「脱・ヨボヨボ」目指す高齢者に不可欠な栄養素2つ

たんぱく質の不足が招く高齢者の「ヨボヨボ化」, さらに拍車をかけた2020年の「緊急事態宣言」, 「元気で長生き」に必要なのは薬ではない, 高齢者を低栄養から救う「強い味方=牛乳」

「イキイキとした老後」に欠かせない栄養素とは(写真:hamahiro/PIXTA)

元気で長生きするのに必要なのは「薬を飲む」ことや「粗食」にすることではない――。こう語る精神科医の和田秀樹氏は、高齢者がヨボヨボになってしまう原因の1つとして「圧倒的な栄養不足」を指摘します。
感染症や病気のリスクを下げ、イキイキとした毎日を高齢者が送るために必要な栄養素とは何なのか。和田氏の著書『医師が教える長生きする牛乳の飲み方 たんぱく質をおいしくとって健康寿命をのばす!』から、一部を抜粋・編集する形で解説します。

たんぱく質の不足が招く高齢者の「ヨボヨボ化」

高齢者専門の精神科医の私から見て、中高年の多くは圧倒的に栄養が不足しています。

それには2つの理由があって、1つは年齢とともに消化力が落ちて食事量が減ること。もう1つは「健康のために」「病気になりにくいから」と、「これは食べる」「これは食べない」という偏食です。

こうした食習慣が招いてしまうのが低栄養。そして、これがどれだけ中高年にとって危険なことか……。

特に中高年以降に不足しがちな栄養素は、たんぱく質と脂質。多くの人にとって、たんぱく質が多く含まれる肉などが消化に負担がかかるため摂取量が減り、野菜などを中心にした食生活にシフトする傾向にあるようです。

たんぱく質は筋肉をつくる大切な栄養なので、不足すると足腰が真っ先に弱くなります。そして、ここから畳みかけるように老化が始まります。

歩くのがしんどくなって外出や人に会う機会、会話が減って認知機能が落ちる、内臓も弱くなる、肌も衰えるなどヨボヨボまっしぐらです。

脂質については、コレステロール値を気にして摂取量を抑えることを意識する人が増えます。

しかし、コレステロール値が低く基準値に近ければ近いほうが安心というのは大きな勘違い。コレステロール値は高齢になれば基準値より高いくらいが病気になりにくいのですから。

また、コレステロールは免疫細胞の材料であるにもかかわらず、避けてしまうことで免疫機能を低下させてしまいます。すると、感染症や病気のリスクが高まり、イキイキから遠ざかってしまうのです。

こうした低栄養や免疫機能の低下に加えて、ボケること、病気や死ぬことなど、高齢になると健康が失われていくことに過剰な恐怖心を抱き、病院通いが始まって薬が増えていくことも、ヨボヨボを加速している場合があります。

さらに拍車をかけた2020年の「緊急事態宣言」

薬は病気を治すためのものだから悪いわけではないけれど、薬頼みは副作用の危険性もあるので考えものです。

例えば、骨粗しょう症の薬に頼りすぎて胃腸障害を起こす、認知症の薬で失禁症になる。それに気づかず、胃腸や失禁症を改善する薬を出してしまう医者もいます。薬ループにはまり、薬漬けから抜けられません。

このように、高齢者にはヨボヨボになる理由がそろっているのです。

そしてもうひとつ、高齢者の不健康に拍車をかけたのは、新型コロナウイルスが蔓延していた時期に、「外出は控えて」と家の中に閉じ込めたことです。日本の医療はこれで大丈夫なのか、と疑問でなりません。

2020年4月に緊急事態宣言が発令され、移動や人と話す自由が大きく制限されました。特に高齢者に対しては、感染しないことを最優先として、家の中に閉じ込めようとしたのです。

その結果、足腰が弱り、ひとり暮らしの方は会話をする機会が減りました。

また、大切な家族と会えない、最後かもしれない旅行もできず、人生の娯楽を奪われたことでヨボヨボになった高齢者が増えたのです。

その後はアルコール消毒やマスクの着用が推奨され、日常的にウイルスや細菌に接する機会が激減。免疫系が十分に訓練されず、免疫機能の低下につながったのだと思います。

「元気で長生き」に必要なのは薬ではない

医療は病気を治すためのもので、治療や薬でしんどい症状を改善します。しかし、人を元気にするのは医療ではなく、栄養や免疫、そして娯楽なのです。

元気で長生きするのに必要なのは、病気にならないように薬を飲む、粗食や偏食にするその前に、栄養状態をよくして免疫機能を上げて楽しく過ごすことなのです。

栄養状態がよければ、年齢よりも若々しく見えるはずです。

野菜に重きをおくのではなく、不足しがちなたんぱく質をしっかりとれていれば、肌や髪は若々しく、血管や筋肉も強くて老けづらい。血管が丈夫なら脳出血などにもなりにくい。

さらに、筋肉があれば颯爽と歩けて加齢に伴う筋肉の減少や筋力の低下(サルコペニア)の防止や、脳の活性化にもつながり認知症のリスクも下がります。

無意味に嫌ったコレステロールをしっかりとれば、免疫機能が高まって病気のリスクは減るし、女性ホルモンや男性ホルモンが活性化して意欲にあふれ、人付き合いを大切にするようになります。

漠然と健康への不安を抱えるより、栄養状態を底上げするほうが、イキイキと健康長寿を全うするためには建設的なのです。

しかし、高齢になると食が細くなるのも事実。「肉は苦手なので、プロテインや豆腐でもいいですか?」と聞かれることがあります。結論から言うと「NO」。

プロテインは確かにたんぱく質の摂取量を確保できますが、それ以外の栄養素はあまり期待できません。

豆腐も良質なたんぱく質ではありますが、高齢者に大切な免疫やホルモンの材料となるコレステロールがとれません。

高齢者を低栄養から救う「強い味方=牛乳」

こういうときに便利なのが「牛乳」です。牛乳には次のようなよさがあります。

●5大栄養素が含まれていて完全栄養食に近い

●不足しがちなたんぱく質を補いやすい

●免疫細胞の材料となるコレステロールがとれる

●骨の材料であるカルシウムの吸収率が高い

●消化の負担が小さく、食欲がないときでも飲みやすい

●歯が悪くても飲める

●朝飲めばよい睡眠に導かれ、昼飲めば活動的に、夜飲めば骨が健康になる

●水分補給代わりに手軽にとれる

●コーヒー、ココア、いちごやキウイなどを入れてもおいしい

●塩と相性がよくて料理にも使える

●ヨーグルト、バター、生クリームなど、身近な乳製品でも同様の栄養がとれる

●スイーツの材料にもなるので、甘いものを食べて幸せになれる

こうした強みがあることが、私が中高年に牛乳をすすめる理由です。ぜひ「毎日牛乳」を実践してみてください。イキイキと過ごすための第一歩になります。