自宅での介護をやめるキッカケになる「3つの症状」…認知症になった家族の施設入所を考えるタイミング

この症状が出たら自宅介護は禁止, 油断すると「自宅全焼」の恐れも, 実の子どもが施設入所の判断をすべき, 他家から嫁いできた人は無理と言えない

自宅での介護をやめるキッカケになる「3つの症状」…認知症になった家族の施設入所を考えるタイミング

認知症患者の自宅介護の限界はどこか。認知症の専門医である長谷川嘉哉さんは、ある3つの症状が出てきたらご家族に「施設入所を考えるべきだ」と伝えるといいます。長谷川さんの著書『認知症は決断が10割』より、長谷川さんと編集者T氏との会話形式で、「認知症家族の施設入所を考えるべきタイミング」についてお届します。

※本稿は、長谷川嘉哉『認知症は決断が10割』(かんき出版)の一部を再編集したものです。

この症状が出たら自宅介護は禁止

長谷川先生:私はユーチューブで、認知症関連の情報をお伝えするチャンネルをやっているんですけども。その中で、いちばん再生回数が多くて、140万再生されているのが、「この症状が出たら自宅介護は『禁』!」というものです。

編集T:やっぱりいつまで家で看ていていいものなのか、皆さん、気になるんですね。

長谷川先生:だと思います。ちなみに、医師に言われなくても、ご家族が「もう無理」となるのが、患者さんにトイレの失敗が出てきたときです。たとえば、「うんちが汚い」という概念がなくなって垂れ流しで歩いてしまうとか、汚れたおむつを脱ぎ散らかしてしまうとか。

これ以外にも、次の3つの症状が出てきたら、私はご家族に「もう家で看るのは、やめたほうがいいんじゃないですか」とお伝えしているんですけれども……。

編集T:その施設入所を考えるべき3つの症状とは?

長谷川先生:まず、ひとつめは、患者さんに夜間の「徘徊」が出てきたときです。

これ、まだ昼間であれば、デイサービスに行ってもらったり、家にいる介護者が気にしていればなんとかなりますが、真夜中に徘徊するようになると、介護者は眠れなくなって、体調を崩すことにも繋がります。

ですから、「まだ看られます」というお宅でも、患者さんに夜中の徘徊が出た場合、私はドクターストップをかけます。

やっぱり介護者さんだって寝ないといけませんから、夜中の徘徊を毎回、完全に止めるのは、どうやったって難しいわけです。だけど、止められない場合、真夜中にご近所のインターホンを何度も鳴らしてしまうことも。

あるいは、道に出ていって車に轢かれたり、山に迷い込んだり、川に落ちたりして、遺体で発見されることもあります。その前に、大勢で捜索することになって、多くの方にご迷惑をかける場合もあるわけです。

油断すると「自宅全焼」の恐れも

編集T:確かに、そうなると自宅介護の継続を考え直したほうがいいですね。

長谷川先生:そうなんですよ。で、2つめが、患者さんが火を使うのをやめてくれないとき。

患者さんを見ていると、IHコンロや電気ポットではなく、ガス台で火を使うことに妙にこだわる方がいます。それで、家族がいないときにガスでお湯をわかそうとして、火を消すのを忘れてボヤを出す。私の患者さんでは、実際に4人が火事を起こして、そのうちのお一方の家は全焼です。

だから、もの忘れが出ているのに、「やめて」と頼んでも火を使うのをやめてくれないなら、やっぱり介護施設への入所を考えたほうがいいんですね。

編集T:自宅が全焼……火ってホントに怖いです。最後の3つめは?

長谷川先生:意外かもしれませんが、患者さんが長時間の入浴をやめてくれないときです。とにかく毎日お風呂に入ることにこだわって、しかも、それが長時間。そうなると、どんなに家族が気をつけていても、ちょっと目を離したすきにお風呂で倒れて……ということが多いんです。

事実、2019年の厚生労働省の調査では、年間5千6百人以上が入浴中に亡くなっています。これは同年の交通事故の死者数(約4千3百人)よりも多い数です。

ですから、どれだけ家族が「やめて」と言っても長時間の入浴をやめてもらえないときは、やっぱり入所を考えたほうがいいんですね。

実の子どもが施設入所の判断をすべき

長谷川先生:患者さんにトイレの失敗が出てきたり、前に挙げた3つの状態が見られるようになったりしたら、家族の誰かが「もううちで看るのは無理。施設に預けることを考えよう」と言い出す必要があります。で、言い出すべきなのは誰かというと、当然ですが実のお子さんです。

編集T:それはそうでしょうね。

長谷川先生:そうなんです。で、なんで私がわざわざ、そんな当たり前のことを言うかというと、施設への預け入れに関して決定権のないお嫁さんが介護していることが多いからなんですね。

で、介護家族の中にはズルい人がいてですね……。たとえば、A家では、おばあちゃんの面倒をいちばん看ている主介護者さんが、お嫁さんだったとします。で、このお嫁さんに向かって、そのご主人だったり、ご主人のきょうだいだったりが、こんなふうに言うわけです。

「おばあちゃんの面倒を看るの、もうこれ以上無理だと思ったら、遠慮せずにいつでも言ってね。そしたら、おばあちゃんには施設に入ってもらうから」と。

編集T:優しいじゃないですか。無理なら「無理」って言っていいんでしょ?

長谷川先生:はぁ? 何バカなこと言っているんですか。他家から嫁いできたお嫁さんが「もうあなたたちの親の介護は無理」なんて、そんなこと気軽に言えるわけないでしょ!

それをわかっているくせに、「無理ならいつでも言って」なんて、口先だけで優しいことを言う人たちを見ていると……まぁ、腹立つんで、外来では火だるまにしてやりますけどね!

他家から嫁いできた人は無理と言えない

編集T:火だるまに! こ、怖いなぁ~。

長谷川先生:だって、患者さんの実の息子や娘が「お嫁さんはもう限界だから、うちの親には入所してもらおう」と決めないと、誰も決断できないじゃない。そういう判断を他家から嫁いできた人に求めるのって、お門違いも甚だしいですよ。

そもそも、「介護がつらかったら、遠慮せずに言ってね」なんて口先だけで優しいこと言う人って、たいてい、診察についてもこないんですよね。

もし数ヵ月にいっぺんでも病院に付き添って医師の話を聞いたり、その際の移動だったり待ち時間だったりを何度か経験していれば、「あなたが無理だと思ったら言ってね」なんて、他人任せなセリフは言えないはずなんだから。

編集T:経験していないから、「あなたが無理なら」なんてことが言えるのか……。

長谷川先生:そうですよ。だから、患者さんに徘徊の症状が出てきたり、そうじゃなくても、お嫁さんを見ていて介護がしんどそうだったら、患者さんの実の子が「そろそろ大変だから、施設にお願いしよう」と言い出さなきゃいけないんです。

他家からやってきて頑張ってくれている人を、守る。それこそ優れた判断力であり、包容力であり、人間力ってもんですよ。