条約なき中国の同盟ネットワーク:その実態とは?
中国独自の同盟網

中国は長年にわたり、正式な防衛条約を結んでこなかった。その代わり、経済・技術・政治面での相互依存を軸とした、独自の同盟網を持っている。現在、その中心に位置づけられるのはロシア、北朝鮮、イラン、パキスタンの4ヵ国だ。さらに、その周辺にはベラルーシやカンボジア、ラオス、ミャンマー、セルビア、ベネズエラ、キューバといった「優先的パートナー」が存在する。
同盟の背景

これらの国々を結びつけているのはエネルギーや軍事面での協力、制裁措置への対応、さらに2013年に中国が打ち出した「一帯一路」構想だ。
画像:Christian Lue / Unsplash
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「同盟を超える」関係

2022年2月4日の共同声明により、中国とロシアの戦略的協調関係は「同盟を超える」ものに格上げされた。以来、両国の軍事・産業面での協力や貿易はウクライナ戦争が長期化する中、拡大を続けている。つまり、ロシアにとっては制裁下での生命線であり、中国にとっては米国を牽制するためのツールなのだ。
限界のない友情?

習近平国家主席とプーチン大統領は2022年に「両国の友情に限界がはない」と共同で宣言。軍事・エネルギー・技術分野での協力関係を深めていった。ただし、両国間に正式な軍事同盟は存在しない。
活性化する中露貿易

中国税関によれば、2024年の中露貿易総額は2,448億ドルに達し、前年を上回ったという。さらに、2025年もエネルギーおよぶ機械分野の取引によって高水準を維持。両国は相互依存を通じて西側諸国による制裁の影響を緩和しているのだ。
表向き、軍事支援はしていないが……

『モスクワ・タイムズ』紙や米情報機関によれば、2023年にロシアで用いられるマイクロエレクトロニクス部品のおよそ90%、工作機械の70%が中国から供給されたという。これについて、中国は軍事支援を否定したが、米国とEUは関連企業に制裁を発動した。
北朝鮮の役割

一時は冷え込んでいた中国と北朝鮮の関係も、近年は修復が進んでいる。国連安保理における北朝鮮専門家パネルの解体をめぐって、中国は棄権という形でロシアとともに「対北支援ブロック」としての存在感を示したのだ。さらに、習主席は金正恩国家主席との会談の中で戦略協調の強化を提案し、朝鮮半島情勢の安定化と米韓への圧力維持を両立させる意向を示している。
パキスタン:絆はかたいが治安が課題

パキスタンは中国にとって、もっとも付き合いの長い戦略的パートナーのひとつだ。「中パ経済回廊(CPEC)」の規模は総額600億ドルとされ、エネルギー、港湾、交通インフラが中核となっている。すでに、250億ドル超の直接投資が行われたほか、「第2段階」への移行も打ち出されている。ただし、中国人技術者を狙った襲撃事件が相次いでおり、不安定な治安がネックとなっている。
イラン:原油と投資の取引

一方、中国とイランは2021年二締結された25ヵ年の包括的協定を基盤に、原油の供給や投資を軸とした関係を深めてきた。2025年の時点で、中国はイラン産原油の最大の買い手であり、月によっては日量180万バレルを輸入しているという推計もある。もちろん、米欧は制裁措置を強化しているが、この状況は変わっていない。
画像:sina drakhshani / Unsplash
ベラルーシ:制裁逃れの物流ルート

ベラルーシのルカシェンコ政権は対中が意向を重視。たびたび訪中して、中国との政治協調や産業プロジェクトを進めている。また、ロシアと中国を結ぶ制裁逃れの物流ルートとして、存在感を高めている面もある。
カンボジア:疑惑の港湾

そのほか、カンボジアでは中国の資金を受けて拡張されたリアム軍港が2025年に一部運用開始となり、米国が警戒を強めている。東南アジアにおける中国の海洋プレゼンスを象徴する施設だ。プノンペンは「排他的なものではない」と主張しているが、米国は軍事的利用を懸念している。
ラオス:中国との結び付きを深める鉄道

さらに、ラオスではラオス中国鉄道が2021年に開業して以来、乗客4,300万人、貨物4,800万トンを輸送し、「一帯一路」の象徴となった。ただし、両国の経済的結びつきが強まるかたわら、ラオスの対中債務と中国依存が一方的に増えてしまっているという面もある。
ミャンマー:内戦のさなかの現実主義

ミャンマーに対して、中国は軍政および反政府武装勢力の双方と実務的な関係を維持している。エネルギー回廊や港湾、国境警備の安定が最優先なのだ。政情不安のため、両国の協力関係は限定的だが、反西側諸国という姿勢は共有されている。
セルビア:ヨーロッパにおけるEU外の同盟国

セルビアもまた、欧州にありながら中国との経済的結びつきを強化し、中国製ドローン・監視システムの導入や自由貿易協定の促進を進めている。バルカン半島における戦略拠点として、EUとの距離を保ちつつ中国に門戸を開いているのだ。
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ベネズエラとキューバ:資源と理念の絆

資本を求めるベネズエラと、原油およびカリブ海での影響力を求める中国はギブアンドテイクの関係にある。一方、キューバでは通信と治安分野での協力が進展。軍事同盟ではないものの、国際社会で互いを支援するパートナーとなっている。
新たな枢軸「CRINK」?

最近では、中国、ロシア、イラン、北朝鮮の4ヵ国は軍事・エネルギー・制裁回避で結びついた、新たな枢軸「CRINK」だとする言説が説得力を増している。NATOのような軍事同盟ではないものの、その存在感は西側諸国に揺さぶりをかけるのに十分だ。
数字で見る地政学ネットワーク

2024年の中露貿易総額は2,448億ドル、2025年の中国によるイラン原油輸入は日量180万バレル、中国・パキスタン経済回廊は600億ドル規模、そしてラオス中国鉄道の旅客数は4,300万人。数字が物語るのは、相互依存が外交の行方を決定づけるという現実だ。
結論:条約なき同盟

つまり、中国の外交戦略は資源(ロシア・イラン)や緩衝地帯(北朝鮮・ベラルーシ)、物流ハブ(パキスタン・カンボジア・ラオス)を提供する国々に支えられている。防衛条約などではなく、「相互の便宜と制裁措置への抵抗」を軸とする実利的な連携というわけだ。
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