【NHK朝ドラ「ばけばけ」第14週】嘘から始まる家族 トキ(高石あかり)らが叫ぶ「だらくそ!」でつながる絆

高石あかりがヒロイン・松野トキを演じる「ばけばけ」(毎週月~土曜午前8時、NHK総合ほか)。トキと異国の教師・ヘブン(トミー・バストウ)が、ついに夫婦になった。その祝福の裏で、登場人物たちがそれぞれに「嘘」を抱えていたことが明るみに出た第14週は、清廉潔白な正しさだけでは成り立たない、人間関係の機微が描かれた。「本音」だけが家族を形作るのではない。ときには「嘘」こそが、大切な人の心を守る防波堤となる。第14週は、そんな“あたたかな偽り”が交差し、歪な形をしながらも真実の家族へと近づいていく、そんな再生の物語だった。
■嘘と嘘が生んだトキとヘブンの溝
今週、暗雲として立ち込めたのは、トキがヘブンにひた隠しにしていた、雨清水家への「10円の仕送り」の存在、そして三男・三之丞(板垣李光人)の存在であった。
西洋で生まれ育ったヘブンにとって、家族とは誠実な結びつきの象徴であり、隠し事は信頼の根幹を揺るがす裏切りに等しいのかもしれない。幼少期に愛する母と別れ、結婚に際しても悲しい経験をしているヘブン。彼がトキに求めたのは、常に信頼に裏打ちされた、クリアで透明な関係であった。
しかしトキが抱えていたのは、泥臭くも切実な、そして日本的な遠慮が混ざり合った嘘だった。借金を抱える松野家を支えるため、そして雨清水家を助けるために、ヘブンから得た給金を充てるという行い。その嘘は両家のため、そしてヘブンに誤解されないためのものであった。
ここで効いてくるのはヘブンの同僚で通訳の錦織友一(吉沢亮)の視点かもしれない。彼は、日本における「嘘」が必ずしも悪ではなく、角を立てないための配慮や、相手を傷つけないためのオブラートであることをヘブンに説いていた。正しさだけでは息が詰まる。その文化の断絶をどう埋めるかが、今週の最大の焦点となっていた。

■ヘブンが向き合う新しい家族
今週のクライマックスは、皮肉にも嘘がバレた結婚披露パーティの席で訪れた。立派な社長のふりをして現れた三之丞。しかし、その偽りもヘブンの言葉によって露呈してしまう。
10円の秘密、借金、見栄、そしてそれを覆い隠そうとしたトキの苦労。祝いの席は一転して、隠し事がすべて白日の下にさらされる修羅場と化してしまう。
しかし、嘘を暴いて断罪する、といった流れにはならない。社長になったのは嘘だ、と正直に告げた三之丞と、彼の心境を慮った母のタエ(北川景子)。両家を経済的に支えていたことをヘブンに隠していたのは、お金のために結婚したと思われたくなかったからだ、と涙ながらに伝えたトキ。
ヘブンは、両家が嘘をついた事実を許したのではない。嘘をつかなければならなかったトキの孤独を理解したのだ。三之丞やトキが家族のためについた嘘、それにより保たれていた平穏。それらすべてを受け入れたうえで、ヘブンはあらためてトキと、そして新しい家族たちと向き合った。隠されていた本当の痛みを共有し、記号としての「夫婦」を超え、血の通った「家族」になったのである。
■家族は「嘘」を赦し合う
第14週が提示したのは、「家族とは“理解”ではなく、“赦し”の積み重ねである」という普遍的な真理だ。
家族であれば、相手のすべてを理解すべきだという幻想を抱きがちである。しかし、人間は誰しも、墓場まで持っていきたい秘密や、自分自身でも説明のつかない矛盾を抱えて生きているものだ。それを無理に暴き立てることが愛なのではなく、相手が抱えている嘘の重さや、嘘をつかざるを得なかった背景を想像し、それらを含めて受け入れること。

トキとヘブン、そして松野家と雨清水家。彼らは今週、隠し事のない透明な関係を一度諦めかけた。しかし、感情に任せて正直になることで、最後には天に向かって「だらくそ!」と叫びあうほど、家族として繋がった。
タイトル「カゾク、ナル、イイデスカ?」に対し、本作が提示した答えは単純な「YES」ではない。それは、嘘をついても、間違っても、不甲斐なく情けない自分でも戻ってきていい場所があるという、絶対的な居場所の提示だったのかもしれない。
(北村有)
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