バービーが41歳になって20年続けた美容施術をやめると決めた理由

「ブランド品や宝石を買うわけでもなく、自分のために割いてきたものの最たるものは美容施術だった」

21歳のときにコンプレックスだったニキビ肌を治すために初めて美容クリニックへ行き、レーザー治療を受けたというバービーさん。それから約20年、美容施術にたくさんのお金と痛みというコストを支払ってきたそうですが、その過程で美容施術を受ける目的は変化してきたと言います。

前編では、初めて施術を受けた日の「煙」事件のことや、芸人として仕事をするようになって抱えた肌に関する別のコンプレックスなどをお伝えしました。後編では、妊娠出産のためにお休みしていた美容施術を久しぶりに受けて感じたこと、バービーさんに起こった変化などを率直に綴っていただきました。

「おでこにタトゥーのような虫刺され」治療で

21歳のときから美容施術に膨大なお金を使ってきた。そこには3つのフェーズがある。

1つ目は、「肌が綺麗になるなら何でもやります」という、コンプレックス期。

2つ目は、仕事のため、そして機器の進化を追うのが楽しい科学技術万歳期。

そうして3つめのフェーズ。今に至る。

30代後半から、妊活、出産、授乳があったので、しばらく美容クリニックをお休みしていた。再開のきっかけは、インスタグラムにもアップした、おでこの治療だった。虫刺されから梵字のタトゥーのようになってしまい、それを治したかったのだ。

「おでこにタトゥーのような虫刺され」治療で, 初めてのレーザーから20年…, これまでと違ったこと, 「信頼の笑気麻酔」だったのに…, 痛みの先に何かあると思っていたけど, 「変身願望」からの卒業

写真提供/バービー

しばらく美容クリニックから足が遠ざかっていた間に、クレーター治療の「最後の砦」とも言われる機器が誕生していた。炭酸ガスで癒着を剥離し、再癒着を防ぐ薬液を注入する。それを、1ショット数秒で行う機械。トライフィルプロ!

聞いた瞬間、多少このクレーター界隈に詳しくなった私は、興奮を抑えきれなかった。同じことをしようとするとかなりのダウンタイムやお金がかかるのに、手技ではなくガスの力で簡単にやってしまえる。とにかくすごい。

今度こそ、「プリズム・パワー!」みたいに「トライフィルプロー!」のひと言でお肌が変わってしまうのではないか。そんな、少し浮かれた期待を抱くには、十分すぎる進化だった。

ちなみに、前編でも書いたが、美容施術は金銭面のみならず、さまざまな負担が生じる。私は自分がやりたくてお金を注ぎまくったが、今回の記事は美容施術を推奨するものでも否定するものでもないことを明記しておく。単に美容施術にお金をかけまくったひとりの女性の変化だと理解してほしい。また、自分もやってみたいと思う人は専門医に相談の上、十分考慮してやることをお勧めする。

初めてのレーザーから20年…

興奮しているとき、私はだいたい3回コースを買ってしまう癖がある。クレーター治療の最後の砦、トライフィルプロもそうだった。慎重になれないほど、完全に勇み立っていた。いざ、施術。

初めてフラクショナルレーザーを受けてから、気づけば20年が経っていた。その間、私は何度麻酔クリームを塗ったことだろう。もう落ち着いたものである。

耐えられないほど痛い施術も、これまでに何度も経験してきた。無理になったら、そのときはそのとき。そう思えるくらいには、施術には慣れていた。今回の機械は、どれくらい痛いのか。どれくらい変わるのか。お手並み拝見くらいの気持ちさえあった。

ところが、私の中で意外なことが起こった。

なんだか耐えられなかった。

痛みそのものというより、痛みに向き合う自分の気持ちが、もう以前とは違っていた。あれだけ期待に胸躍っていたのにだ。

これまでと違ったこと

トライフィルプロのアタッチメントは、1本針。刺す。ガスが勢いよく入る。その瞬間、直径3センチほどの範囲に空気が皮膚の下で一気に広がる。薬液注入。追い打ちのガス。これが、だいたい3秒ほどで行われる。

最初の数ショットは、「おお、なるほど。こうきたか」そんな余裕すらあった。けれど、そこから先が、今までとは違った。

違ったのは、痛みではなく、私の心情だった。

なかなか、耐えられない。

たまらず、笑気(しょうき)麻酔をセットしてもらう。鼻から吸うと、2、3呼吸で、テキーラを8杯飲んだときくらいお気楽でご機嫌になる、あの麻酔だ。もちろん合法。主に亜酸化窒素(笑気ガスと呼ばれる)を使用したもので、鎮静作用があり、痛みや不安を和らげる効果があるという。リラックスしやすくなり、軽い多幸感を得ることもあるが、直接、痛みが消えるわけではない。

これまでに何度も使ってきた。私の中では、笑気麻酔を効かせるにはコツがある。ただ吸うだけでは足りない。とにかくゲラになるので、BGMが重要なのだ。

昔、たまたま院内でTRFさんの『EZ DO DANCE』が流れたことがあった。DJ KOOさんの掛け声にツボっている間に、施術が終わったことがある。

「信頼の笑気麻酔」だったのに…

信頼の笑気麻酔。

のはずだったが、それでも、まだ痛い。処置台の頭のほうにテレビがあったのを思い出し、「パーティー系の音楽、かけてもらっていいですか」とリクエストした。パーティー系のEDMは、やはり鉄板だった。思わず笑ってしまった。

ところが、なぜかやけに頭が冴えてきてしまった。年齢的なものもあるのか、産後のマミーブレインなのか、普段は思考がうまく回らず、物忘れも多い。夫婦のこと。仕事のこと。これからの時間のこと。

普段は、ぼーっと考える余裕すらないからか、リラックスしていたせいか、短い時間ながら、やけに深く思いを巡らせてしまった。そこで、私は辿り着いてしまったのだ。

「痛いの、もうやーめた」

「おでこにタトゥーのような虫刺され」治療で, 初めてのレーザーから20年…, これまでと違ったこと, 「信頼の笑気麻酔」だったのに…, 痛みの先に何かあると思っていたけど, 「変身願望」からの卒業

写真提供/バービー

痛みの先に何かあると思っていたけど

美容をやめるわけじゃない。でも、痛みの先に何かがあるとか、痛いのが楽しいとか、そういう価値観からは、もう卒業しよう。そう思い立つと不思議と、清々しい気持ちになった。

20年間続けてきたクレーター治療に、ひとつ区切りをつけられたこと。そして、他の大事なものにも目を向けられるようになった今の自分への、ささやかな自信。

痛い美容をやめた、というより我慢することが急にアホくさくなったのかもしれない。こんなことをしている場合じゃない。そう、思った。この時間があるなら、娘のごはんを作りたい。一緒に食べたい。一緒に笑いたい。

私が今欲しいのは、見栄えのいい身体じゃない。機能性の高い身体だ。家事も、育児も、仕事も、遊びも、全部を全力疾走できる体。

「おでこにタトゥーのような虫刺され」治療で, 初めてのレーザーから20年…, これまでと違ったこと, 「信頼の笑気麻酔」だったのに…, 痛みの先に何かあると思っていたけど, 「変身願望」からの卒業

写真提供/バービー

痛みと引き換えに何かを得ようとする人生は、もう卒業してもいい年齢なんじゃないか。これまで、散々そうやって生きてきたのだから。その時間と体力があるなら、楽しいことや、愛おしい時間に使いたい。優先順位が変わっただけなのかもしれない。

ただ、縛られていたつもりはなくても、肌のことは、心のどこかにずっと居座っていたのだと思う。若い頃のコンプレックスは、自分で思っている以上に、長く引きずるものなのだなあと、今さらながら思う。

ちなみに、効果は本当に抜群だった。肌の調子がいいことも、痛い施術を卒業する決断を、そっと後押ししてくれている。

「変身願望」からの卒業

そんな話をしていたら、メイクさんと「大人の整形」の話題になった。

もともとお綺麗な方が、どんどん整形でカスタマイズしていく知人が多い、という。もちろん、美の基準は人それぞれで、好きなように変化を遂げるのは素敵なことだと思う。

ただ、コンプレックス=マイナスをゼロに戻す作業に20年を費やしてきた私からすると、その話はどこか新鮮でもあった。世間話の延長だったけれど、話を聞いていると、家庭やプライベートな問題を抱えた末に、整形に辿り着く人も少なくないらしい。

現実を変えたい。

でも現実はすぐには動かないから、まず顔を動かす。化粧品というレベルではないもので。それは逃げでも浅はかでもなく、ただの人間の知恵なのかもしれない。私にもこのあと自由自在に顔を変えたくなるフェーズ4が来るかもしれない。

ただ、今は美容に「全部」を背負わせたくない。美容は人生の主役じゃなくていい。人生の脇役として、気分を上げてくれる存在でいてくれたら、それで十分だ。自分が欠点に思う“見た目”を変えるために、痛みをこらえてお金をかけなくてもいい。

「おでこにタトゥーのような虫刺され」治療で, 初めてのレーザーから20年…, これまでと違ったこと, 「信頼の笑気麻酔」だったのに…, 痛みの先に何かあると思っていたけど, 「変身願望」からの卒業

写真提供/バービー

リアルの世界では、呪文を唱えるだけでは変わることはできない。変身には、たいてい痛みが伴う。それでも私は、痛みを引き受けるかどうかを、自分で選べる場所に、ようやく立てた気がしている。そもそも痛みを伴わない変身方法だってあるじゃないか。メイクアップで違う自分にだってなれる。

それなのに、SNSのアルゴリズムは相変わらず、「老けないために」とか「おばちゃんと呼ばれない歳の重ね方」みたいな投稿を事あるごとに差し出してくる。

常に流行を追いかけましょう。

女であることを意識して。

ちゃんと若々しく綺麗でいましょう、と。

余計なお世話だ、と思う。歳を重ねても誰かが作った基準に合わせ続けるより、他人の目を気にせず、自分の「楽しい」や「愛おしい」に体力も時間も使って生きている人のことを私は素敵だなと感じる。そういう人のことをおばちゃんと呼ぶのなら、私はそう呼ばれる人生を選びたい。

思春期の頃から、私はずっと「変身したい」という願望を抱えていた。今の自分ではない誰かになれたらと妄想して、そうやって心のバランスを取っていた。

でも今は、あの頃の自分の変身願望を、否定するでも、切り捨てるでもなく、ただ、そっと抱きしめてあげたい。変わりたいともがき続けてくれたかつての自分がいたから、今の私は、幸せを感じることができているのだと思う。