【ナゼ?】日本との待遇に差…“トランプ関税”巡るアメリカと各国との交渉” 歓迎ムードで『好待遇』だったイタリア 両国の“差”と“共通点”とは?そして、イタリアの振る舞いから学ぶべき交渉術とは―?

 “トランプ関税”を巡るアメリカと各国との交渉。日本の次に会談を行ったイタリア・メローニ首相は、日本と比べるとかなりの『好待遇』を受けました。その交渉術や振る舞いには、日本も学ぶべきヒントが。日本とイタリアの“差”と“共通点”を『読売テレビ』高岡達之特別解説委員が解説します。

■まるでプロモーションビデオ?“関税交渉”イタリアはアメリカから歓迎ムード 映像や写真から見えた日本とイタリアの「差」とは―

『読売テレビ』高岡達之特別解説委員 ©ytv

 なかなか笑い事にならないのはアメリカとの関税交渉なんですが、アメリカ東部時間の2025年4月16日に日本と会談し、その翌日にイタリアと会談をしました。実はイタリアと日本は、経済も国際的な立場も大変境遇が似ています。しかし、交渉の仕方が若干違いました。

今後の交渉モデルになる? ©ytv

 日本はG7の中では最初に呼んでいただくことになりました。イタリアもG7を兼ねていますが、ヨーロッパの国々の中では最初に交渉へ行きました。本日紹介したいのは、このイタリア・ワシントンでの交渉姿勢が、今後の各国のモデルになりそうだということです。

プロモーションビデオのような映像 ©ytv

 アメリカとの関税交渉において、今回のイタリアの振る舞いが“外交通”からも「ほお~」といった声が上がっています。ホワイトハウスは外国から首脳が来ると、必ず映像や写真をホワイトハウスで公式に公開します。イタリアの今回の訪問映像は、まるでプロモーションビデオです。ちなみに日本の動画はありません。このプロモーションビデオとも言うべきイタリアの訪問映像ですが、ホワイトハウスが撮影・編集しているんです。つまりアメリカ側の態度がむき出しになっているということです。

メローニ首相が先を歩く映像に注目 ©ytv

 そしてこの映像で注目すべきところは、メローニ首相がトランプ大統領の前を歩くシーン。メローニ首相は一応お客さんなんです。これはアメリカの有権者も見る動画なんですが、このホワイトハウスの主であるトランプ大統領の前を先に歩いていくメローニ首相の姿を堂々と公開したというところに、やはりホワイトハウスの歓迎ぶりが見えるわけです。

最初から首相が行くのは「危険」と判断か ©ytv

 日本側もとても悩んだそうですが、日本は担当者である赤沢亮正経済再生担当大臣が先に会談しました。一方、イタリアは最初から首相が行くという選択をしました。日本側が赤沢経済再生相に先に行ってもらったのは『最初から最高責任者が行くと、いきなりひざ詰めで数値目標など言われてしまうと危ない、本当にアメリカが他の関税もやめてくれるかどうかは分からないので、まず担当から行きましょう』というのが日本流だからです。

イタリアはスタートから“全力感” ©ytv

 ところが、イタリアはメローニ首相が主要閣僚も全員連れて乗り込んだので、アメリカからすると、最初から全力で来てくれているとなる。それは好感度が高いです。ほとんどプロモーションビデオのようなあの映像が撮れたのも、たくさんのカメラが待っていたことになりますから、話をする前から歓迎ムードなんです。

イタリア側の公開写真 ©ytv

 次に、イタリア側が公開している写真ですが、大統領とマンツーマンの話が終わった後の全体会合の写真です。これは日本もやっていますが、イタリアの写真はランチのお皿が並んでいます。日本の会合の時は実務者でしたが、イタリア側はフルメンバーに近いので、アメリカ側も大統領・バンス副大統領などオールスターキャストで来ています。

トランプ政権と共に闘う ©ytv

 そうなると、ものすごく話を詰められたのではないかと思われますが、実はほとんど詰めた話がなかったと言われていて、トランプ大統領はSNSで「ごく簡単に貿易の話をしただけだ」と言っています。イタリア側は、根本的にアメリカと“闘うものが一緒”だということを今回の関税問題が起きる前からずっと言ってきたんです。

イタリアとアメリカの課題 ©ytv

 アメリカが今回、中国・メキシコ・カナダに対して厳しい対策に出ている『合成麻薬フェンタニル』という、アメリカを揺るがす麻薬なんですが、実はこれはイタリアでも問題になっていて、メローニ政権もこれと戦っています。

 それから不法移民の問題は、単なる不法移民というよりも、移民の人たちがギャング化するということも、同じ課題です。

 そして多様性の問題です。日本の場合は、“みんな色んな人生があるんだから受け入れよう”となっていますが、イタリアもアメリカも「ちょっとやりすぎだ」となっているので、これをトランプ大統領の前で言うと馬が合うわけです。

■メローニ流交渉術 重要な話は“マンツーマン”で自ら英語で交渉 さらに“努力”をアピールで防衛費の話も軟化?

メローニ流“誤解はさせない” ©ytv

 そして、もう一つのポイントが“マンツーマン”です。

 最初はトランプ大統領とメローニ首相で、細かい関税の話もしたいわけですが、イタリア側は『誤解をさせてはいけない』ということを思ったようです。この『誤解をさせてはいけない』というのは、イタリア政府の通訳の方が、イタリア語を英語で通訳していたところ、メローニ首相が通訳を途中で止めて、自ら英語で話はじめました。これは通常ではあり得ませんが、メローニ首相からすると“その翻訳ではアメリカ側に誤解されてしまう”と考えたんです。なぜかというと、安全保障の話をしていたからです。

苦労人の“語学力” ©ytv

 あまり日本で知られていませんが、メローニ首相というのは大変苦労人です。家庭の経済環境に恵まれず、色んなアルバイトをしながら、何とか自立した女性になりたいと、旅行関係の専門学校を出て、そこでイタリア語以外に、英語・フランス語・スペイン語もできます。普通はそういう“苦労人の語学力”の部分は出さないんですが、それを出して正確にイタリアの意図を伝えたいという話をしました。

防衛費の話 ©ytv

 その防衛費の話ですが、これは日本と境遇が似ています。アメリカ側からすると日本もイタリアも少なすぎると話しています。実はイタリアは1.5%くらいで、日本も増やすと言いながら、まだ2%には届いていないんです。なので、ここで通訳に「防衛費を上げる」と勝手に通訳されると怖いわけです。

メローニ首相は“努力”をアピール ©ytv

 そこで、ご本人は英語で「EUは防衛費増額に取り組むと約束している。我々全員がより努力しなければならない」と補足し、メローニ首相は、『努力』という言葉を連発しました。

 「イタリアは2%に上げようと私は国で頑張っています。同時にEU・ヨーロッパ全体でウクライナの問題がありますから、EUももっと努力すべきなんです」ということを話しました。そうするとアメリカ側の解釈としては「そう言うんだから2%は頑張るんだな」ととれる。

イタリアが影響を与えた可能性も ©ytv

 イタリア側は『努力』という言葉を連発していますから、アメリカ側からすると「数値はあくまで“目標”なんだな」となる。これが日本の交渉術だと、“確約できる”という保証を国内で取ってからでないと言えないんです。

 日本時間の2025年4月21日未明にアメリカ側は「どこの国でも、とにかく目標を掲げてくれればいい」というところまで、話が軟化してきました。それでも“合意”だという言い方をしているので、イタリアが何か影響を与えた可能性もあります。

 イタリアのもう一つの方法は「ヨーロッパの窓口になる」ということを明言しています。トランプ大統領とは一応、気心が知れていて、英語も通訳なしで話せます。当然、フランスやドイツだとか、防衛費を上げることに国の中で調整がいるという後ろ向きな国もあるわけですが、イタリアは「アメリカと一緒に説得する」としていて、ここは日本と境遇が似ています。

“イタリアのカデナ”アヴィアーノ空軍基地 ©ytv

 日本は沖縄に嘉手納基地という大変大きな米軍基地があります。本当に台湾有事の時は、ここが要になると言われているところですが、実はイタリアにも“イタリアのカデナ”と呼ばれるような場所があります。

 それが『アヴィアーノ空軍基地』です。アメリカの戦闘機部隊が駐留して大変長い歴史を持っている空軍基地で、これはアメリカにとっては対中東・対イスラエル有事の時に欠かせない、とても良い場所にあるわけです。

 アメリカ海軍というのは、海上に年中空母を置いています。イスラエルはアメリカと友好国で、ウクライナも実は近いんです。そしてもし何か問題が起きた時に、ちょうど両国の近くに米軍の地上基地のようなものがある。日本の『嘉手納基地』と同じで、使い勝手がいいんです。だからアメリカとしてもイタリアと大喧嘩をしたいわけではない。

■アメリカとの交渉カード“LNG”が各国で被りまくり?日本の交渉の行方は…

日本の全輸出の10%がアメリカ ©ytv

 日本にとってアメリカは、輸出の大事な相手です。イタリアも全輸出の10%がアメリカなんです。イタリアはスパゲッティが美味しいだけじゃないんです。“もの作り”の大国なんです。車といえば『フェラーリ』で、どこでも売っている・作っているような車じゃありません。イタリアは他に『フィアット』という一般大衆車のような車も作っていて、ヨーロッパで大変なシェアを持っています。

 そしてイタリアは薬やパスタも有名で、アメリカ人はオリーブオイルが大好きなので、イタリア産のオリーブオイルはものすごくシェアがあるんです。こういったことで関税は10%になっています。

 一方、日本への関税は、イタリアより多い20%です。車のことが強調されますが、日本も全輸出のうちの2割がアメリカなんです。こういった関係もあり、イタリアと境遇が似ているので、安保に関しても、日本は“努力”という言葉でなんとか乗り切れるかもしれません。

みんな同じカードを切り始めている? ©ytv

 しかし、アメリカに切るカードが被ってきました。もしアメリカ側から『何か買ってくれ』ということになったら、メローニ首相は『アメリカのLNG(液化天然ガス)をいっぱい買いますよ』となります。でもこれ、どこかで聞いた話ですよね。

 そう、実は日本も、石破総理がアメリカへ行った際、「アラスカのLNGをいっぱい買いますから、これを買ったら貿易赤字はなくなります」と言いました。しかし、その後トランプ大統領は「韓国や他の国も買いたいと言っている」と話し、結局みんなが『LNGカード』を切るため、高くなってしまう可能性があります。

石破総理の訪米時期は? ©ytv

 そして石破総理は「適切な時期に訪米をする」と言っていますが、ではその適切な時期はいつなのでしょうか。候補としては、まず7月9日ですが、これは相互関税の90日間の猶予が切れる時です。アメリカの東部時間で午前0時1分になります。

 ただ私はもうちょっと早いと思っています。というのはG7の首脳がカナダに集結する6月17日は、2025年のG7サミット最終日です。ここにトランプ大統領が来た場合「おい、日本どうなった?カナダどうなった?フランスは?」という話になりかねません。その6月17日はもうすぐそこです。

(「かんさい情報ネットten」2025年4月21日放送)