自国だけで健康的な食生活を維持できる国は世界にただ1つ? 世界の食糧生産が抱える問題とは
完全な食料自給を達成している国は1カ国だけ

研究誌『Nature Food』に掲載されたある研究では、世界186カ国の食糧生産能力を検討している。それによると、自国の食糧を完全に賄えている国は世界に1カ国だけしか存在しないという。
元論文:Stehl, J., Vonderschmidt, A., Vollmer, S. et al. Gap between national food production and food-based dietary guidance highlights lack of national self-sufficiency. Nat Food 6, 571–576 (2025). https://doi.org/10.1038/s43016-025-01173-4
部門別の自給率を調査

その唯一の国とは南米の国、ガイアナだ。ガイアナは食料品7部門(果物、野菜、植物性タンパク質、乳製品、魚類、肉類、炭水化物)すべてにおいて十分な生産能力を獲得していた。
中国とベトナムも及第点

ガイアナに次いで高得点だったのは中国とベトナムだ。両国とも、7部門中6部門において自国の需要を満たせていた。
ブラジルは野菜と魚類が不足

ブラジルも5部門(果物、植物性タンパク質、乳製品、肉類、炭水化物)で自国の需要を満たせていたが、野菜と魚類が不足となった。
日本は肉類のみ

一方で日本に関しては、需要を満たしていると評価されたのは肉類のみという結果となった。その他の6部門はすべて不足しているということだ。
指標となったのは「健康的で持続可能な食生活」

指標作成にあたって、この研究では世界自然保護基金(WWF)が提唱した健康的で持続可能な食生活(Livewell Diet)が参照されている。
その内訳は

「健康的で持続可能な食生活」には植物性・動物性のタンパク質や野菜、脱穀しない穀物などが含まれており、高脂肪食品や塩分・糖分を減らすことも推奨されている。
独英の共同研究

研究を行ったのは独ゲッティンゲン大学と英エディンバラ大学の研究チームで、その結果からは憂慮すべき事態が浮き彫りになっている。
ほとんどの国が多くの不足を抱える

研究によると、先述の7部門中5部門以上において自国の需要を満たしていると評価された国は全体の7分の1に過ぎなかったという。
欧州と南米に集中

しかもそういった国は欧州や南米に集中しており、小さな島国やアラビア半島の国々、低所得国はどこも輸入に依存する傾向があったという。BBCの科学部門「Science Focus」が伝えている。
すべての部門が不足している国も

研究では、アフガニスタンやアラブ首長国連邦、イラク、マカオ、カタール、イエメンといった国々ではどの部門においても自国の需要を満たせていなかったともされている。
自給率が低いことそのものは直ちに問題ではない

ただし、論文の筆頭著者であるヨナス・シュテール氏(ゲッティンゲン大学)はBBC「Science Focus」に対して、「自給率が低いことそれ自体が直ちに問題であるわけではありません」とも語っている。
気候などの条件によっては避けられない

同氏いわく、乾燥した気候や貧弱な土壌、不安定な気温などの要因が存在する場合、一国単位での自給率が低下することは避けられないという。
食糧危機への対応力に限界が生じる

ただし、専門家が警鐘を鳴らしているように、自給率が低いと干魃や戦争、輸入制限などによって食糧危機が起きた場合の対応力に限界が生じるとされている。
肉類および乳製品の生産に偏りがある

研究から導かれた懸念は他にもある。肉類および乳製品の生産に大きな格差が存在することだ。欧州諸国は自国需要を上回る生産力を維持している一方で、アフリカ諸国は供給量が限られている。
コンゴ民主共和国の場合

例えば、コンゴ民主共和国は自国の生産能力だけでは肉類の国内需要の15%しか満たせていないという。独メディアドイチェ・ヴェレが伝えている。
植物性タンパク質も不足しがち

より広範な問題となっているのが植物性タンパク質の不足だ。研究によると、主な植物性タンパク源である豆類や穀物類を十分に生産できている国は全体の半数以下に留まったという。
野菜の需要を満たせている国は4分の1以下

野菜になるとさらに数字は悪化する。全体の24%しか国内需要を満たせていなかったのだ。
世界的な取引が重要

こういった結果を受けて、研究チームは論文で国際的な食糧取引の重要性を訴えている。関税のような保護的措置は一連の問題を悪化させこそすれ、解決には寄与しないとも警告されている。
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