「タイパは最悪だが…」激安ビジネスクラス搭乗記【再配信】

出発から3日半、ようやく到着したジョージアのトビリシ空港(写真:筆者撮影)
昨年、世界一周航空券を使った世界一周旅行の途中、家庭の事情でイスタンブール(トルコ)で離脱した経済ジャーナリストの浦上早苗さん。
数カ月後、再び世界一周を再開するため、イスタンブールへ戻る必要があった浦上さんは、トルコの隣国・ジョージアまで、中華系航空会社「中国南方航空」の激安ビジネスクラスを利用することに。
旅の計画から鄭州までは前記事をご覧ください↓
エコノミーより安い「中華系激安ビジネスクラス」で欧州に飛んだ顛末。目的地まで60時間、2泊トランジット。でもホテルは無料の不思議
※この記事は2025年7月公開記事を再配信したものです。価格等は当時のものです。
大盤振る舞いだったホテル滞在
鄭州(ていしゅう)の空港からホテルに送迎してくれた男性が「いい部屋を頼む」と2回繰り返したのが功を奏して、ホテルは高層階の広い部屋を用意してくれた。
それで十分だったのに、男性は筆者に「今日の晩ご飯、明日の朝ご飯、昼ご飯はホテルのレストランで食べて。無料だから」と言う。南方航空のサイトには「一泊朝食付き」とあったのに、大盤振る舞いがすごい。
あ、だから会ったとき「お腹どう?」と聞かれたのか。
彼はまだまだ話し続ける。
「明日は午後2時に空港行きのバスを出すので、それまでゆっくりしてください」

鄭州で泊まったホテル(写真:筆者撮影)

ホテルの朝食(写真:筆者撮影)
鄭州は特筆すべき観光地がない大都市だが、周辺都市に少林寺や龍門石窟といった名所がある。翌日のウルムチ行きのフライトが午後5時過ぎだったので足を延ばす予定だった。なのに「3食・送迎」までつけられたら身動きできないじゃないか。
「自分で空港に行けるから、私のことはほっといて」と言ったものの、男性も「中国は国内線も混んでるから早く行ったほうがいい。当社のラウンジでゆっくりしてください」と譲らない。
かくして貴重な鄭州での1日をホテルにこもって過ごすことになった。部屋は快適だしネットも速いし、たっぷりと仕事ができたので良しとしよう。
「わんこそば」のごとくお茶を注ぐCA
翌日午後2時までホテルの部屋で過ごし、空港に送ってもらい、搭乗手続きをして南方航空のラウンジに入った。
トマトと卵の麺をシェフに作ってもらう。中国の普通の家庭料理だが、ほっとする味だ。

ラウンジ入り口(写真:筆者撮影)

できたての食事も用意してくれる(写真:筆者撮影)

中国のどこででも食べることができるトマトと卵の麺(写真:筆者撮影)
腹ごしらえを終え機内へ。これから飛ぶウルムチはカザフスタンやキルギスなど中央アジアにぐっと近いので、乗客の雰囲気もがらっと変わる。
ウルムチ行きの飛行機のビジネスクラスは1列4席で、全部埋まっている。着席すると前日とは違う女性キャビンアテンダント(CA)がやってきて、「私びっくりしたのよ~」と親し気に話しかけてくるから、こちらも負けず劣らずびっくりした。
筆者は認識していなかったが、成田から鄭州のフライトも一緒だったそうで、CAは「さっき搭乗名簿を見てまた一緒になるんだと驚いたの。ご縁ですね」と微笑んだ。
たしかに鄭州からウルムチというマニアックな国内線に日本人が乗っているのは珍しいのかも。
離陸するとビジネスクラスの3人は眠ってしまい、4時間ちょっとのフライトの間、CAはマンツーマンでサービスをしてくれた。
最初に運んできたナッツとお茶が半分くらいになったら、わんこそばのようにお代わりを足す。お茶は頑張って5杯飲んだがそれ以上は無理で手を止めていると、代わりにコーヒーを持ってきてくれた。いや、それも無理。
トイレに立つと、さっとドアを開けてくれる。お姫様になったような気分だが、ずっと見られているのはつらい。

永遠に足され続けたナッツとお茶(写真:筆者撮影)
機内食は鶏肉と魚から選ぶことができ、魚を選択。デザートは今回も2種類あった。南方航空、推せる。

鄭州からウルムチの機内食(写真:筆者撮影)

鄭州からウルムチの機内食(写真:筆者撮影)

ウルムチの空港に着陸準備が始まった21時頃。外はまだ明るい(写真:筆者撮影)
ウルムチには21時半に到着した。中国はあれだけ国土が広いのに標準時が1つしかなく、外が明るい。到着して機内を出るとき、わんこそばCAに「また明日」と手を振られたので、こちらも「また明日」と返した。
筆者の行き先は、ジョージア・トビリシなので、さすがに明日は会わないだろうと思いながら。
衣装部屋と歯間ブラシのあるホテル
過去に中国で生活していたが筆者も初めて足を踏み入れるウルムチ。少し緊張して飛行機を降りると、「Sanae Uragami」というフリップを掲げた女性が待っていた。これも初めての経験だ。
話しかけたら「ご希望ならホテルを準備しますが」と言われ、一も二もなくお願いしてついて行った。
実は中国南方航空の乗り継ぎ無料サービスを説明するサイトには「1泊無料」と書いてあり、筆者のように2都市に1泊ずつするケースではどうなるかわかっていなかった。だから女性スタッフが手配してくれると知って、かなりホッとした。
職員用のカートに乗せてもらって長い通路を移動する間に、「あの便でトランジットのホテルを利用するのは私だけですか?」と聞くと、「あなたはファーストクラスだから特別です」とのこと。

職員用のカートで移動(写真:筆者撮影)
なるほど、鄭州ーウルムチ便はビジネスクラスが存在せず、ファーストに格上げされてさらに手厚い扱いになっているようだ。
到着ロビーを出て、ホテルの迎えの車を待っていると、女性が紙を出して小声でささやいた。「私のサービスに満足していただけたなら、ここに感謝の言葉を書いてもらえますか」。
はいはい、上司に見せるのかなとペンを取ったら、「英語でお願いします」。こういう遠慮のないところが中国っぽくて好き、嫌いな人もいるだろうけど……。
しばらくしてホテルの車が到着した。車体に書かれた「ATOUR HOTEL」の文字を見て、思わず笑みがこぼれる。
部屋の快適さだけでなく、サービスも折り紙付きで、飛ぶ鳥を落とす勢いで成長中のライフスタイル系ホテルチェーンだ。1泊1万円前後と中国の水準ではかなりお高め(過去記事参照)。
前日のホテルといい、「四つ星に偽りなし」の良いホテルだった(どうしても中国企業の説明を割り引いて見てしまう筆者)。しかも翌日のフライトが午後8時なので、午後5時まで部屋を使っていいという。

ATOUR HOTELの客室。一人で使うには広すぎた(写真:筆者撮影)

大きな鏡のある衣装コーナー(写真:筆者撮影)
筆者一人で泊まるには広すぎる部屋に案内される。なぜか衣装部屋までついている。
この数年の中国資本のホテルの進化は目を見張るものがあるが、その中でもATOURは特に気が利いていて、歯間ブラシまで置いてあった。

歯間ブラシ(写真:筆者撮影)

ビュッフェタイプの朝食(写真:筆者撮影)
迷惑料?のカップ麺
成田を飛び立って3日目。いよいよ最後のフライトだが、最後のチェックイン体験はそれまでとは一転、なかなかのカオスだった。
ビジネスクラスのカウンターに並んでいるのに、機械に不具合があったようで30分待たされ、何の説明もない。隣のエコノミーの列のほうがサクサク進んでいる。
ようやくチェックインの順番が回ってきたので、中国語で文句を言った。だが筆者の発音が悪くて聞き取れなかったようで、カウンターの奥にいる男性が「彼女は何を言ってるんだ」と同僚に尋ねている。ああ、余計に腹が立つ。
航空券を受け取って立ち去ろうとすると、女性スタッフが赤い紙袋をくれた。中にはカップラーメンとお菓子。特に説明はないので、なぜくれたのかわからない。旅は始まったばかりで荷物を極力減らしたかったので、ややありがた迷惑でもある。

空港カウンターでなぜかカップ麺を渡される(写真:筆者撮影)
出国検査を終えて搭乗ゲートに向かうと、今度はインフォメーションコーナーの女性が「浦上女士」と駆け寄ってきて、お弁当と飲み物を手渡された。
え? なになに? ここは機内食が前渡し制なの?と思いきや、「保安エリア内はコンビニやレストランがないので、これを召し上がってください」とのことだった。

搭乗ゲート前で渡されたお弁当。すぐに機内食なのに、何というボリューム(写真:筆者撮影)
その後、ラウンジを探して端から端まで2往復してわかった。
ウルムチ天山国際空港は拡張工事中で、筆者がいたエリアはオープンしたてで店舗が一切なかった。ラウンジも標識はあるが鍵がかかっていた。カウンターでもらったカップ麺とこのお弁当は、迷惑料みたいなものだろう。
いずれにせよ背中にリュック、右肩にカップ麺の入った袋、両手で弁当箱を持って歩き回るのは大変だった。
それにしてもさっき私を名前で呼んだ女性。あんなに人が多い場所でなぜピンポイントでわかったのだろう。パスポート写真を送信されたのか? 謎のままだ。
3回目のフライトのビジネスクラスは2列8席で、乗客は筆者を含めて4人だった。
荷物を棚に入れて着席すると、「また会ったね~」と聞き覚えのある声がした。
前日も一緒だったCAが満面の笑みで手を振って、「私今日はエコノミーの担当なの」と後方に消えて行った。
ってことはこのCA、成田→鄭州→ウルムチ→トビリシというシフトなのか。中国の広さを改めて感じる。そしてどうせなら、一緒に写真を撮りたかった。

ウルムチートビリシ間のフライトで出された機内食(写真:筆者撮影)

食後のデザート(写真:筆者撮影)
3日目の機内食もなかなかボリューミーだった。さっきお弁当を食べさせられたので、おなかは"はちきれんばかり"だ。
この日のCAは、「浦上女士」と名前を60回くらい呼んでくれた1日目のCA、わんこそばのごとくナッツとお茶を足してくれた2日目のCAに比べると普通だった。
いや、普通でいいんだ。いつの間にか筆者の基準がバグっている。
タイパは最悪だが満足度高い
出発から3日半、ようやくトビリシ空港に着いた。直行便なら13時間で行けるところを5時間のフライト、23時間のトランジット、4時間のフライト、23時間のトランジット、5時間のフライトとタイパは最悪かもしれない。
けれどホテル2泊、空港からホテルの送迎、航空会社のラウンジ2回利用、お腹がすく暇もないくらいの食事攻め。多少のアクシデントはあったものの基本的には至れり尽くせりで、乗り継ぎ2回はまったく苦にならなかった。
鄭州はホテルの周りをちょっと歩いただけだが、ウルムチは中心部に出て観光もできた。3回のフライトそれぞれに質のいいスリッパが準備されていて持ち帰らせてもらったのも嬉しかった。
これからの長旅、スリッパがない宿が多いだろうからなんぼあってもいい。これで13万円台なら大満足だ。
余談だが、ジョージアのホステルで、同じように南方航空を乗り継いでやってきた日本人女性と出会った。彼女はエコノミーに搭乗し広州で乗り継いだそうだが、日本人との相部屋だったという(追加料金を払えば一人部屋にもできる)。
広州のトランジットホテルは事前にネットで予約できるし、利用者が非常に多いので、空港からホテルにバスで送迎してくれるとのことだった。
南方航空のホテル無料サービスは日本で大々的に宣伝しているわけではないので、知らないと気づかない可能性が高い。日本語サイトでは6月30日までとされているが、最近になって年末まで継続すると公表された。そのうち日本語サイトも更新されるだろう。
そして中国国際航空も同様のサービスをやっている。こちらは12月1日までのようだ。筆者は中国語でやり取りしたが、簡単な英語ができれば使いこなせるだろう。