トランプと「宿敵」マムダニ次期NY市長の“親密会談”で浮上した「共通点」…全米が注視

民主社会主義者を公言し、当選したゾーラン・マムダニ次期ニューヨーク市長は、トランプ氏と誰もが驚くほど打ち解けた対話を披露した。

ニューヨーク市長は、「アメリカで二番目に難しい仕事」と呼ばれる。ニューヨークの突出した経済規模、それを支える膨大な数の企業、多様性を極める人口、多くの富豪たち、貧困、マフィア、しょっちゅう問題になる警察、犯罪… これらが生み出す複雑さ、インパクトは、アメリカのどの都市とも比べようがない。さらに、ニューヨーク市長は、政治家ということを超えて、このユニークな街の文化を体現する象徴的存在と見なされる。

そして現在、ニューヨーク市長職の「難易度」はさらに上がった。ホワイトハウスの住人もまたニューヨーク出身であり、ニューヨークへの思い入れ(怨恨も含めて)が強い人物だからだ。

11月4日、ニューヨーク市民は、政治の世界でのマネジメント経験が全くない34歳の州議会下院議員をリーダーに選んだ。政治家として未知数であるにもかかわらず、前知事のクオモに18万票以上の差をつけて勝利したマムダニは、「不可能を可能にした人」として一躍時の人となり、今アメリカで最も話題になっている政治家と言っていい。だから、マムダニのホワイトハウス訪問(マムダニから依頼した)は、発表以来、必然的に注目を集めていた。

トランプにとって最悪の週だった

ホワイトハウスでの会談で握手を交わすゾーラン・マムダニ次期ニューヨーク市長(左)とトランプ大統領。

この会談は、4つの点でトランプにとって特に厳しい週に行われた。

  • トランプの支持率が、第2期の大統領任期で最も低い水準にあると各種メディアで報じられた。特に、経済分野での支持率が著しく低い(トランプ政権の経済政策に満足しているのは、38%のみ)と、右派メディアのフォックス・ニュースまでもが報じた。
  • 18日の昼間、エプスタイン文書の公開を求める法案が、議会下院がほぼ満場一致(427対1)で可決。その夜、上院も満場一致で通過。トランプは長い間必死にこの文書の公開を阻もうとしてきたが19日、ついに折れて署名した。
  • 同じく18日、トランプは、2回、テレビカメラの前で「ブチ切れた」。エプスタイン文書について尋ねられた際、またサウジのムハンマド・ビン・サルマン(MBS)との会見中にカショギ殺害事件について尋ねられた際、カメラの前で記者(いずれも女性記者)に怒りを露わにした。一人の記者には「Quiet, quiet, piggy!」(静かにしろ、豚!)と指さして言い、もう一人には「君の会社(ABCニュース)はフェイク・ニュース・メディアだ。放送ライセンスを没収することだってできるんだぞ」と脅したため、トランプへの批判が炎上した。
  • さらに18日、元軍人の民主党議員6人が「軍人の忠誠は大統領ではなく憲法にある」「軍人は違法な命令を拒否できる。むしろ拒否しなければならない」と呼びかける動画を公開した。トランプはこれを「反逆的行為」「国家の裏切り者」「死刑に値する罪」と激しく非難し、逮捕すべきだと主張(SNSに「SEDITIOUS BEHAVIOR, punishable by DEATH(反逆行為、死刑に値する)」と投稿。民主党側は「憲法を守る義務を確認しただけ」と反論し、多くの憲法学者たちもトランプの「反逆」の該当性を疑問視している。

マムダニのトランプ訪問は、そんな波乱に満ちた週を締めくくる金曜日だった。

この日、テレビでは、朝から、会談がどうなるかという話が繰り返し流れていた。多くのコメンテーターは、最初の会談なので、一応二人とも当たり障りのない対応をするのでは? という予想を述べていたが、もっと悲観的な人たちもいた。たしかに、ホワイトハウスを訪れ、世界中の人たちが見る前で虐められ、辱められたウクライナのゼレンスキー大統領や南アフリカ大統領の例は記憶に新しい。

トランプはマムダニのことを「共産主義者」と呼び続けてきた。それだけでなく Radical left lunatic (狂った急進的左派)、nut job(頭のおかしい、危ないヤツ)、Jew-hater (ユダヤ人を憎悪する人)とも言っている。イスラム教徒であるマムダニは、現在のイスラエル政府のガザ政策に批判的ではあるが、共和党からしばしば投げられる「Anti Semitic(反ユダヤ主義)」という非難については強く否定している。

オバマに対する「出生陰謀論(birther)」を何年も唱えてきたトランプは、同じことをマムダニにもやっている。この夏、トランプは「多くの人が、彼(マムダニ)は不法にここにいると言っている」と何の証拠も示さず述べ、「あらゆることを調べるつもりだ」と思わせぶりに発言した。調べるのは自由だが、マムダニはウガンダで生まれ、7歳のときに家族とともにニューヨークへ移住し、2018年に市民権を取得している。

出生陰謀論(birther)とは:特定の人物の出生地がアメリカではないと根拠なく主張する行為のこと。トランプ氏はバラク・オバマ元大統領もアメリカ生まれではないと根拠なく主張していた。

また、トランプは、マムダニが選挙で勝利した場合、ロサンゼルスやシカゴと同様、ニューヨークに州兵を送る可能性もチラつかせ、さらに、連邦政府からニューヨーク市への資金拠出を絞ると脅してきた。選挙前日には、SNSへの投稿で、もしマムダニが選挙に勝てば「法律で義務づけられた最低限を除いて」連邦資金を拠出することは「極めてありそうにない」と書いた。彼が市長になれば、ニューヨーク市には「成功どころか、生き残る可能性すらゼロだ」とも述べている。

11月4日、ニューヨーク市を指して、「成功どころか、生き残る可能性すらゼロだ」とTruth Socialで発言するトランプ氏。

でも、実は、選挙前、トランプが複数の側近に対し、「マムダニに勝てる候補はいないと思う」と伝えていたことが後日報じられた。表ではマムダニの悪口を言いつつも、彼が強い候補であることを、トランプも認めていたのだろう。

マムダニの勝利が決まった後、私が思ったのは、トランプおよび共和党は、来年の中間選挙でも、2028年の大統領選でも、マムダニを「左翼の台頭」の象徴として便利に利用するだろうということだった。マムダニ自身が「私は民主社会主義者です」と言い、聴衆を盛り上げている映像は、民主社会主義と共産主義の違いすら理解しない人々に、いたずららに恐怖を植え付けるだろう。民主党を攻撃するキャンペーン広告にはもってこいだ。

ところが、会談(会談自体はカメラなしで行われた)後、大統領執務室で開かれたトランプとマムダニの会見映像は、多くの人々の想像を超えたものだった。会見を中継したテレビのコメンテーターたちも、一様に目を丸くし、開いた口が塞がらないという様子だったし、私自身も目を疑い、しまいには笑ってしまった。これを報じるメディアの見出しも、困惑ぶりを示している。

CNN:4 takeaways from the bizarrely chummy Trump-Mamdani meeting(トランプとマムダニの奇妙なほど親密な会談から得られる4つの教訓)

NewYork Times:‘Fascist’? ‘Communist’? For an Afternoon, They Were Just 2 Guys From Queens.(「ファシスト」?「共産主義者」?あの午後、彼らはただのクイーンズ出身の2人の男に過ぎなかった。)

USA Today:The key takeaways from Mamdani and Trump's Oval Office love fest(マムダニとトランプの大統領執務室での蜜月関係の主なポイント)

Axios:5 head-turning moments from Mamdani and Trump's surprisingly cordial meeting(マムダニとトランプの驚くほど友好的な会談から生まれた5つの注目すべき瞬間)

Atlantic:Why Donald Trump Seems Taken With Zohran Mamdani(ドナルド・トランプがゾーラン・マムダニに惹かれる理由)

Politico:Trump, Mamdani make love — not war(トランプとマムダニは愛を交わす―戦争ではなく)

Guardian:Trump and Mamdani form an unlikely alliance at White House meeting(トランプとマムダニがホワイトハウス会談で異例の提携)

二人のショーマン

「ドナルド・トランプに裏切られた国で、誰かが彼を倒す手本を示せるとしたら、それは彼を出世させたこの街だ」と勝利演説を語るゾーラン・マムダニ氏。11月4日の勝利演説にて。

11月4日、ニューヨーク市長に当選したゾーラン・マムダニと、ドナルド・トランプは、外見も、属性的にも、政治信条の面でも対照的だが、少なからぬ共通点がある。