本来は「家畜用の飼料」だった備蓄米を大量放出…「令和のコメ騒動」渦中の小泉進次郎氏”パフォーマンス”を紐解く

2024年に端を発した「令和の米騒動」。2025年までのわずか1年でコメの価格は6割以上暴騰した。政策対応は刻々と打ち出されているものの、先行きはなお不透明――日本人の主食であるコメを「買えるかどうか」を気にしながら節約を強いられる日々が続いている。

農業は国防そのものだ。世界の供給網が揺らげば、四方を海に囲まれた島国・日本は一気に脆弱になる。国難を乗り切るためにもっとも大切なのが「食料安全保障」なのだ!

コメが買えない、高い、この異常事態をどう乗り切るのか?そして、この未曾有の危機の裏側には何があるのか…。この国の食料問題の「暗部」と闘い続ける東大教授・鈴木宣弘の告発と提言の書『もうコメは食えなくなるのか』より一部抜粋・再編集してお届けする。

『もうコメは食えなくなるのか』連載第3回

『コメ農家の努力を腐す揶揄の数々…今年5月に更迭された江藤拓・元農林水産大臣の恐るべき失言を振り返る』より続く。

5キロ2000円を目指して

小泉大臣が誕生した5月21日、国会の党首討論で石破茂首相は「5キロ当たり3000円台までコメの価格を下げる」と明言している。小泉大臣はさらに踏みこみ、備蓄米の店頭価格を「5キロ2000円程度にする」とぶち上げた。また備蓄米の放出量については「需要があれば無制限に出す」と約束した。

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ただ、備蓄米を競争入札で卸せば、市場の相場に近い価格になってしまうから、小売米価を下げる効果は小さくなってしまう。

そこで小泉大臣は競争入札ではなく、随意契約に切り替えることに決めた。国が指値でコメの値段を決め、売るのだ。こうすれば、売る側が値段を吊り上げることができなくなる。

備蓄米の大量放出

1993年の異常な冷夏によって、コメが大凶作に陥ったことをご記憶だろうか。あのときは店頭からコメが消え、カリフォルニア米やタイ米を緊急輸入してしのぐ事態となった。学校給食では米飯を出す日を減らし、パン食を増やして主食を代替したものだ。

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あのときの教訓に照らし、日本政府は合計100万トン規模のコメを買い入れ、倉庫で備蓄しておく制度を1995年に立ち上げた。大規模自然災害や凶作はいつ突然起こるかわからない。そうした事態に備えるための主食のストックだ。

コメはナマモノだから、当然1年、2年、3年と経つにつれて味が落ち、おいしくなくなる。そこで備蓄米は随時市場に放出され、家畜用の飼料などに活用されてきた。今回は過去に類例のない規模で、それこそ「倉庫がカラになってもかまわない」と言わんばかりにガンガン備蓄米が放出されていった。

所詮はパフォーマンス

通常の卸しルートを使っていたら、どうしたって末端の小売店にコメが行き渡るまでに時間がかかってしまう。2025年5月23日、楽天グループの三木谷浩史会長兼社長は、居並ぶカメラの前で小泉大臣と直談判してみせた。備蓄米をドーン!と買い入れて、同グループのネット販売サイトで一気に売り出すというのだ。

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こうして5月29日、「楽天市場」で「楽天生活応援米」が発売された。ウェブサイトには莫大なアクセスが集中し、先行発売ぶんはあっという間にソールドアウトした。ほかにもアイリスオーヤマをはじめとする小売大手、さらにスーパーマーケット・チェーンやコンビニエンスストアが、続々と備蓄米販売を開始した。

凶作や有事に備えて倉庫で眠っているはずだった備蓄米は、こうして小売店のワゴンに山積みされ、市場に行き渡った。「過剰在庫ではないか」と心配になるほどだった。

小泉大臣は「メディアジャック」さながら連日テレビに出まくり、小泉劇場を演出した「令和のコメ騒動」はようやく終わった(かに見えた)。しかし、それは特定の「オトモダチ業者」だけに、輸送費まで国が負担するというばく大な国費まで投入し、「安いコメ」を無理やり可能にしたパフォーマンスだった。

『東大特任教授「“令和のコメ騒動”は何度でも再発するだろう」…一時しのぎの「小泉米」が招く次の危機』へ続く。

【もうコメは食えなくなるのか】

コメが買えない、高い、この異常事態をどう乗り切るのか?

この国の食糧問題の「暗部」と闘い続ける東大教授の告発と提言!

アメリカの陰謀「胃袋からの属国化」――地域産業、地域農業を潰し、日米のお友達企業の利益ばかりを追求する「悪魔の農政改革」の深層!

「『日本人がコメが食えない時代が訪れる』と悲観ばかりしていられない。自分が今いる場所で、できることをすぐに始める。そこから『食』の未来への希望がきっと見出せるはずだ」

(本文より)

農業こそは国防。「食料は国防だ」と言うと、「戦争に備えてロジスティックス(兵站)を確保しなければならない」という勇ましい議論だと勘違いされがちだが、そうではない。世界各国が食料危機に陥れば、日本人が食べる食べ物が足りなくなったときに融通してもらえなくなる。そうなれば、四囲を海に包囲された島国・日本はおしまいとなる。

国難を乗り切るためにもっとも大切なのが「食料安全保障」なのだ!

(目次)

はじめに 日本を襲った四つの衝撃

序 章 「令和のコメ騒動」序曲

第一章 減反政策という桎梏

第二章 ミニマム・アクセス米とトランプ大統領

第三章 政治家が示すべき稲作ビジョン

第四章 農業は国防

第五章 日本農業 希望の灯

おわりに