手伝わない孫に祖母はあきれ顔。ゲームを続けても信じるシングルファザーの言葉が子供を救う
例えばこどもがソファに寝そべってスマホやゲームをしていたら、どんな声をかけるだろう。
「少しは手伝ってよ」
「いつまで観てるの!」
つい、そんな言葉を漏らしてしまうかもしれない。 しかしもしかしたら、何かを言う前にその子の様子を観察するといいかもしれない。
漫画『夜廻り猫』には、父親の言葉によって救われたこどもがいた。
2015年、作者の深谷かほるさんがTwitter(現X)に投稿した8コマ漫画から始まった 漫画『夜廻り猫』。“涙の匂い”を頼りに夜を歩く猫・遠藤平蔵が「泣く子はいねが〜」と呟きながら出会うのは、誰もが少しずつ心に傷を抱えた人間や動物(時に亡霊も)。今回は「こどもの心情」にフォーカスした「うまい!うまい!」を紹介する。
シングルファザーの言葉
猫の遠藤平蔵が“涙の匂い”をたよりに訪れた先は、とある父子家庭の家。父親が買い物から帰宅すると、実家の母が部屋を片付けていた。こどもは一人、ソファに座り込んでゲームをしている。 帰宅早々、座る間も無く夜の仕事があるからと、30分で夕飯を支度する父親。実家の母はアイロンをかけながら、ソファから動かない孫に言う。
「少しは手伝いなさい」
さらに父親にも苦言を呈する。
「子供に何もさせないんだから… 過保護よ バカになるわよ 人が働いてるのに ゲームばっかり」
すると父親はキッパリと否定し、反論する。
「陸はバカじゃない」
ソファでゲームをしている息子に対して、なぜ父はこんなにも堂々と反論ができたのだろうか。その理由とは――。

手伝わない孫に祖母はあきれ顔。ゲームを続けても信じるシングルファザーの言葉が子供を救う

わかってくれていた
こどもは決してゲームがしたかったわけではなかった。忙しい父親の邪魔をしたくなかったのだ。そして父親は、こどもの気づかいにしっかりと気づいていた。 ――わかってくれていたんだ。 そう感じたことがきっかけだったのかはわからない。翌日、こどもは夕飯作りに挑戦した。 大人たちが外出した隙に、平蔵がこっそりと家の中へ入り、鍋と格闘するこどもに、作り方のアドバイスをする。

『夜廻り猫』©︎深谷かほる/講談社
やがて大人たちが帰宅し、夕飯の時間に。テーブルにはこどもが作った料理が並ぶ。食卓を囲む3人の表情は、とびきりの笑顔だった。
こどもの心
こどもの“涙の匂い”は、学校でのいじめや両親の不仲、大人への遠慮など理由はそれぞれ。幼さゆえに、解決策が見つけられず、ただじっとその痛みに耐えるしかない状況になってしまうことも多いだろう。
しかし、表現方法がわからないだけで、当然ながら感情はある。そんなこどもたちに平蔵、そして時には近くにいる大人がそっと寄り添う。『夜廻り猫』には、私たち大人が現実社会で、どのようにしてこどもと接するべきか、そのヒントが見え隠れしているように感じる。
こどもたちが生きることに希望を見出せる社会になってほしい。そのために制度を整えることは不可欠だ。しかし『夜廻り猫』を通して、身近な大人の存在こそが彼らにとって大切なのかもしれないと感じる。言葉にならない幼き心の声を聞き逃さず、静かに流れる彼らの涙に気づける感性を忘れないでいたい。

『夜廻り猫』©︎深谷かほる/講談社
深谷かほる
福島県出身。2015年10月、Twitterにて『夜廻り猫』の連載を開始。以後、毎夜のように更新を続け、読者の共感を得る。2017年「夜廻り猫」で第21回手塚治虫文化賞短編賞、第5回ブクログ大賞の漫画部門大賞を受賞。
構成/笹本絵里(FRaUweb編集部)