11月25日は、「いいにごり酢の日」。いま話題の“酢酸菌入りにごり酢”を復刻した「庄分酢」を訪ねて

1759(宝暦9)年に建てられた母屋の「高橋家住宅」。
2024年には「いいにごり酢の日」(11月25日)が制定され、にわかに注目が高まる“にごり酢”。にごり酢とは、昔ながらの製法で酢酸菌(さくさんきん)をあえて残したお酢のことで、近年、全国の蔵元の間で復刻する動きが広がっています。
今回は福岡県の老舗「庄分酢(しょうぶんす)」を訪ね、にごり酢造りの現場を見学してきました。
江戸時代の製法で造る酢酸菌入りのにごり酢とは

庄分酢15代目の高橋清太朗さん。
江戸時代初期に造り酒屋として創業し、1711(正徳元)年に4代目が酢造りを始めた「庄分酢」。現在は15代目の高橋清太朗(せいたろう)さんが、父で14代目の一精(かずきよ)さんと酢屋を営み、300年にわたり受け継がれてきた一子相伝の製法による酢造りを行っています。

酢造りに使う有機玄米の仕込み。一晩浸水させてから蒸し上げる。
庄分酢の後継者のみが手にすることを許される家伝書には、米や水の分量から、季節ごとの仕込み方や手入れのタイミングまで製法のすべてが細やかに記され、まさに“門外不出の書”と呼ぶにふさわしい存在です。そんな秘伝の製法を今に受け継ぐ酢蔵では、事前予約制で蔵見学(1人1,000円)も可能。
今回は貴重なくろ酢の仕込みの現場を見学してきました。
春と秋に行われるくろ酢の仕込みを見学

玄米の質感を確かめながら、手作業で窯から桶に移し替える。
家伝書によると、くろ酢の仕込みは、春と秋のお彼岸前後の年2回が基本。取材をした9月下旬のこの日も仕込み日で、玄米を蒸し上げ、甕に仕込んでいく作業が行われていました。

くろ酢には、熊本県産の有機玄米を贅沢に使用。
くろ酢の原料は、玄米・水・麹のみという非常にシンプルなもの。だからこそ、原料の良し悪しがそのまま酢の味に反映されるため、庄分酢では食べてもおいしい熊本県産コシヒカリの有機玄米を100%使用しています(蒸した玄米を味見したら納得のおいしさ!)。

100年以上前に造られた大甕が並ぶ酢蔵。

蒸した玄米を冷ましてから甕に入れる。
ここからがハイライトで、蒸した玄米を大甕に投入します。地中に半分埋まっているのは「肥前の大甕」と呼ばれる陶器甕で、くろ酢のレシピはこの甕に合わせて作成されたという、庄分酢の命のような存在です。

蒸した玄米、水、米麹を甕の中で混ぜ合わせる。

仕上げに、液面に浮かせるように米麹をそっと振り入れる。
あらかじめ水と米麹を入れた甕に蒸した玄米を投入し、さらに米麹を振り入れ、酒造りと酢造りをひとつの甕で行います。
「酒造りと酢造りはそれぞれ適切な発酵温度帯が異なります。この地中に埋めた甕では、酒造りに欠かせない麹菌と酵母菌の発酵はひんやりとした地中で、酢を造る酢酸菌の発酵は暖かい地上で進めることができるんです」と話すのは、15代目の高橋清太朗さん。
さらに、甕内の温度差で生まれる自然な対流と菌の力を利用して、3カ月間かけて発酵させていくのだそう。

和紙で蓋をし、仕込んだ日を筆入れする。

筆入れとひもの結び方にも決まりがある。
抗菌性のある柿渋を塗った和紙で蓋をし、仕込んだ日を筆入れするのも昔からのスタイル。最初は蝶々結びで縛り、蓋を開けて手入れを行う際には結び方を変えることで、甕がどの工程にあるのかを一目で把握できるようにしています。
こうして造られるのが甕仕込みのくろ酢で、酢酸菌を残したにごり酢を「かすみくろ酢」と呼んでいます。
伝統の静置発酵で造るまろやかなお酢

お酢の発酵・熟成を促す20石(約3,600リットル)の木桶。
庄分酢では、昔ながらの「静置発酵」を守り続け、酢酸菌の力を借りながらじっくり時間をかけて発酵させています。
甕のほかにも蔵に棲み付く酢酸菌が豊富な木造蔵に並ぶ木桶によるお酢造りもあり、環境が変わることで、甕とはことなる風味が楽しめることが、お酢の可能性や発酵のおもしろさを感じさせてくれます。

木桶の中で酢酸菌が膜を張り、ゆっくりと発酵して酢へと変化していく。
この日は、1週間前に木桶に仕込んだばかりのお酢を見学。桶の中をのぞき込むと、お酢の表面にはうっすらと膜が。このベールのような膜こそ、「酢酸菌」の正体なのです!
酢酸菌はアルコールをお酢へと変える細菌の総称で、近年は見た目の印象から取り除かれることが多く、透明なお酢が主流に。しかし酢酸菌の研究が進んだことで、免疫機能を整えたり、花粉症やアレルギー症状を抑える働きがあることが明らかになり、再び注目を集めています。
「昔から働いている職人さんが、“お酢は甕から出したての味がおいしかよ”って。普通のお酢もおいしいけど、にごり酢は風味が違うと言っていたのも決め手になり、“かすみくろ酢”を復刻しました」(高橋さん)

右から:見た目にもにごりがわかる「蔵付酢酸菌 かすみくろ酢」200ml 1,782円、「ショウブン美味酢(うます)」300ml 518円、特別感のある「木桶の酢」300ml 540円。母屋の1階にあるショップで購入可能。
後篇では、庄分酢で生まれたお酢のおいしさ、奥深さを楽しめるリストランテとショップをご紹介します。
庄分酢
所在地 福岡県大川市榎津548-1
電話番号 0944-88-1535
営業時間 9:00~17:00
定休日 日曜
https://shoubun.jp/