「海外でも同じ?」日本人の"2大マウント"合戦

教育移住先で起こりやすい「日本人同士のトラブル」, 「子どもの英語力」でマウントする親たち, 「ビザを含む生活スタイル」もマウントする材料, 「違い」は気にしないに限る

子どもの教育のために、自らの意志でマレーシアに移住する日本人家族が増えている(写真は日本人が多く集まる盆踊り大会の様子。2024年、筆者撮影)

みずもと氏は2022年に家族でマレーシアに移住。2人の子どもはインターナショナルスクール(インター校)に通い始めて3年目を迎える。
世界のインター校市場の調査機関ISC Researchの調査によると、マレーシア国内のインター校で学ぶ生徒の数は右肩上がりで推移しており、マレーシアを教育移住先として選ぶ日本のご家族も増えている。
その上で、日本からの移住者・留学者が増えるほど直面するのが「日本人同士の人間関係の悩み」と聞く。
今回の記事では、筆者の経験や周囲の教育移住者の声から、教育移住した日本人同士で起こるトラブルの事例について紹介する。

教育移住先で起こりやすい「日本人同士のトラブル」

「日本人同士のトラブル、たとえば『マウントを取った、取られた』みたいな親同士のトラブルも聞くことがあります」(マレーシア教育移住・留学エージェント「GLOBRIDGE」代表・藤井佐和氏)

【写真で見る】タレントの優木まおみさんも教育移住を決めた「マレーシアの暮らし」の超リアルな様子

マレーシア教育移住・留学エージェントとして、多くの日本人家族のサポートをしている「GLOBRIDGE」代表・藤井氏に「教育移住をされた方から聞く、移住のトラブルにはどんなものがありますか」と、尋ねたところ、予想外の答えが返ってきました。

「慣れない外国での生活で、心の拠り所が欲しいと思われる方もいらっしゃいます。コミュニケーションがとりやすいので日本人同士で固まりやすいのですが、日本人コミュニティの結束が強くなって一緒に過ごす時間が増えると、『同じ母子留学者なのに』『子どもは同じインター校に通っているのに』なぜうちはこうなのだろう、相手はこうなのだろうと比較してしまうケースもあるようです」(前出・藤井氏)

マウントの取り合いや陰口など、日本人同士の人間関係はどこでも一緒だと感じる、という声もあるそうです。

マウントといえば「学歴」のイメージがありますが、そもそもインター校には偏差値がないため単純な比較ができません(それでも、「名門インター校か」や「学費帯の高低」など、比較しようと思えば比較は可能ですが―)また、昨今では働き手である父親を日本に残し、母子のみで留学される方も多く、「職業」も見えづらい部分があります。

では、教育移住では「どのような要素」がマウントや陰口の原因となる「比較対象」になりやすいのでしょうか。

「我が子はまだ『英語補講クラス』なのに、同時期に入ったあの子は『英語補講クラス』を卒業した」

前出の藤井氏によると、「子どもの英語力」は「マウントを取った、取られた」のトラブルになりやすい要素のひとつだそうです。

「子どもの英語力」でマウントする親たち

「子どもに英語を話せるようになってほしい」という希望を抱いてマレーシア教育移住を志す親御さんが多いからこそ、過敏に反応しやすい話題なのかもしれません。

インター校では英語が母国語でない生徒のために「英語補講クラス」を設けていることがあります。

英語が苦手な生徒は「英語補講クラス」からのスタートになるのですが、英語力が向上し、通常クラスの授業でも問題ないだろうと判断されると、「英語補講クラス」を卒業することになります。

どのタイミングで「英語補講クラス」を卒業するかが、ある意味分かりやすい「英語上達の指標」と言え、比較対象となりやすいのかもしれません。

教育移住先で起こりやすい「日本人同士のトラブル」, 「子どもの英語力」でマウントする親たち, 「ビザを含む生活スタイル」もマウントする材料, 「違い」は気にしないに限る

インター校は「英語で学ぶ」場所。「英語補講クラス」の場合、英語が苦手な日本人同士で固まってしまい、「英語が思うように上達しない」という声も聞かれる(写真:筆者提供)

「日本人同士の集まりでは『マウントを取っている』と思われないように、できるだけ自分の子どもの成績の話はしないようにしている」という声も実際に聞いたことがあります。

英語力が伸びるかどうかは子どもの個性や意欲、かつ、渡馬する前の英語レベルや渡馬後どれほど学校内外で英語に触れる機会を持つかなど、さまざまな要因が影響するものですので、単純に比較できるものではありません。

ですが、とくに数年で日本に帰国する予定がある場合、焦りや不安のあまり「結果」だけに目が行ってしまい、子どもの英語力を比較して親が劣等感を抱いてしまうことがあるようです。

一口に親子での教育移住といっても「家族で渡馬する場合」「母子だけで渡馬する場合(母子留学)」があります。

前者の場合は、「親がマレーシアで就労している」あるいは「親が経営者やリタイアメント組で住む場所を比較的自由に選べる」ケースが多く、後者の場合は「父親が仕事等で日本を離れられない事情があり、母子だけがマレーシアに住む」ケースが多いです。

どのケースも慣れない異国の地で生活することに変わりはありませんし、それぞれの生活スタイルならではの課題や苦労もあるでしょう。

ですが、「隣の芝生は青く見える」とはよく言ったもので、「相手は自分よりも恵まれている」と考えると「マウントを取られた」と感じてしまうことがあるようです。

「ビザを含む生活スタイル」もマウントする材料

「MM2Hビザ」を取得し、家族でマレーシアに教育移住した方がいます。

「MM2Hビザ」とは「マレーシア・マイ・セカンドホームプログラム」という名の長期滞在ビザのこと。

現行の発給要件では、「最低でも15万USドル以上(約2200万円以上)の固定預金をすること」「最低でもマレーシア国内で60万リンギット以上(約2100万円)の不動産を購入すること」など、資産に関わる最低条件が定められています(特別経済地域を除く)。

子どもが同じ学校に通う保護者同士、「どのビザでマレーシアに滞在しているのか」という話をした際、「MM2Hビザで」と正直に申告したところ、以降「私たちとは違うから」と集まりに声をかけてもらえなくなったそうです。

ご本人は決して自慢したつもりではなかったのですが、「『MM2Hビザ』を取得している=生活水準がある程度予測できる」ことから、「マウントを取った」と思われてしまったのかもしれない、とのことでした。

教育移住先で起こりやすい「日本人同士のトラブル」, 「子どもの英語力」でマウントする親たち, 「ビザを含む生活スタイル」もマウントする材料, 「違い」は気にしないに限る

MM2Hビザの要件。カテゴリー別に資産要件が変わる(Ministry of Tourism, Arts and Culture Malaysia<マレーシア観光・芸術・文化省>サイトより引用“Insights on the Categories – English Version“)

ビザの種類だけでなく、住んでいるエリアやコンドミニアムでも生活水準が予想できるので、同様に「マウントを取っていると思われるのが嫌で、正直に話しづらい」という声も耳にします。

とくに日本人が多く住むエリアの場合、誰と誰がつながっているのかわからないので、愚痴も言いづらい空気があるようです。

「国際的な感覚」「多民族・多言語・多文化の国ならではの広い視野」マレーシア教育移住に希望を抱き渡馬したものの、子どもの学力や生活スタイルでの「マウント合戦」に巻き込まれ、「これでは日本にいる時に苦労した『人間関係』と同じではないか」と悩んでしまう。

そうならないために、親はどんな心構えで渡馬すればよいのでしょうか?

教育移住先で起こりやすい「日本人同士のトラブル」, 「子どもの英語力」でマウントする親たち, 「ビザを含む生活スタイル」もマウントする材料, 「違い」は気にしないに限る

マレーシアのコンビニエンスストアの看板。マレー語、英語、中国語、タミル語が書かれている。(写真:筆者撮影)

「違い」は気にしないに限る

様々な歴史的背景をもつ多民族・多文化国家のマレーシアには、マレー系および先住民族の経済的地位向上を目的にした優遇策があります。

たとえば不動産購入時、「ブミプトラ割引」というマレー系および先住民族にのみ適用される割引があります。また、国立大学の入学枠も民族によって「違い」があると聞きます。

教育移住先で起こりやすい「日本人同士のトラブル」, 「子どもの英語力」でマウントする親たち, 「ビザを含む生活スタイル」もマウントする材料, 「違い」は気にしないに限る

マレーシアを代表する国立大学、マラヤ大学のファンデーションプログラムハンドブック。(2024/2025)「Bumiputera candidates only」との記載が(マラヤ大学ホームページより引用)

「同じマレーシア人なのに『違い』があるなんて不満に思わないの?」と中華系、インド系の友人に尋ねたらこんな答えが返ってきました。

「今、自分たちがすべきことに集中するほうが建設的だから」

いちいち腹を立てても仕方ない、「違い」は気にしないに限る、と。

隣の芝生と比較して不平不満を言うよりも、自分の芝生を育てることに集中する。もちろん、すべての人がそのような心構えでいるかはわかりませんが、多民族・多文化国家で「違うのが当たり前」のマレーシア人ならではの処世術なのでしょう。

人間関係や文化・価値観の違い等が理由で親自身がマレーシアでの生活に馴染めず、子どもを連れて早期帰国するケースもあると聞きます。

「海外に出た今だからこそ、親御様自身も他人との比較ではなく、自分自身やお子さんに目を向け、『何が自分たちにとって大切にしたい価値なのか』を見つめる良い機会になるのではないでしょうか」(前出・藤井氏)

住み慣れた日本を離れ言語も文化も価値観もまったく違う環境下で生活することは、国際感覚を身につけ視野を広げる好機――それは子どものためだけではなく、私たち親自身が視野を広げ、日本で悩み続けた人間関係のしがらみから卒業するための好機でもあるのかもしれません。