高石あかり「もう結婚?」突然すぎるストーリー展開で、夫役トミー・バストウに相談したコト〈ばけばけ第71回〉

『ばけばけ』第71回より 写真提供:NHK
今日の朝ドラ見た? 日常の話題のひとつに最適な朝ドラ(連続テレビ小説)に関する著書を2冊上梓し、毎日レビューを続けて10年超えの著者による「読んだらもっと朝ドラが見たくなる」「誰かと話したくなる」連載です。本日は、第71回(2026年1月12日放送)の「ばけばけ」レビューです。(ライター 木俣 冬)
「行くぞ!待っちょれ、川のあっち側」
宝船に乗った七福神の絵からはじまる。
トキ(高石あかり、「高」の表記は、正確には「はしごだか」)が住む家の向かいにある家の入口に描かれた絵だ。
もぬけの殻になった松野家のあばら家をのぞいて、「さびしいですね」とヘブン(トミー・バストウ)は言うが、トキは「ようやく出られる。ようやく川のあっち側へ戻れるけん」と感無量。
勘右衛門(小日向文世)とタツ(朝加真由美)はもうひとつの新婚家庭をもつ。ヘブンがそろえてくれた。まったくありがたい人と結婚したものだ。いわゆる玉の輿(こし)?
トキに何かあったらゆるさないと釘を差す勘右衛門に「もちろんわたくしも切腹覚悟です」とヘブンが挨拶(あいさつ)。念願のラストサムライの家族になれてさぞうれしいだろう。
サワ(円井わん)と、なみ(さとうほなみ)ともお別れ。
なみは「グッバイ、グッドラック」「シーユー」「シーユー」とヘブンと英語で挨拶。
トキは路地の入口の表札をとって去っていく。表札があったのだ。路地の向こうは長屋的な集合住宅的な場所であったのだろう。
そして、主題歌。
「黄昏(たそがれ)の街、西向きの部屋、壊さぬよう戸を締めて」の歌詞と少しかぶるが、トキの場合、「行くぞ! 待っちょれ、川のあっち側」と勇ましい門出。野垂れ死には避けられて、順風満帆である。
もう何も心配ないトキよりも、残されたなみとサワの心情や彼女たちの今後が気になる。
このまま、川のあっちとこっちで格差が開いてしまうのはかなりしんどいと思う。トキはいまはうれしくてしょうがないだろうけれど、そのうち冷静になってこの格差に気づいたとき、何を思うだろう。
とにかく、ここから、もう貧乏物語は終わりである。
「日本 やり方、松野家 やり方いきましょう」
主題歌明けは、広い広い新居に。司之介(岡部たかし)が大喜びでジャンプしたり走ったり寝そべたり。
これも、「錦織さん(吉沢亮)のおかげ」と松野家はそろって、錦織に感謝。悪い気はしない錦織だが、当然ながら、この展開はヘブンをムッとさせる。「私 おかげでしょ? でしょ?」とうるさい。
この錦織持ち上げ、展開。松野家のヘブンをからかう計画だった。
機嫌を直して、ヘブンはトキと、立派な庭を散歩。苔(コケ)、池、岩、石、「夢かなう、しました」と満足そうなヘブン。
それを見ている蛇(渡辺江里子)と蛙(木村美穂)。「実は私たちも暮らしているのよ」とささやく。
蛇と蛙は妖精みたいなものなのだろう。
この新居は、松江にある小泉八雲旧居として保存、一般公開されている家に忠実にセットを作ったもの。
「実際の八雲邸の庭に忠実に、当時の樹木を植えています。特に注目していただきたいのは、南側の広い庭に生えた大きな百日紅(サルスベリ)の木。それには穴が空いていて、なかに蛇がいたという話もあるんです。そこから蛇と蛙を思いつきました」と橋爪國臣チーフプロデューサーは語る。
引っ越し祝いに錦織がもってきたお菓子・若草を食べる。
これは実際にあるお菓子なのだが、NHKで「若草」と商品名をいっちゃっていいのだろうか。大福とかおはぎみたいな一般名称なのだろうか。
「ところで今日から4人での暮らしが始まるわけですが」とトキがかしこまって皆に問いかける。
異国人のヘブンと日本人の松野家がうまく生活できるかトキは心配していた。
「こげな風に言葉のことはあるし、暮らし方も西洋と日本のやり方は違う。それにヘブン先生は夜遅くて父上と母上は夜早くて朝早いし、あと、お互いうまく仲良うできるかいう心配もあるけん」
ヘブンが郷に入っては郷に従えとばかりに「日本 やり方、松野家 やり方いきましょう」と完全に折れる姿勢。
ただ、そんなふうに謙虚だけれど、この家の当主は当主。上座に座ることになる。それには司之介はむくれてしまう。
ヘブンだが、上座の意味を理解しているのだろうか。何かあったら切腹する覚悟もあり、「大変思うが、But 日本好き、やりかた知る、学ぶ。日本やりかた、松野家やりかた、楽しみです」と恭しく正座して頭を下げるくらいだから、上座の意味もいち早く学んだのかもしれない。
ヘブンのほうからの注文は、家族だから「先生」ではなく「ヘブン」と呼んでほしいこと。
トキは「そげな親しげな」と躊躇(ちゅうちょ)する。
このあとの司之介のセリフが秀逸。
「世界で一番親しいふたりじゃろう」
きゃっきゃっと盛り上がる愉快な松野家だった。サザエさん的になってきた気がするぞ。
「もう結婚!?」と驚いて、トミーさんに相談した
ではここで高石あかりのコメントを紹介しよう。
――トキはヘブンのどこにひかれたと思われますか?
トキとヘブンは少しずつひかれあっていったと思いますが、お互いをより強く引き合わせたのは怪談ではないでしょうか。台本を読んでヘブンさんに怪談を語るトキがすごく楽しそうだったので、もう今までの人生の中で一番楽しい時間としておこう、何よりもヘブン邸に行くのを楽しみにしよう! と考えて演じました。
銀二郎さんのことはずっと心の中にある宝物みたいな存在。それをなくしたわけではないけれど、また別でとても守りたいヘブンさんという存在ができたのだと思います。トキが自分の気持ちに気づけたのは、銀二郎さんがもう1回プロポーズしてくれたからかもしれません。
――第66回で結婚の誓いを結んだ2人について、感想を教えてください。
第14週の台本を受け取った時もう結婚!? と驚いて、トミーさんに「聞いてください! 14週で結婚します! どうやって作っていきましょう!?」と相談したのを覚えています(笑)。でも、実際に演じてみると人の心ってゆっくりじゃなくて突発的に動くこともあるんだと思えました。本当に「人間」が描かれている脚本です。
結婚を誓うシーンは出雲大社の中のとても神聖な場所で撮らせていただきました。通常は撮影で使えないような場所に入れてうれしかったですし、そこでヘブンとトキの大切なシーンを撮らせていただけてすごくありがたかったです。
――いよいよトキとヘブンの結婚生活がはじまります。今後の見どころを教えてください。
トキとヘブンのモデルである小泉セツさんと八雲さんの関係性にひかれて大好きになり、いつ夫婦を演じられるだろうとずっと楽しみにしていました。セツさんは八雲さんの破天荒な部分を支えながら、彼を守り続けたかっこいい女性だと思います。それと同じようにトキもヘブンさんに対して守りたいという気持ちを持っているので、少しずつ理想のおふたりに近づいていけたらいいですね。
これからのトキとヘブンにはお互いへの思いを試されるような大きな壁も生まれます。でも、絶対に揺るがない支え合う気持ちに、台本を読んでいても演じていてもさまざまな感情がわき、強く胸を打たれました。皆さんにも同じように感じ取っていただけると思いますので、どうぞ楽しみになさっていてください!
フォトギャラリー
主なシーンより
第15週(1月12日~1月16日)
「マツノケ、ヤリカタ。」あらすじ
晴れて結婚が認められ家族となったトキ(高石あかり)とヘブン(トミー・バストウ)。司之介(岡部たかし)とフミ(池脇千鶴)も連れ、長年暮らした長屋から橋の向こうの城下町へと引っ越す。サワ(円井わん)やなみ(さとうほなみ)に見送られ、トキたちは武家屋敷に向かう。新居での新たな生活、ヘブンは日本式に合わせると言うが松野家と一緒に暮らしていけるのか!?
連続テレビ小説『ばけばけ』
作品情報
連続テレビ小説「ばけばけ」。松江の没落士族の娘・小泉セツとラフカディオ・ハーン(小泉八雲)をモデルに、西洋化で急速に時代が移り変わっていく明治日本の中で埋もれていった人々を描きます。「怪談」を愛し、外国人の夫と共に、何気ない日常の日々を歩んでいく夫婦の物語です。
【作】 ふじきみつ彦
【音楽】 牛尾憲輔
【主題歌】 ハンバート ハンバート「笑ったり転んだり」
【出演】髙石あかり(「高」の表記は、正確には「はしごだか」) トミー・バストウ / 柄本時生 さとうほなみ 円井わん 岩崎う大 前原瑞樹 / 渡辺江里子 木村美穂 / 吉沢亮 / 岡部たかし 池脇千鶴 朝加真由美 佐野史郎 小日向文世 ほか
【放送】 2025年9月29日(月)から放送開始