EVの電磁波「放射線被曝」の噂は本当か? ドイツ調査が明かした車内磁場の実態とは
EV・HVの安全性
現代の自動車には多くの磁場発生源が存在する。エアコンやファン、電動ウィンドウ、シートヒーター、カーナビ、電子料金収受システム(ETC)車載器などが代表例だ。電気自動車(EV)やハイブリッド車(HV)では、これに加えて大容量バッテリーや高電圧ケーブル、駆動用インバーター、高出力モーターも搭載される。
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こうした車両は大量の電気を使用するため、
「電磁波の影響」
が懸念されることがある。なかにはX線やガンマ線が含まれる可能性があり、放射線被曝を疑う声もある。
しかし、ドイツ連邦放射線防護庁(BfS)が2025年4月に発表した数年にわたる調査結果は明快だ。ガソリン車、EV、HVにかかわらず、
「乗員が有害なレベルの磁場にさらされることはない」
と報告されている。
この調査は連邦環境省の委託を受けて行われたもので、乗用車内の電磁気的状態を対象としたこれまでで最も詳細な分析となる。調査対象は2019年から2021年に製造された14モデルで、そのうち11台がEV、2台がHV、1台が内燃機関(ICE)車である。さらに初めて電動二輪車も評価され、モペット1台、軽バイク2台、バイク1台が含まれた。
自動車内磁場の実測結果

自動車(画像:Pexels)
オーストリアの研究機関「Seibersdorf Laboratories」、ドイツのアーヘン工科大学、ADACテクノロジーセンターのエンジニアが、この調査を実施した。調査には自動車メーカーの関与はない。
データは、ドイツの道路交通で認可されている現行車両モデルの磁場強度を体系的に測定した結果に基づく。測定は
・ローラーダイナモメーター
・閉鎖試験用道路
・実際の道路交通
の三つの状況で行われた。BfSのインゲ・パウリーニ会長は
「局所的かつ限られた時間ではあるものの、比較的強い磁場がいくつかのケースで検出されました。しかし、これらの磁場は試験シナリオにおいて体内に誘導される磁場の推奨最大値以下でした。したがって、現在の科学的知見によれば健康に関連する影響は予想されません」
と説明する。パウリーニ会長はさらに
「この研究結果は、すでにEVを運転している、乗り換えを検討している消費者にとって朗報です」
と指摘する。調査では測定とシミュレーションのすべてのシナリオで、人体に影響を及ぼす磁場が推奨値以下であることが確認された。自動車や二輪車の種類を問わず、人体に有害な磁場は発生していないことが明らかになった。
運転スタイルと磁場影響

自動車(画像:Pexels)
詳細に見ると、事情はより複雑である。
測定された磁場値は車両間だけでなく、同じ車両内でも空間的に、運転状態によっても大きく変動した。最も強い磁場は主に座席前方の足元で発生し、頭部や胴体の値は概して低かった。
EVやHVのモーター出力と車内磁場の間に明確な相関はなかった。大型でパワフルなEVが特に強い電磁波を発するわけではない。
一方で運転スタイルは、モーター性能よりも磁場値に大きく影響した。急加速や急ブレーキを多用するスポーティな運転では、一般的な運転より瞬間的に強い磁場が記録された。アクティブなスポーツ走行で電磁波が強まる傾向がある。
また、以前のADACテクノロジーセンターの調査と同様に、EVであるか否かに関わらず、シートヒーターなど一般的な部品が活発な電磁波源となることも確認された。
短時間、1秒未満の磁場ピークは、ブレーキペダルを踏んだとき、HVのエンジン部品が自動でオンになったとき、車両の電源を入れた時などに発生した。最も高い局所的な値はHVの電源投入時に検出されている。
車両設計による電磁波低減

リポート「電気自動車による電磁界への曝露の測定」(画像:Seibersdorf Laboratories)
高度な測定技術により、0.2秒未満の短時間磁場ピークも確実に記録・評価できた。現行の測定規制では、このような短期変動は考慮されていない。しかし本調査では、短時間の変動が一定程度発生することが示されたため、BfSは測定基準を拡張する必要があると考えている。
パウリーニ氏は「車種間の大きな違いは、EVの磁場が必ずしも従来の自動車よりも過度に強い、あるいは顕著なわけではないことを示しています」と指摘する。さらに
「インテリジェントな車両設計を通じて、局所的なピーク値を低減し、平均値を低く抑えるのはメーカーの責任です。例えば、強力な磁場発生源を乗員から離れた場所に設置できればできるほど、さまざまな運転状況において乗員がさらされる磁場は弱くなります。こうした技術的可能性は、車両開発の初期段階から検討されるべきです」
と述べている。今回の調査では、パワートレインの種類と車内電磁波の強度に明確な関連性は見られなかった。しかし、電磁波が気になる場合はスポーツ走行を避け、シートヒーターなどの使用を控えることも可能である。
もちろん、電磁波の懸念にかかわらず、安全運転を心がけることが最も重要である。