客離れ中「ココイチ」買収した高級パフェ店の実態

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「カレーハウスCoCo壱番屋」が夜パフェ専門店をお買い上げ。どんな店なのか、そしてどんな狙いがあるのか(写真:筆者撮影)

2025年、一番驚いた外食M&A

ココイチが「夜パフェ専門店」を買収――。

【画像】ココイチより高い…でも納得感はある?高いものは約3000円もする「夜パフェ店」のメニュー

昨年末、芸能人の結婚・離婚ニュースが世間を騒がせる中、外食ジャーナリストの筆者が一番驚いたニュースだ。

カレーでおなじみ「カレーハウスCoCo壱番屋」を運営する壱番屋は、夜パフェ専門店などを展開するGAKUを子会社化したと発表した。年も暮れようとする12月29日のことだ。

昨今の値上げで「さすがに高い」「気軽に行けなくなった」といった声が続出し、客足も前年比割れが続くなど、人気低迷中と言っても過言ではなさそうなココイチだが、その中でひっそりと夜パフェ専門店を買収――。

【画像を先に見る】ココイチより高い…でも納得感はある?高いものは約3000円もする「夜パフェ店」のメニュー【全23枚】

組み合わせも実に意外すぎるものだが、どんな狙いがあるのか。そもそもGAKUとはどのような企業なのか。

本稿では実際に筆者が夜パフェを体験したうえでココイチとのシナジーについて考えてみたい。

「高い」と話題のココイチより高いパフェ

GAKUは2006年、札幌で創業。札幌で夜パフェ専門店を複数展開し、飲んだ後にパフェでシメるという「シメパフェ」文化を牽引した存在だ。

都内にもいくつか店舗があり、筆者は渋谷の「パフェテリア ベル」を訪れてみた。渋谷駅からほど近く、居酒屋が立ち並ぶ通りの雑居ビル3階にある。スイーツの店だが、夜パフェだけあって営業時間は17時から翌0時もしくは1時となっている。

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渋谷駅近くの雑居ビル3階の立地は、通りがかりではなく目的を持って訪れるロケーション(写真:筆者撮影)

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店前の看板。見た目にも美しいパフェの写真に期待が高まる(写真:筆者撮影)

メニューはパフェが常時6種類ほど。メニュー表は撮影禁止とのことだったが、イラストで各パフェのパーツの説明が細やかに書かれていてどれにしようか迷う。熟読しながら選んだ。

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パフェはおおよそ2000円から(写真:筆者撮影)

パフェの単品価格は1980~2880円。これにドリンクセットを付けるとプラス300円なり、同店の客単価は2000~3000円ほどか。単純にファミレスのパフェなんかと比べるとなかなかなお値段である。

最近のココイチはうかつにトッピングを重ねると2000円を超えそうなことから「高い」と話題だが、ここのパフェはそれ以上だ。

繊細で芸術的なパフェは人件費の味

迷いに迷った末、筆者は「苺ミルク嬢」(単品2880円)なるパフェを注文。

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「苺ミルク嬢」。美しい盛り付けに、思わず写真を撮らずにいられない(写真:筆者撮影)

華奢なワイングラスに繊細な盛り付けの1杯はため息が出るほど美しい。これは注文から提供までには細かい手仕事が必要そうだ。ココイチのカレーのように盛り付けるだけとはいかない。

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女の子を模したクッキーはアイシングまで細やか(写真:筆者撮影)

クリームやアイスクリーム、ジュレなどの各パーツもすべて自家製とのこと。パティシエの細かい手作業でかなり手間がかかっており、ちょっと高めの値段設定は少なからず人件費だということがわかる。

気になる味のほうは、「飲んだシメに食べる」とあって軽い食べ心地だ。クリームやアイスクリーム、クランブルなども全体的にくちどけよく構成されている。全体的に甘さは控えめで重たくない。

その一方でフルーツの酸味やハーブなどの香りが際立ち、ヘビーな食事のあと、口をリセットするのにぴったり。確かに、これならたらふく飲んで食べた後もペロリといけそうだ。

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表面の苺クリームやマスカルポーネクリームを食べ進めると、奥にはピスタチオジェラートやライチのジュレが顔を出し、表情を変えていく(写真:筆者撮影)

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説明書きによると底にスプーンを突っ込み混ざり合った状態で口に運ぶのがおすすめだそう(写真:筆者撮影)

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パフェと一緒に説明書きのカードが渡される(写真:筆者撮影)

こちらのパフェは単品だと2880円、ドリンクセットで3180円。筆者はドリンクセットにして、店員さんオススメのフレーバーティー「ベリーベリーショコラ」をチョイスしたらプラス100円となり、お会計は3280円だった。

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フレーバーティー「ベリーベリーショコラ」(写真:筆者撮影)

3000円のパフェ、どう捉えるか

この値段をどう捉えるか。値段だけ見ると「パフェで3000円もするなんて!」と思う人もいるかもしれない。正直、量も多くはない。

しかしここは単なるパフェ店ではなく、「シメパフェ」の店だ。パフェという“モノ”にお金を払うのではなく「飲んだあとにパフェでシメる」という“シーン”にお金を払っている。

例えば居酒屋で友達と飲み食いしたあと「まだちょっと話したい」なんて時もあるだろう。しかし、もう一軒居酒屋に行って満腹のところに惰性のフライドポテトをビールで流し込んで2000円払うのはどうだろうか。それならば美味しいパフェでシメたほうが満足度は高いかもしれない。もしくは、ラーメンでシメるほどのキャパはないが、なにか口さみしい。そんな時にもぴったりだ。

筆者はオープン直後の17時過ぎに伺ったので空いていたが、店員さんいわく遅い時間ほど混みあい、毎日20時や21時ごろにはウェイティングが発生するということだ。

どこかで食事をした後のシメに立ち寄る人が多いのだろう。ネットで口コミを調べてみても、それなりに待ち時間があるという話が目立つ。実際に筆者も札幌の店舗に21時ごろ、立ち寄ろうとしたらあまりの行列に諦めたことがある。

そして、いざ入ってみると、非常に手の込んだ、繊細なパフェが出てくる。訪れた人としては、「そこそこするな」と思いながらも、決して「納得できない」とはならないだろう。

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店内。ほぼ開店よーいドンで入店したため空いていた(写真:筆者撮影)

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店前には満席時に整理番号を発行するタブレットが設置されていた(写真:筆者撮影)

SNS全盛のいま、パフェが高級化

近年、パフェ人気は高まるばかりだ。いくつものパーツを重ねて盛り付ける見た目はまさにSNS映えしやすいスイーツ。SNSの発達とともにパフェ熱は上がっている。

大手ファミレス各社はその時の旬のフルーツを使った季節限定パフェメニューに力を入れており、今やファミレスでも特別なものは1杯2000円超えだったりする。

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現在デニーズが展開する季節限定のイチゴパフェは一番高いもので2409円(デニーズのホームページより)

個店のパフェにも高級化の流れがある。特にパフェ好きの間で有名なのが、東京・等々力の「パティスリィアサコイワヤナギ」だ。予約制のパフェ専門店で、予約サイトのメニューを見るとパフェとドリンクで6000円ほど。

なぜここまで高級化しているかというと、「味が美味しい」といった商品の質が高いことはもちろんだが、見た目にも美しいパフェを食べるという体験が高付加価値としてお客に受け入れられているようだ。

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芸術品のようなパフェと独自の世界観でファンを魅了するパティスリィアサコイワヤナギ(同店のホームページより)

そうした中、2015年ごろ札幌から発生したシメパフェブームは、まさに今回のGAKUが火付け役となった。GAKUのパフェも決して安くはないが「飲んだ後に食べる」という体験価値が女性を中心に支持されている。

後発の夜パフェ店もどんどん登場しており、「3年で100店舗」を掲げFCで多店舗化を目指す「VIGO」といったブランドも出てきたりと、まさにパフェ百花繚乱の時代だ。

外食なのにキャッシュリッチなココイチ

あまり知られていないことだが、実はココイチは昨今、他社の買収を進めている。

実際に、これ以外にもココイチは2020年12月には北海道で「成吉思汗 大黒屋」を展開する大黒商事を、2025年1月には「極濃豚骨 らーめん小僧」を展開するKOZOUを傘下に収めている。前者はジンギスカン焼肉店で、後者は文字通りラーメン店。カレー以外のポートフォリオを増やし、事業の多角化を図っているのだ。

特筆すべき点として、ココイチは自己資本比率が約68%(2026年2月期決算)と外食企業の中でもずば抜けて財務状況が良好だ。潤沢なキャッシュを寝かせておくのはもったいないので、魅力ある企業を傘下に収め、成長を加速させていくのは当然の流れだ。

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近年、自己資本比率はやや右肩下がりではあるが、外食企業にしては高い数字を誇っている(出所:壱番屋決算説明資料より)

ココイチがGAKUを買収したのは、その独自性の強い業態に可能性を見出し、単にインキュベーション(スタートアップの成長支援)のためなのかもしれない。しかし、同じ外食のくくりである以上、何かシナジーを生み出してもよさそうだ。

冒頭でも軽く触れたが、最近のココイチといえば、「高い」という印象でしばしばネット上で物議を醸している。

カレー単品で見ればお手頃価格のココイチだが、ココイチの醍醐味は豊富なトッピングを自分好みに楽しめること。近年の原材料の高騰などにより、ココイチも例に漏れず値上げを進めているが、それによってうかつにトッピングを重ねると2000円を超えそうになる。ここでココイチが長年培ってきた「お手頃チェーン店」のイメージが良くも悪くも作用し「思ったより高い」という印象を持たれてしまっている。

そんな低単価イメージから脱却できないココイチに、独自のポジショニングや体験価値を打ち出し高単価化に成功しているGAKUからは、学ぶことは多そうだ。

そもそもGAKUはリゾット店だった

ここまではGAKUをパフェの店として紹介したが、実は同社のスタートはリゾット専門店だった。

イタリアンの料理人として経験を積んだ橋本学氏が2006年、札幌に「リゾッテリア ガク」を創業したのが始まりだ。その後、甘いもの好きの橋本氏が「お酒を飲んだ後にパフェが食べられる場所があれば」と、夜パフェ専門店を展開している。創業のリゾット専門店に加え、炉端居酒屋も展開している。カレーとリゾットなら、同じ米料理として知見をシェアできるかもしれない……。

カレーと夜パフェという意外な組み合わせだが、今後はどのような影響を及ぼし、企業の成長につなげていくのか注目したい。

【画像】ココイチより高い…でも納得感はある?高いものは約3000円もする「夜パフェ店」のメニュー【全23枚】