「すずきふくという名前がもう難しいんです」今なお「滑舌問題」抱える鈴木福を救った父の言葉と母のポジティブさ

 1歳で芸能界デビューを果たし、事務所に所属して20年目を迎える鈴木福さん(21)。10代のころは滑舌の悪さに悩み、テレビに出るたびに「舌っ足らずだといろんな人から言われました」と振り返る。世間の声やモノマネに複雑な思いを抱えながらもポジティブでいられたのは、家族の存在があったからだという。「福くん」が父親からかけられた言葉とは。(全2回の1回目/後編へ続く)

*  *  *

――幼いころから「見られる」生活をしていますが、鈴木さんはコンプレックスをどう捉えていますか。

 滑舌が悪いことはわりと気にしています。小さいときから、ずっと言われていたんです。今はだいぶ直ったと思いますが、それでもやはり気になりますね。それこそ「かつぜつ」という言葉が言えないくらい悪かったんです。

 小学生のころはテレビに出るたびに、「舌っ足らずだ」といろんな人から言われました。ただ、最初はその意味があまりよくわかっていなかったですし、ピンときていませんでした。本格的に気になり始めたのは中学生ぐらいですね。

――何かきっかけがあったのでしょうか。

 芝居で生きていきたいと本気で思うようになって何ができるかを考えたときに、滑舌の悪さは直さないといけないなと思ったんです。

 そこから先生に習って滑舌のトレーニングに取り組むようになりました。早口言葉とか、そういうのです。今でも、「口を動かす」ということを意識しています。

「鈴木福 滑舌」と検索すると、いろんなコメントが出てきますよ(笑)。そんな滑舌の悪さも小さいころは許されていたと思います。ただ、大人になって役者をしていくなら、ちょっとしんどいですよね。少しずつ改善されてはいますが、作品を見返したり、誰かと話したりしているときも、「ああ、まだちょっと滑舌が甘いな」と思うことはあります。

――ネットの声に気づいたのは、おいくつぐらいのときですか。

 小学校の高学年とかじゃないですかね。自分でもわかっていたことなので、すごく傷ついたりはしませんでした。でも、焦りみたいなものは感じましたね。特に中学生になってからは、本気で「滑舌、ヤバいな」と思うようになりました。年齢を重ねるとともに俳優という仕事への思いも強まっていったので、「今のこのしゃべり方では足りないな」「もう少し聞こえのいい口回しができるようにしなきゃ」と思うようになりました。

 そこから舞台出演なども重ねて、ここ4、5年は昔より少しは良くなっているかなと思えるようになりました。とはいっても思うようにいかないことは今もあって、滑舌をあまり意識せず、気楽にしゃべれるようになったらいいなと思っています。

 ナレーションの仕事では特にそう感じます。表情や動きはなく、声だけで表現しなければいけない。なかでも「さしすせそ」が苦手で、「すずきふく」という名前がもう難しいんです(笑)。小さいときから、自己紹介のときにうまく言えなかったですね。だいぶマシになりましたけど、今でも怪しいなと思うことがあります(笑)。

――世間から滑舌が悪いと言われることは、どう感じていましたか。

 小さいときは、その滑舌が可愛らしいと言ってくださる方や、モノマネをしてくださる方もいました。それが良かったか悪かったかはわかりませんが(笑)、鈴木福としての特徴にはなったかなと思います。ただ、やっぱりモノマネには複雑な思いもありましたよ。面白くしてくださる分には、僕も楽しめましたけどね。

――そう言われたことで、人前で話すことが億劫になったりはしませんでしたか。

 僕、すごい楽観的でポジティブな人間なんです。「今はこのレベルしかできない」「それは仕方ない」「これからプラスにしていけばいい」と思って生きているので、当時のことを思い出しても「あのときこうだったらよかったな」などとは感じないタイプです。だって、悩んだって仕方ないじゃないですか。それよりは今からできることを探したほうが建設的です。

 もちろん悩むこともありますよ。身長は169センチで、「もうちょっと高かったらな」と思うこともあります。顔だって、「超イケメンで小顔だったら」「頭でかいなー」と思うことはしょっちゅうです。でも、今の自分はこうなんだから仕方ない。そこで悩み続けるよりは、自分ができることを探そうと考えるタイプです。

 神様が降ってきて、僕のコンプレックスを解消してくれたらうれしいけど、現実では起こり得ない。だからそれを受け入れて、どう進化していくか、これからを評価してもらえるようにシフトしていくしかないと思うんです。

――そう考えるようになったのは、誰かのおかげですか。

 両親の影響は特に大きかったと思います。幼いころから芸能活動をするなかで、いろいろなことがありました。滑舌もですが、悩んでいた中学生のころに父親が、「今がすべてじゃないよ」と言ってくれたことがあるんです。「30代、40代、そして自分に家族や大事な人ができたときに、何ができているかのほうが大切なんだ」ということは、今でも時々言われます。

 あとは、母親がめちゃくちゃポジティブで楽観的なんです。その組み合わせで、今こうなっているんだと思います(笑)。

――子どものころから、「将来は役者として食べていきたい」という話をよくしていたんですか。

 小さいころは仮面ライダーになりたかったですね。あとは野球が好きだったので、もっと野球をしたいと思ったこともあります。家族仲が良いので、親とはよく話します。話せないことは基本的になくて、悩みを相談することへの恥じらいもない。仕事の話はマネジャーさんとして、それ以外のことは父親や母親に相談することが多いです。仕事柄、家族以外には話せないこともあったりするので、その点でもありがたいですね。

――鈴木さんにとって、家族の存在がとても大きいことが伝わってきました。

 僕、コンプレックスはあってもいいと思うんです。コンプレックスがあるからといって、その人のことを嫌いになるわけではないし、それでも一緒にいてくれる人と過ごす時間を大切にしたほうがいい。恋人とかではなくても、友達や家族のように自分が居心地が良いと思える人と過ごす時間を増やすことで、人生が豊かになっていくと僕は信じています。

 そうはいっても、自分のコンプレックスってすごく気になるんですよね。人から言われたことで、過度に気にしてしまうこともあります。でもそれって、そういう無神経さも含めて考えるべき問題だと思うんです。僕の場合は職業と直結しているので、それを排除しなければいけないし、改善点としてずっと自分のなかに持っているんだと思います。でも、まずは今の自分を受け入れて、それを一緒に受け入れたり、気にしないで一緒にいてくれる人との時間をつくっていくことが大事なのではないでしょうか。

(構成/AERA編集部・福井しほ)

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