「虐殺は人道に反する不正義」 イスラエル・ガザ攻撃で友を失った監督が訴える一作「手に魂を込め、歩いてみれば」

イスラエルによるガザ攻撃が続く2024年。監督のセピデ・ファルシは24歳のパレスチナ人フォトジャーナリスト・ファトマと出会い、ビデオ通話を通じて現地の様子を記録する。が、25年4月にファトマは帰らぬ人となり──。今年のカンヌ国際映画祭ACID部門に選出されたドキュメンタリー「手に魂を込め、歩いてみれば」。脚本も務めたセピデ・ファルシ監督に本作の見どころを聞いた。
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今朝(10月29日)ニュースを見て、非常に悲しく怒りを覚えました。ようやくイスラエルとパレスチナ・ハマス間で停戦合意がなされたと思いきや、再びガザへの攻撃で多くの死者が出ています。ただ、予感はありました。パレスチナの人々を代表する人間が交渉のテーブルにつかない状況では本格的な和平にはならないだろうと。
私は2024年にガザの状況を伝えたいと入国を試みましたが不可能でした。知人を介してファトマと出会い、ほぼ毎日ビデオ通話やメッセージを送り合うようになったのです。彼女は本当に明るく、太陽の光のような人でした。24歳の若さで「今ここで起きていることを記録して人々に伝える」という強い信念を持ち、かつ才能豊かなアーティストでした。通信回線の悪いガザでときには片道1時間以上かけて徒歩でつながる場所へ行き、たくさんの素晴らしい写真や詩を私に送ってくれました。生まれてからずっと戦火にいた彼女は「イスラエルが何をしようと、私たちからこれ以上奪えない」ときっぱり言っていました。
おそらくパレスチナ人としてのDNAが彼女を動かしたのでしょう。100年以上前から彼らは自分たちの土地を少しずつ侵食されてきた。ファトマには自分の生まれ育った戦場での苦しみを、なんとかして光に変えようという思いがあったのだと思います。

今年4月に彼女はイスラエルの爆撃によって殺されました。みなさんにはなによりもファトマの笑顔を忘れないでほしい。そしてどんな逆境にも屈しない彼女の力と彼女が見ていた世界を少しでも覚えておいてほしい。いま起きているこの虐殺は人道に反する不正義です。そしてパレスチナで起きていることは世界中の不平等や不正義につながるのです。
(取材/文・中村千晶)
※AERA 2025年12月1日号
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