「EVはエコ」は嘘だった? 最初の2年間、エンジン車より「3割も多くCO2排出」していた
バッテリー製造の環境負荷
電気自動車(EV)に乗るなら、長く乗らなければ意味が薄いようだ。
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米デューク大学の研究によると、EVは製造過程で内燃機関車(ICE車)よりCO2の排出量が多い。この追加分を相殺するには
「最低でも2年の走行」
が必要になる。つまり、EVは2年以上使わなければ環境効果が限定的なのだ。
研究チームは2025年10月、「PLOS Climate」において、EVとICE車のライフサイクル全体のCO2排出量を分析した。
・使用燃料の生産
・バッテリー製造
・車両組み立て
・運転
に至るまでを比較している。
EVは走行中の排気ガスがゼロで、CO2や窒素酸化物を直接放出しない。しかし製造段階からの環境負荷は見落とされがちである。
EVのバッテリーにはリチウムが使用される。現状、このリチウムはオーストラリアやチリ、中国などで採掘される必要がある。採掘には大量のエネルギーと水が必要で、管理が不十分だと深刻な環境汚染を引き起こすリスクがある。
試算によれば、リチウム1tの採掘で15tのCO2が排出され、100tの水が消費される。こうして得られたリチウムでEV用バッテリー1個を製造すると、最大で15.6tのCO2が排出される。
研究チームは、リチウム採掘とバッテリー製造がEV1台あたり初年度の総CO2排出量の約半分を占めると指摘する。
累積排出量の逆転点

2025年10月24日発表。主要12か国と北欧3か国の合計販売台数と電気自動車(BEV/PHV/FCV)およびHVシェアの推移(画像:マークラインズ)
これまでの研究でも、EVの生産はICE車に比べてCO2排出量が最大70%増えることが示されている。
さらに、EVのバッテリーに充電される電力は必ずしも再生可能エネルギーではない。化石燃料発電の電力で充電すれば、走行中のEVも間接的にCO2を排出することになる。
研究チームの検証では、バッテリー駆動のEVは最初の2年間、
「ICE車よりも30%多くCO2を排出している」
ことが明らかになった。しかし2年目以降、EVはICE車より急速に環境負荷を下げ始める。18年間の車両寿命にわたる累積排出量では、EVが大幅に削減できることも示されている。
つまりEVは、初期の環境負荷を相殺するために、かなりの距離を走行する必要がある。たとえばフォルクスワーゲンの「e-ゴルフ」は、環境に優しいと見なされるまでに
「約12万4000kmの走行」
が必要だ。一般的なドライバーでは2年では到達できない距離である。
そのため、短期間で次の新車に乗り換えると、初期の環境負荷を相殺できない可能性がある。中古車市場で人気のないEVは長期間滞留することもあり得る。
EVを購入したなら、できる限り長く乗ることで、環境メリットを確実に享受したい。
EVのコスト優位性

自動車(画像:Pexels)
研究チームは、環境汚染の経済的・社会的コストを算出する手法で、ICE車が年間約1605ドル(約24万7000円)の環境負荷をもたらすことを突き止めた。
一方、同じ走行距離のEVは、車両寿命を通じて年間629ドル(約9万7000円、61%減)の環境負荷にとどまる。化石燃料だけで発電した電力で充電した場合でも、EVの環境負荷は年間815ドル(約12万5000円)で、ICE車の半分にすぎない。ただしこれは、
「製造から3年目以降のEV」
を対象にした試算である。車両の
・廃車
・バッテリーリサイクル
・メンテナンス
・充電インフラの設置や維持
で発生するCO2排出は含まれていない。それでも、EVの車両寿命全体にわたる累積CO2排出量はICE車より低い。技術やインフラ、公共政策の進歩が続くなかで、ICE車からEVへの移行メリットは増している。
大気汚染の経済的損失

リポート「米国におけるリチウムイオン電池式BEVと内燃機関車の気候・大気汚染フットプリント比較:エネルギーシステム全体の応答を考慮した分析」(画像:PLOS Climate)
バッテリー技術の進歩にともない、EVのリチウムイオンバッテリー1kWhあたりのCO2排出量は2030年までに平均220kg、2050年頃までにはさらに127kg削減されるとの試算がある。
研究チームは、大気汚染と気候変動が自動車に及ぼす影響も調査した。その結果、ガソリン車の推定耐用年数18年における損害の経済的価値は、
「EVの2倍から3.5倍」
に達することがわかった。医療費など、汚染による健康被害の社会的コストも含まれている。技術の進歩によりCO2排出量がさらに削減されれば、この比率は今後さらに拡大する。
EVの環境メリットは今後も増える一方で、減ることはないと見込まれる。こうした背景は、EV導入の大きなインセンティブとなるだろう。オーナーには、愛車をできるだけ長く使い続けてもらいたいものである。