うどんチェーン「1150円食べ放題」お得なの?

「埼玉にはこれといった名物がない」……そんな定説を覆すように、地元民の胃袋をつかんで離さないうどんチェーンがある(筆者撮影)
都道府県の魅力度ランキングで最下位に沈んだ埼玉県。地元の人に「おすすめグルメは?」と聞くと「ないよ……」と愛想笑いを浮かべながら答えられることも多い。たしかに、埼玉に4年間住んだことのある筆者としても「これぞ」といったご当地グルメをイメージしにくいため、その反応には納得できる。
【画像を見る】1150円でこんなに…!?食べ放題の内容はこんな感じ
しかし、おすすめできる料理もある。それは「武蔵野うどん」だ。東京の多摩地域から埼玉の西部地域を発祥とするつけ汁スタイルのうどんは、埼玉県の個人店やチェーン店で広く提供されている。ソウルフードとしてしっかりと根づいているのだ。
今回、訪れたのは埼玉を中心に20店舗展開している「武蔵野うどん竹國」。このローカルチェーン店は3店舗限定で1150円の食べ放題を提供している。
世にも珍しいうどん店の食べ放題は果たしておいしいのだろうか。そして「元」は取れるのだろうか。確認するために食べ放題を実施している東松山店を訪れてきた。
1150円でうどんや天ぷらが食べ放題
「武蔵野うどん竹國・東松山店」はJR高坂駅から徒歩で25分、車で10分の距離にある。開店直前の店舗を訪れると地方のコンビニのような広い駐車場に地元ナンバーの車が続々と乗り込んできた。
敷地内は余裕があり、レンタカーなどを使った出張におすすめの店舗だ。建物の入り口に入ると約10人が並んでおり、堅実な人気がうかがえた。

駐車場には25台の車を止めることができる(筆者撮影)
注文は入り口にある券売機で食券を購入するアナログ方式。選べるメニューは以下の8種類だ。価格は1150円に統一されている。

選べるうどんはつけ汁うどんだけではなく、ノーマルタイプのものもある(写真は武蔵野うどん竹國HPから引用)
メニュー表には「お好きなうどんに麺・天ぷら・白米・漬物が食べ放題」と書かれており、1150円の食べ放題では麺のお代わりはできるが、頼めるうどんはあくまでひとつである。だが、天ぷらに白米、漬物も食べ放題で、火曜日と水曜日にはカレー、木曜日のランチの時間帯にはから揚げまで食べ放題で提供される。さらに、ソフトドリンクも1杯無料で制限時間も無制限。非常に太っ腹なシステムだ。
食べ放題に対して身構える人は少なくない。出張の同行者がいる場合に「1000円ちょっとでうどんと天ぷらを食べられるお店があるらしいよ」とマイルドに誘えることも魅力的なポイントのひとつだ。

システムは食券機の下に記載(筆者撮影)
8種類あるうどんで人気なのはオーソドックスな「肉汁うどん」。一方で、店長のイチ押しは豚バラ軟骨が入った「あま辛汁うどん」とのこと。同じ価格ならトッピングが豪華なほうに軍配が上がる。迷わずに「あま辛汁うどん」のボタンをプッシュ。三角巾と割烹着を着たおばちゃんに食券を渡すと「今日はカレーもありますからね」と丁寧に説明してくれた。
昭和のドライブインのような趣のある店舗
さて、店内を見ていこう。壁際を中心にテーブル席・カウンター席・座敷が設置されていて、中央にはご飯と漬物コーナーが置かれている。

シンプルなご飯ゾーン(筆者撮影)
シンプルな内装の店内は昭和に流行したドライブインのような趣があり、フードコートのような放っておいてもらえる居心地のよさもある。
テーブル席に座っていた中年の女性グループ客は「広くていいわね!」とうなずき合っており、ゆとりある空間での食事が体験価値の向上につながっているようだった。

店内には大学生のグループ客も多数いた(筆者撮影)
食べ放題の目玉はなんといっても天ぷらだ。注文を受け取るカウンターにバットが並べられており、そこから好きなものを取ることができる。
天ぷらのメニューは店舗に任せられており、東松山店では季節によって使用するタネを変えているとのこと。仕込みも店内で実施しているため、個人店のような手作りの味を楽しめる。

店内で揚げた天ぷらがバットに並ぶ(筆者撮影)
筆者の訪れた日は「ごぼうかき揚げ」「さつまいも」「柿」「かぼちゃ」「人参」「ネギ天」「ちくわ天」がラインナップされていた。かき揚げやさつまいもの天ぷらは一般的なうどん店で見かける大きさだが、単品の野菜天ぷらはひと口サイズ。自分の胃袋に合わせた天ぷらを選択できる。
セルフカウンター式のうどん店ではサイドメニューをじっくりと決める時間は少なく、追加注文するハードルも高い。一方で東松山店では落ち着いて天ぷらを選んだり、おかわりもできる。このことは「安心して食事をできる」という付加価値も生み出しているように感じる。
パワー型のつけ汁うどん
10分ほど経つとマイクで食券番号を呼ばれたのでカウンターへ。うどんとつけ汁を受け取り、長方形の皿に8個の天ぷらを積みこんで席へ帰還。ご飯とカレーをお盆の上に並べると眼福な光景が広がった。

つけ汁うどん、天ぷら、カレーのフルコース(筆者撮影)
うどんは平べったくてやや厚め。断面はギザギザとしていて、箸でつかむとずっしりとしていて重い。すすってみるとやや強めの塩気に衝撃を受けたが、コシの強さとモチモチ感のバランスは取れている。クセが少なく万人ウケする食感だ。

(筆者撮影)
つけ汁はラーメン二郎のようにコッテリとしている。表面はもやしで覆われていて、その山を箸でかきわけると豚バラ軟骨が2個沈んでいた。つけ汁と同じ茶色に染まった豚肉は確実に正解の味だ。見ているだけで気持ちがどんどん高まっていく。

箸でつかみきれないほどもやしが大量に(筆者撮影)
つけ汁うどんを食べる前だが、豚バラ軟骨の魅力には抗えなかった。つい口へ運んでしまうと脂身がホロホロと溶けていき、旨味の余韻が広がる。「これは白米に載せるべきおかずだ!」と直感的に思い、ご飯の上に豚バラ肉をオン。一気にカッコんでしまった。

セルフ式のチャーシュー丼が完成(筆者撮影)
さて、意図せずウォーミングアップを済ませたが、気を取り直してつけ汁うどんを堪能していきたい。うどんをつけ汁に投入すると甘いつけ汁と麺の塩気が合わさり、絶妙なコクが生まれた。クセになる刺激があり、どんどん食べ進めてしまう。
味変にも挑戦してみたい。ファンも多いというカレーに天つゆを注ぎ、うどんとちくわ天を投入すると「ミニカレーうどん」が完成。親しみがありつつも濃厚な味わいとなった。自分でアレンジできるのは非常に楽しく、グループで訪れるとワイワイしながら食事することもできそうだ。

カスタマイズ性も高い(筆者撮影)
うどん店のサイドメニューの花形といえばかき揚げだ。そのままかぶりつくとごぼうの素朴な甘味が広がった。あまりギトギトしておらず食べやすい。

ボリューム満点のごぼうのかき揚げ(筆者撮影)
コッテリとした食材が続くと徐々に胃袋に余裕がなくなってくる。少し休憩するためにひと口サイズの天ぷらを食べることにした。
予想以上のおいしさに驚いた柿の天ぷら
ネギ天やちくわ天をほおばり、ただの変わり種にも見える柿の天ぷらへ。おそるおそる食べてみると柿のジューシーさと衣のサクサクさが合わさって心地いい甘さを堪能できた。果物の天ぷらを食べたのは初めてだったが、予想以上のおいしさに驚いた。

柿の天ぷらはひと口サイズにカットされていた(筆者撮影)
ご飯や天ぷらをおかわりして2周目を終える頃には満腹になった。実際に食べた量は以下の通りである。
試算できなかった天ぷらを除いて他店のグランドメニューに換算すると2410円。あくまで参考価格ではあるが、食べ放題価格の1150円に対して十分に元を取れる結果になった。
夜営業はしないという営業形態
「武蔵野うどん竹國・東松山店」で1150円の食べ放題を実現できている理由の一つはおそらく店舗の営業体制にある。他店舗の竹国ではホールスタッフが数人いるが、東松山店で接客しているのは1人のみ。注文の受け取りと片付けはセルフサービスであり、他店舗よりもスタッフの手はかからない。営業時間も11時から18時までと一般的な飲食店より短いため、トータルでの人件費を抑えられていると推測できる。
また、スタッフに地元の主婦が多いことも特徴的だ。おそらく営業時間の短さが「日中だけパートで働きたい」というニーズを満たすことにつながり、人材確保の面でも有利に働いていると見られる。

(筆者撮影)
1954年に埼玉県で創業した「武蔵野うどん竹國」はもともと製麺所として発祥したローカルチェーン店だ。その影響が残っているのか、うどんや天ぷらなどは店舗で仕込みを行っている。地元のスタッフが作り出す東松山店は個人店のような雰囲気もあり、おいしさと安心感と旅情を兼ね備えた店舗だった。埼玉県の北部へ訪れる機会があれば、風情たっぷりのローカルグルメをぜひ肌で感じてみてほしい。