、「これは自己永続的な循環だ。軍事政権がJNIMを打ち負かすには、大規模な地上作戦と航空支援が必要となるが、その両方は安定した燃料供給に依存している」と述べた。

マリのマイガ首相
燃料へのアクセスは、マリの紛争の焦点となっている。現地住民のイブラハム・シセさんによれば、バマコではガソリンの価格が3倍に跳ね上がり、1リットルで2000CFAフラン(約542円)に達した。また住民は燃料を入手するのに何日も待たなければならないという。この状況を受けて政府は学校と大学の授業を2週間停止し、一部の発電所を閉鎖することで対応している。
マリのアブドゥライ・マイガ首相は先週、「たとえ徒歩やスプーンで燃料を探さなければならなくても、われわれは探し出す」と述べていた。
アルカイダと過激派組織「イスラム国」(IS)の武装勢力は、西アフリカの乾燥したサヘル地域のニジェール、ブルキナファソ、マリを含むを含む広大な地域で反政府活動を展開。その動きはベナン、コートジボワール、トーゴ、ガーナなど、ギニア湾沿岸の伝統的により繁栄した国々にも向かっている。
欧米の複数の当局者は、西アフリカのこれら二つのイスラム主義組織のうち、より強力なアルカイダが、ブルキナファソかマリのいずれかを制圧する事態を懸念。中でもカリフォルニア州の3倍の面積に2100万人の人口を抱えるマリが、最初に陥落する可能性が高まっている。
これらイスラム主義組織は、シリアとアフガニスタンで最終的に既存政権を内部から崩壊させるなど、消耗戦に勝利できることをすでに証明している。イスラム組織タリバンは20年間にわたり軍と衝突していたが、その軍が事実上首都を放棄した後にカブールに入った。JNIMはタリバンのこの作戦を模倣したいと述べている。
国連は7月の報告書で、アルカイダ系の組織が昨年12月にシリアの首都を制圧した点に触れ、JNIMがその戦略も「青写真」として見ていると指摘した。
マリでは2012年に反政府活動が始まり、その後マリのアルカイダ指導者であるイヤド・アグ・ガリ氏が運動を引き継いだ。ガリ氏はマルボロのたばこを吸うロックンローラーとして知られていたが、その後に過激思想に染まり、自らが支配する地域では音楽を禁止している。

マリのアルカイダ指導者イヤド・アグ・ガリ氏
リ氏は戦争犯罪と人道に対する罪で国際刑事裁判所(ICC)に指名手配されているが、依然として行方をくらましている。同氏のグループは国の最北端から首都の玄関口まで勢力を徐々に拡大しており、米国、欧州連合(EU)、国連のいずれの軍もその進撃を阻止できなかった。
脅威の拡大を懸念したマリ軍は20年に同国の文民政府を転覆させ、21年には軍司令官を追放。このクーデターの後、ブルキナファソとニジェールでも同様の軍事クーデターが続いた。
現在のマリ軍事政権はフランス主導の部隊を追放し、ロシアの民間軍事会社ワグネルの戦闘員を雇ったが、これも暴力を鎮圧することにはつながっていない。
代わりにワグネルの戦闘員はマリの同盟者と手を組み、同国の広範囲で報復作戦に乗り出した。これにより多くの地元住民はアルカイダに参加するか、アルカイダに保護を求めることにつながったと人権活動家や地元コミュニティー指導者は述べている。
牛商人のセイドゥ・バーさんは、22年3月にマリ中部のモウラで発生した500人以上の住民虐殺を生き延びたと話す。その翌年、自身の兄弟が批判の声をあげたために軍に殺害された。そのためバーさんは、ジハディストが支配する村に逃げ込んだという。
村を制圧していた新たな支配者たちは、男性住民をモスクに集めて祈るよう強制し、牛と収穫物で支払う貢納を課したとバーさんは述べた。バーさんはその後、マリ国外に逃れ、建設現場で働いてほそぼそと生計を立てているが、「軍の下でもJNIMの下でも、自由はない」と当時を振り返る。
欧州の安全保障当局者や専門家は、反政府勢力にとって農村部よりも大都市を維持するのは困難なため、マリ政権がすぐに崩壊する可能性は低いと述べている。また特に軍事政権が崩壊した場合、将来の政府がジハディストと交渉する可能性があるとみている。マリ中部の一部コミュニティーでは、指導者がすでにJNIMと地域的停戦について協議しているという。
反政府勢力はマリの他の地域での支配力強化を基盤とし、欧州に向けられる金やアフリカを通過する中南米の麻薬に課税している。
出国できる状況にある国民はマリから避難しようとしており、国外在住のマリ国民によれば、ここ数日間で隣国のセネガルやコートジボワールに飛行機で向かった人もいる。バマコの空港は30日時点では閉鎖されていない。
国連によれば、マリから近隣諸国へ避難した国民はすでに33万4000人に達している。だがアルカイダによる封鎖を受け、陸路での国外への移動は阻まれているという。