「デンマークから独立したいが、米国に乗っ取られたくない」グリーンランド人に聞いた「トランプ氏の脅し」への本音

リスクにさらされる観光ビジネス, アメリカによる「乗っ取り」が現実味, 分断されるグリーンランド住民, 「もう十分すぎるほど経験してきた」, NATO崩壊につながると警告

トランプ大統領は、グリーンランド周辺の北極の氷が溶けることで新たな航路が開かれ、アメリカと、ロシア・中国との競争が激化すると主張してきた。

  • グリーンランドを併合するとトランプ大統領が再び言及したことで、現地住民やヨーロッパ首脳の間で懸念が広がっている。
  • グリーンランドの人々はアメリカとの協力には前向きだが、買収されたり武力で奪われたりすることには反対している。
  • ヨーロッパの首脳たちはグリーンランドの自治を擁護し、アメリカによる脅しや軍事行動に警告を発している。

ドナルド・トランプ(Donald Trump)大統領が1期目にグリーンランドを併合すると脅したとき、グリーンランドの人々は心配していなかったかもしれないが、いまでは多くの人が懸念を抱いている。

リスクにさらされる観光ビジネス

アメリカがベネズエラに奇襲攻撃を行って以来、グリーンランドに対するトランプ大統領の関心に再び注目されるようになり、現地では恐怖が広がっている。

「彼に何ができるのか分かりません。『心配しなくていい。すべてうまくいくから』と自分に言い聞かせようとしている面もありますが、それでもやはり不安です」と、グリーンランド南部の羊農家トゥパーナク・クロイツマン・クライスト(Tupaarnaq Kreutzmann Kleist)さんは1月6日、Business Insiderのサラ・アンダーセンに語った。

グリーンランドの観光会社ロー・アークティック(Raw Arctic)のCEO兼共同創業者キャスパー・フランク・モラー(Casper Frank Møller)さんも、クライストさんと同様の懸念を示した。自身や同業者の多くが、この状況がいったい自分たちの収益にどのような影響を及ぼすのか心配しているという。

リスクにさらされる観光ビジネス, アメリカによる「乗っ取り」が現実味, 分断されるグリーンランド住民, 「もう十分すぎるほど経験してきた」, NATO崩壊につながると警告

グリーンランドの観光会社ロー・アークティックのCEO兼共同創業者、キャスパー・フランク・モラーさん。

モラーさんは1月6日、Business Insiderにこう語った。

「私たちは会社の観光事業を発展させるために投資を行ってきましたが、地政学的な状況やトランプ大統領の脅しによって、いまではそれがリスクを伴うものになってしまいました。ですからもちろん、私たちは皆、本当に不安を感じています」

ホワイトハウスのキャロライン・レビット(Karoline Leavitt)報道官は6日、Business Insiderに対する声明で、トランプ氏とそのチームがグリーンランドを手に入れるための複数の選択肢について協議しており、その中には「米軍の活用」も含まれていると認めた。

アメリカによる「乗っ取り」が現実味

トランプ氏は大統領1期目のときから、デンマークの準自治領(主権はデンマークにある)であるこの北極の島に狙いを定めていた。彼は、北極の氷が溶けることで新たな航路が開かれ、ロシアや中国との競争が激化するため、グリーンランドの立地は戦略的に重要だと主張してきた。この島は重要鉱物資源も豊富で、すでにアメリカの重要な軍事基地もある。アメリカ政府当局はこの基地がミサイル防衛と北極圏の安全保障にとって不可欠だとしている。

トランプ大統領が1期目の2019年に初めてグリーンランド買収の話題を持ち出したとき、グリーンランドのインフルエンサーでエンジニアのクパヌク・オルセン(Qupanuk Olsen)さんはBusiness Insiderに対し、自分やほかの地元住民は冗談だと思っていたし、トランプ氏が2024年末に再び話を蒸し返してきたときも、まだ真剣に受け止めていなかったと打ち明けた。

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クパヌク・オルセンさんはグリーンランドで最も著名なインフルエンサーの1人だ。

状況が一変したのは、ドナルド・トランプ・ジュニア(Donald Trump Jr.)氏が2025年1月にグリーンランドの首都ヌーク(Nuuk)を訪問したときだった。

「そのとき、トランプ大統領の言葉がもはや単なる言葉ではないことに気づきました」と、オルセンさんは2025年6月に言った。「それは現実であって、彼は自分の言葉を本気で言っているんだと」。Business Insiderは1月上旬、オルセンさんに追加取材を試みたが連絡が取れなかった。

ベネズエラへの奇襲攻撃を受けて、モラーさんは6日、トランプ大統領によるグリーンランド併合の脅しについて、2025年1月にBusiness Insiderに語ったときより「実際に起こり得る可能性が、はるかに現実味を帯びてきたと感じます」と述べた。

分断されるグリーンランド住民

アメリカからの関心は少なくとも1つの前向きな効果をもたらした、とオルセンさんは6月に語った。それは、自分たちが世界の中でどのような立場にあるのか、そして自らの言葉で語る必要性について、グリーンランドの人々がより真剣に考えるきっかけになったということだ。

「グリーンランドの誰にとっても、爆音の目覚ましコールのような出来事でした。なぜなら、私たちがデンマークのもとにとどまり続けたいのか、独立すべきなのか、それともアメリカの州になるべきなのかについて、突然意見を持たなければならなくなったからです」と彼女は説明した。「私たちには当時、選択肢がありました。そのことがデンマークからの独立運動にはプラスに働いたのです」。

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トゥパーナック・クライストさんはグリーンランドでヒツジを飼育する羊農家だ。

その考え方は変化しつつあるのかもしれない。

クライストさんは1月6日、「私たち先住民のグリーンランド人同士がいま、徐々に対立し合うようになっている」ことを心配しているとBusiness Insiderに語った。彼女によると、アメリカにつこうとする人もいれば、デンマークにつこうとする人もいるという。しかし、彼女は、最終的にグリーンランドが独立国家になることが夢だと付け加えた。

「もう十分すぎるほど経験してきた」

冒頭のモラーさんはこう語った。

「グリーンランドはグリーンランド人のものであってほしい。私たちは売り物ではありませんし、乗っ取られる存在でもありません」

グリーンランドの天然資源・ビジネス・エネルギー・司法・ジェンダー平等担当のナーヤ・ナサニエルセン(Naaja Nathanielsen)大臣は2025年6月、グリーンランドに対するアメリカ政権の関心の多くを、協力の機会と捉えていると述べた。しかし、トランプ氏のやり方は間違っているとも指摘した。

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ナーヤ・ナサニエルセンさんは、グリーンランドの天然資源・ビジネス・エネルギー・司法・ジェンダー平等の担当大臣だ。

「緊張を少し和らげ、対立の度合いや言葉の応酬をエスカレートさせないようにすれば、アメリカと私たち両者の合意のもとで、双方にとって相互に利益となる前進の道を数多く見出だせると思います」とナサニエルセン大臣は語った。

「しかし、私たちが商品であるかのように売買したり獲得したり奪ったりできる存在として語られることは受け入れられません。それは言うまでもなく、すべての人にとって侮辱です」

ナサニエルセン大臣は6日、Business Insiderに対するメールで、6月に語った自身の発言に変わりはないとし、こう明かした。

「グリーンランドの人々は現在の状況に動揺し、それが大きな不安を引き起こしている。私たちは植民地主義よりも同盟やパートナーシップという考え方を今後も一貫して推進していきます。私たちは植民地として支配される経験をもう十分すぎるほど経験してきましたから」

NATO崩壊につながると警告

トランプ大統領は、デンマークはグリーンランドを守るために十分な対応をしていないと主張してきた。「国家安全保障の観点から、我々にはグリーンランドが必要だ」とトランプ氏は1月4日、エアフォース・ワン機内で記者団に語った。

同じ日、デンマークのメッテ・フレデリクセン(Mette Frederiksen)首相は声明で、アメリカに対し「歴史的に緊密な同盟国に対する脅しをやめるよう」求めた。フレデリクセン首相は以前にも、グリーンランドは売り物ではなく、併合という考えはいかなるものであっても「ばかげている」と述べ、トランプ大統領の提案を真っ向から拒否していた。

フレデリクセン首相は、アメリカがグリーンランドに対し軍事行動をとれば、北大西洋条約機構(NATO)の結束は深刻な打撃を受け、同盟国間の衝突にこの同盟が耐えられるのかという疑問が生じると警告してきた。

翌々日の6日、フランス、ドイツ、イギリス、イタリア、スペイン、ポーランド、デンマークを含むヨーロッパの主要首脳らが、グリーンランドを擁護する共同声明を発表した。

「グリーンランドはそこに住む人々のものだ」と声明で述べた。「デンマークとグリーンランドに関する事柄を決めるのは、デンマークとグリーンランド、その両者だけだ」。