電気の軽自動車「N-ONE e:」のポイントはどこに?

N-ONE、N-VAN e:との相違はどこに?, EVらしさを表現したリアまわり, 走りの質は日産「サクラ」より上, 「スーパー ワン プロトタイプ」も気になるけれど

2025年9月に登場した「N-ONE e:」のデザインを中心に見ていく(筆者撮影)

BYDが軽自動車規格の電気自動車(EV)の導入を発表した2025年。日本勢でこのカテゴリーに登場した唯一のニューモデルが、ホンダ「N-ONE e:(エヌワンイー)」だった。

【写真で見る】シンプルでカワイイ「N-ONE e:」のデザインをチェックしよう!

2年前に発表された商用車の「N-VAN e:(エヌバンイー)」に続く、ホンダの軽EV第2弾で、プラットフォームやパワートレインは、基本的に共通。既存のエンジン車のボディを活用しているところも同じだ。

でも、フロントマスクぐらいしかエンジン車との違いが見当たらないN-VAN e:に対して、N-ONE e:のノーズまわりは、別の車種かと思うほど違う。

エンジン車の「N-ONE(エヌワン)」は、ホンダ初の軽乗用車だった1967年発売の「N360」をモチーフとしたフロントマスクを持っていた。

【写真】まずじっくり見てみたい「N-ONE e:」の内外装

N-ONE、N-VAN e:との相違はどこに?

ヘッドランプがグリルを模したブラックパネルより少し上に飛び出しており、ランプがない部分のエンジンフードは一段低く。さらに台形フォルムを強調するために、フロントマスク全体が少し後傾していた。

N-ONE、N-VAN e:との相違はどこに?, EVらしさを表現したリアまわり, 走りの質は日産「サクラ」より上, 「スーパー ワン プロトタイプ」も気になるけれど

ガソリン車の「N-ONE」。写真は「N360」をモチーフとしたグリルを装着する「オリジナル」(写真:本田技研工業)

それに比べるとN-ONE e:のノーズは、スクエアに近い。これはN-VAN e:から、前輪を駆動するモーターの上に充電機器などを積み重ねたレイアウトを、そのまま引き継いだことが影響しているようだ。

N-VAN e:は何よりも空間効率重視なので、駆動用バッテリーを床下に薄く敷き詰め、それ以外の走行系メカニズムをモーターから充電口に至るまで、ノーズに集結させている。

また、N-VAN e:の全高は、1950〜1960mmと、軽自動車規格いっぱいの2mに近い。

N-ONE、N-VAN e:との相違はどこに?, EVらしさを表現したリアまわり, 走りの質は日産「サクラ」より上, 「スーパー ワン プロトタイプ」も気になるけれど

「N-VAN e:」とガソリン車の「N-VAN」は、フロント周り以外にデザインの違いはほとんどない(写真:本田技研工業)

一方、N-ONE e:の全高は1545mmで、全高は一般的なタワーパーキングに収まる数字であり、ハッチバックと呼べる。しかしながら、パワートレインについてはN-VAN e:のそれを引き継いだ。その結果が、ノーズ形状の変更につながったようだ。

ヘッドランプは丸型をエンジン車から受け継ぎつつ、ウィンカーを兼ねたデイタイムランプのリングを3分割としながら、中の内側2つを角形LEDとしてモダンな雰囲気を加えている。

このランプや普通と急速、2つの充電口が埋め込まれる黒いフロントフェイスに、破棄されたバンパーのリサイクル材を採用していることはN-VAN e:と同じだが、両端が丸められたパネルと奥目がちなヘッドランプの組み合わせには、既視感があった。

それは、「Honda e(ホンダe)」である。

N-ONE、N-VAN e:との相違はどこに?, EVらしさを表現したリアまわり, 走りの質は日産「サクラ」より上, 「スーパー ワン プロトタイプ」も気になるけれど

リアのモーターで後輪を駆動する意欲的なモデルだった「Honda e」(写真:本田技研工業)

世界的にそのデザインが高く評価されながら、高価格や航続距離の短さがネックになり短命に終わった、ホンダ初の量販EVだ。

このあたりのストーリーは、BMWが量販EV第1号として革新的な内容の「i3」を送り出したものの、思ったように売り上げを伸ばせず、その後は「iX1」や「i7」など、エンジン車と車体を共通とする車種を主力としていった流れを思い出す。

ホンダも、中型車以上のクラスでは専用設計EVの「0(ゼロ)」シリーズを送り出す予定だが、軽乗用車は日本専用規格でありコスト面で厳しいジャンルだ。エンジン車や商用車との共用部分を増やすのは、当然であろう。

EVらしさを表現したリアまわり

驚くのは、リアのデザインも一新していることだ。コンビランプがクリアレンズになっただけでなく、ナンバープレートの位置を下げ、パネルに加えリアウィンドーまで新造することで、張りのある面を強調している。

N-ONE、N-VAN e:との相違はどこに?, EVらしさを表現したリアまわり, 走りの質は日産「サクラ」より上, 「スーパー ワン プロトタイプ」も気になるけれど

「N-ONE」ではテールランプの間にナンバープレートを設置するデザインだった(筆者撮影)

フロントもそうだが、線ではなく面で見せるスタイリングになっていて、多くのEVが取り入れているシームレスなデザインを、うまく表現していると思う。

N-ONE e:と比べると、N-ONEにはエンジン車っぽい演出があちこちにあることも教えられた。

インテリアは、エクステリア以上にエンジン車とは違う。インパネだけでなくフロントシートやドアトリムまで別物だ。

インパネは、柔らかいラインで描かれたエンジン車に対し水平基調となり、道具感が強まっている。

メーターやセンターディスプレイ、その下のエアコンスイッチ、ドライブセレクターなどは、数あるホンダ車の中から、機能重視っぽいものを起用している感じがした。

N-ONE、N-VAN e:との相違はどこに?, EVらしさを表現したリアまわり, 走りの質は日産「サクラ」より上, 「スーパー ワン プロトタイプ」も気になるけれど

インストルメントパネルは極めてシンプル。「G」グレードではセンターディスプレイも付かない(筆者撮影)

それでも無味乾燥に映らないのは、インパネ上部に入ったベージュの細いモールが効いているからだろう。ちなみにこのモール、植物由来のバイオ樹脂を用いているそうで、フロントフェイス同様、地球環境に配慮したものだ。

そしてシートベルトには、色合いの近いブラウンを起用している。これもグレー系のシートやドアトリムに、絶妙な差し色になっていると感じた。

現行「N-BOX」も取り入れている配色だが、筆者はフロントマスクのところで出したホンダeを思い出した。

N-ONE、N-VAN e:との相違はどこに?, EVらしさを表現したリアまわり, 走りの質は日産「サクラ」より上, 「スーパー ワン プロトタイプ」も気になるけれど

シートベルトに差し色を使うのは現行「N-BOX」でも用いられている手法(筆者撮影)

ホンダeの場合は、リビングルームのようなキャビンを目指し、木目調パネルとともに、シートベルトにこの色を起用したとデザイナーから聞いた記憶がある。そういえばグレーの濃淡でまとめたインテリアコーディネートも、ホンダeと同じだ。

走りの質は日産「サクラ」より上

Nシリーズのアピールポイントのひとつだったマルチパーパス性は、そのまま受け継がれている。

身長170cmの筆者がゆったり過ごせるリアシートは、背もたれの前倒しだけでなく座面の跳ね上げも可能で、後者は背の高い荷物を積むときに重宝しそうだ。

N-ONE、N-VAN e:との相違はどこに?, EVらしさを表現したリアまわり, 走りの質は日産「サクラ」より上, 「スーパー ワン プロトタイプ」も気になるけれど

ルーフの高さこそ劣るものの足元空間は「N-BOX」などとも引けを取らない(筆者撮影)

N-ONE、N-VAN e:との相違はどこに?, EVらしさを表現したリアまわり, 走りの質は日産「サクラ」より上, 「スーパー ワン プロトタイプ」も気になるけれど

後席座面のチップアップ機構はホンダ車ならでは(筆者撮影)

後方のラゲッジスペースは床が低いうえに、下に収納スペースを持つ。ハッチバックでありながら、ハイトワゴンに近いユーティリティの持ち主であることが確認できた。

走りではまず、静粛性と乗り心地の良さに感心した。前者についてはエンジン音がないうえに、ロードノイズもしっかり遮断されている。後者はやはり、低重心のおかげでサスペンションが理想に近い設定にできることが大きいだろう。

これらは、記憶にある同じ軽EVの日産自動車「サクラ」と比べても、設計の世代の新しさもあって、上を行っていると思った。

ハンドリングについては、エンジン車のようなフロントの重さが伝わってくる。走行関連のメカニズムをノーズに集中させたためだろう。リアモーターのホンダeのような独特の楽しさはないが、逆に同クラスのエンジン車から違和感なく乗り換えられそうだ。

加減速についても、一部の輸入車にあるような唐突感はなく、初めての人でも安心して乗りこなせると思う。

N-ONE、N-VAN e:との相違はどこに?, EVらしさを表現したリアまわり, 走りの質は日産「サクラ」より上, 「スーパー ワン プロトタイプ」も気になるけれど

シフト操作はセンターコンソールのボタンで操作する(筆者撮影)

スイッチ操作で選択できるシングルペダルコントロールも同じで、久しぶりにこの種のモードを試した筆者でも、5分ぐらいすると市街地走行ではこちら固定で走っていた。

WLTCモードで295kmという満充電での航続距離(一充電航続可能距離)は、サクラの1.6倍以上であり、かつてのホンダeをも上回る。

「スーパー ワン プロトタイプ」も気になるけれど

価格は取材した上級グレードの「L」で319万8800円、ベーシックな「G」で269万9400円となっており、サクラより10万円ほど高い。

デザインについては、外も中もツール的なN-ONE e:に対して、サクラのエクステリアはモダンであり、インテリアは既存の自動車に通じるにぎやかさがある。この面でサクラを選ぶ人もいるだろう。

それでもホンダがN-ONE e:にこのようなデザインを与えたのは、N-ONEのボディとN-VAN e:のメカニズムを継承するという条件の中で、思いどおりの結果を残せなかったホンダeのDNAを継承したいという思いが、あったからかもしれない。

N-ONE、N-VAN e:との相違はどこに?, EVらしさを表現したリアまわり, 走りの質は日産「サクラ」より上, 「スーパー ワン プロトタイプ」も気になるけれど

80年代の「シティ・ターボ」を思い出させる「Super-ONE Prototype(スーパー ワン プロトタイプ)」(写真:本田技研工業)

一部のクルマ好きは、「ジャパンモビリティショー2025」に展示されたワイドフェンダーの「Super-ONE Prototype(スーパー ワン プロトタイプ)」のほうが気になるかもしれないが、かつてホンダeに魅せられたものの、購入するまで行かなかった筆者は、N-ONE e:の佇まいに惹かれている。

【写真】もう一度よく見てみたい「N-ONE e:」の内外装