ホラン千秋が「もっと恋をしておけ!」とかつての自分に伝えたい理由とは

24時間ずっと「ワーク」でも「幸せだった」という時期を経て、30歳になるころに、自分自身と向き合って持続可能な働き方を模索しはじめたタレントのホラン千秋さん。どうしても外せない仕事を除き、一日に向き合う現場は二つに制限。そこへ不安はなかったという。ホランさんが考える「ワーク・ライフ・バランス」のあり方とは。(全2回の2回目/前編から続く)
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どんな決断も、チーム一丸となって時間をかけて考え抜いて決めてきたので、決断した後に迷いはなかったんです。それに、ありがたいことに「Nスタ」(TBS系)以外のレギュラーに出演するだけでもハードな環境でした。私の場合は仕事の数が減ることよりも、やりたいことをお断りするもどかしさのほうが大きかったように思います。その度に、「今はがむしゃらに働くのではなく、いかに長く楽しく働ける環境を整えるかだ」と捉えるように意識しました。
ただ、私はラッキーなだけだったとも思っています。自分の年齢や体力を考えるタイミングで、たまたま帯番組のレギュラーという安定した仕事と出合えていたこと。基本的に巡ってくることを想定していないポジションなので、本当にたまたま。でもそれが心理的な負担を大きく減らしてくれていたと思うんです。
それまではフリーランスとして、スポットでいただいた仕事をクリアしていく毎日でした。来週何の仕事をしているかわからないことはよくあったし、レギュラーがあっても番組の改編の度に出演番組は終わる可能性があるので安定しているとは言えません。そもそも安定を求めてこの業界には入ってきてはいないんですが、それでも帯をやるようになると仕事と生活のリズムが掴めるようになり、「少なくとも半年後もこの仕事をしているんだろうな」と少しだけ先を見通せるようになりました。
仕事と生活のバランスを調整して、制限するという決断に踏み切ることができたのは「Nスタ」があったからです。それがなければ、制限なんて怖くて到底できなかったと思います。

――「ワーク」一辺倒の時代から、少しずつライフを大切にするようになった。そして今年3月には、仕事の軸でもあった「Nスタ」を卒業した。
8年間走ってきて、今はいったんライフを楽しもうと思っています。仕事も好きなので働いてはいますけどね。それでも、仕事一筋で駆け抜けてきたので、以前と比べると大きすぎる変化です。
好きなことを仕事にできて幸せな半面、ふと「もし今、この大好きな仕事がなくなったら、私の人生は味気ないものになってしまうのだろうか」と考えたことがありました。せっかくいただいたこの人生、そんなふうに思いながら生きるのは嫌だなと思ったことがあります。だから、2番目に好きなことを探して、仕事以外でも楽しく生きていけたらもっと人生は豊かになると思ったんですよね。
今はマネジャーさんと話しながら、「休む訓練」をしています。その時間をどう有意義なものにしていくか、私にとっては冒険なんです。最近は週1、2回しか仕事がないときもあって、「休んでいて大丈夫かな」と不安になることもあります。そんなときはマネジャーさんに素直に気持ちを打ち明けます。長年一緒に走ってきた信頼できる相手が「大丈夫です」と言ってくれるだけで、そこに具体的な根拠がなかったとしても、安心できるんです。

――多忙な日々を駆け抜けることができたのは、周りの人たちとの関係性が築けていたことも大きい。
もちろん苦しくて大変だった時期もありました。でも、マネジャーさんをはじめ、一緒に乗り越えてきた人がいます。相談すれば、「それでやってみよう」と言ってくれる仲間がいる。とても恵まれた環境で働けているし、いいバランスで仕事をさせてもらえています。
今は、自分で人生を舵取りするフェーズだと思っています。ユーチューブをはじめたのも、新しい挑戦の一つです。人生に「余白」ができたからこそ、今を維持することよりも、どう広げるかをワクワクして考えられるようになりました。
――コロナ禍を経て、生き方はさらに多様化した。仕事にすべてをささげたい人もいれば、プライベートを充実させたい人もいる。さまざまな価値観を束ねるリーダーに必要なのは、「視野を広く持つこと」だと考える。
私自身も若いころ、「末端」として働いた時期があります。戦力にならない私なんて、きっと誰も見ていないと思いながらも、目の前の仕事に向き合い続けました。そんなとき、当時担当していた番組のスタッフさんが「ホランさんはいつもこうだよね」と声をかけてくれたんです。自分のことを見てくれていたんだと、すごくうれしかった。

視野が広い人は、チームメートを駒の一つとして見るのではなく、一人の戦力として尊重していると思います。その姿勢が、チームがうまく機能することにもつながっていくのではないでしょうか。
ワーク・ライフ・バランスは、自分の状態をその時々で見直して、最適化していくものだと考えています。ただ、そこには周りの協力が不可欠です。メンバーがワーク・ライフ・バランスについて相談したときに、リーダーや周りがそれを受け入れられるかは、視野の広さが影響するような気がします。
――ホランさん自身も、アシスタントやMCとして、番組の進行役を務める機会も増えている。
これまでご一緒した先輩たちは、スタジオにいる誰一人として置き去りにしない方ばかりでした。「Nスタ」の井上貴博アナウンサーは周りの信頼が厚く、後輩からも慕われていた一人。メインキャスターとして全員を引っ張らなければいけないので、突っ走ることもありますが、間違いなく番組の精神的支柱でした。スタッフ一人ひとりを見ているし、井上さんがいるからみんな安心して放送が送れたと思います。「Nスタ」をしていた8年間、その信頼が揺らいだことはありません。
くりぃむしちゅー・上田晋也さんやバナナマン・設楽統さんも視野が広い方たちですね。ひな壇の一番上の端っこまで見て、その人が輝く面白い返しをしてくださる心強い存在です。自分自身が場を回す役割をいただくことが増えた今だからこそ、そのすごさを改めて感じています。
――先日、37歳になった。これまでのキャリアに「後悔はない」と言い切る。
当時の自分にアドバイスするとしたら、「失敗を恐れないで」と言いたい。フリーランスは、結果が出なければ他の人に取って代わられてしまう恐怖が常につきまといます。その道を好きで選んだので、「怖かった」と嘆くつもりはありません。でも、また起用していただくために100点を出し続けなければいけないという強いプレッシャーはありました。怖くても、失敗した分だけ人として成長できる気がするので、「失敗はそんなに悪いものじゃないよ」と伝えたいかな。
あとは、「小難しく考えず、もっと恋をしておけ」って本当に言いたい! 具体的に誰か好きな人がいて、仕事のために諦めたというエピソードがあるわけではないですよ。そういう思考になる暇がなかったんです。でも、同じように仕事にまい進していると思っていた人の熱愛報道が出たりして、「待ってよ! ちゃんと恋してたの!?」って思ったことは何度もありますから(笑)。
(構成/AERA編集部・福井しほ)
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