「今までこんな『お宝』を捨てていたなんて」やさい料理家が実践しているリジェネラティブな暮らし

木や森や海――自然を身近に感じながら、きもちよく暮らしたい。田舎暮らしはもちろん、都会で生活しながらもそれを実現するためのヒントはたくさんあります。サステナブルな暮らしを実践している人たちを訪ねました。今回は、サステナブルな食材と調理法で地球に寄り添う“やさい料理家”の二部桜子さんをクローズアップ。

自然を享受し、循環させる、リジェネラティブな暮らし

ある日、愛犬との散歩で訪れる公園の木が伐採されると聞いた、“やさい料理家”の二部桜子さん。

環境活動家の友人から「日本の林業を活性化しないと日本の森を守れない」と聞き、国産材を自宅の床に使うことにした。木目や色の美しさに一目惚れしたのは、広葉樹である栗の木材「しなの栗」。

近隣の住人たちと抗議をした結果、300本の伐採計画は200本に変更されたが、四季折々の姿で楽しませてくれていた木々が目の前で伐採されたことは、想像以上にダメージが大きかった。

屋上にフローリング材の残りを使ったボックスを設置し、ハーブガーデンに。

それらがウッドチップにされると聞き、自宅のリノベーションで、誰かの思い出になった木々かもしれないという想いから、ウッドチップをアップサイクルしたパネルを採用した。

都心に暮らしていると、「日本の森林が危機だ」と聞いてもピンとこないかもしれない。だが二部さんの話からは、木々は日常のすぐそばにもあり、恵みを与えてくれている大切な存在なのだと気づかされる。「心と体、地球にやさしい食」をコンセプトとして活動する二部さんの根底にあるのは、「私たちは自然から与えられている」という感謝の想いなのだ。だから季節の恵みを余すことなくいただくために、捨ててしまいがちな野菜の皮や根、茎なども、ベジブロス(野菜だし)に活用する。

鍋に野菜くずを入れ、水をひたひたに注いで火にかけ、沸いたら中弱火にして20分煮る。ザルなどで漉せばべジブロスに。味噌汁やポタージュのベースにしたり、これでご飯を炊くと美味。「野菜の種類は多いほうがおいしい。毎日少しずつ冷凍しながら溜めていくといいですよ」

「旨みたっぷりのだしがとれるんです。皮の栄養も無駄にならないし、食べた人はみんな『今までこんな“お宝”を捨てていたなんて』って驚きますね。煮出したあとの野菜くずを仲良しの農家さんの畑に持って行き、肥料として循環させるところまでが私の料理です」

土のバクテリアで生ゴミを分解する「キエーロ」には、自宅や〈SHUNNO KITCHEN〉で出た野菜くずを投入。ベジブロスに煮出したあとなので分解が速い。

二部さんがリジェネラティブな暮らしを心掛けるようになったのには、育った環境も影響している。

「母(挿花家・エッセイストの二部治身さん)が昔から畑で有機野菜や草花を育てていたので、落ち葉を集めて腐葉土にするとか、自然と調和した暮らしが幼少の頃から当たり前でした。渡米してアメリカの大学を卒業し、アパレル業界に就職したのですが、海外ではエシカルなことについて話す機会も多かった。特に意識が高い人でなくても、『どういう洗剤使っているの?』なんて会話が日常的。そうやって感度が高くなっていったのかも」

山に行くたびに採取する松の葉やウラジロモミ、白樺の枝などでコンブチャを作る。ナチュラルワインのような奥深い味わい。

帰国してから数年後、好きな料理を仕事にしたいと考えるようになり、キッチンスタジオの物件を契約した勢いで退職。突然の転身ではあったけれど、これまで培ってきたディスプレイセンスやコンセプトの理解力などが役立ち、料理の仕事はすぐに軌道にのった。

「ところが大規模なケータリングをしたとき、プラスチックごみの量にショックを受けてしまって。以来、ノープラや、フードロスを出さない、とうたうようになりました」

ベジブロスを使ったきのこ汁、鯛のイチジク葉包み焼き、蒸し野菜に4種の野菜麹と豆乳マヨネーズを添えて。ドリンクはりんごと白樺の自家製コンブチャ。

周りの人から少しずつ循環の輪を広げていく

意識しながら活動していくうちに、情報が集まり知識も深まっていく。ならばそれらを共有しようと、主宰する〈SHUNNO KITCHEN〉では、食を通して学ぶ体験型食事会「旬のtable」を開催している。生態系が乱れた森で増え続けるシカやイノシシをジビエとしていただきながら、山と食のつながりを感じたり、環境に負荷をかけずに育てられ、獲られた魚介を味わいながら、温暖化によって漁獲量が激減している海の現状を知ったり。

千葉県我孫子市の〈NORA FARM〉に頼んで送ってもらったイチジクの葉で、すだち麹をまぶした鯛を包んで、葉の香りを活かした蒸し焼きに。

「とはいえ、自分自身もストイックにはできないから、まずは季節の野菜をおいしく食べよう、ということを伝えています。それが入り口となって、オーガニックな食材やサステナブルな調理法にも関心を持ってくれるようになったらいいなと思って」

“推し”である野菜の色や形の美しさをなるべく活かしたいと、いつも考えている。

数年前には父が他界し、母との同居に伴う“実家じまい”をした際は、上質なもののサステナビリティを改めて実感した。

アンティークの水屋ダンスに、実家から受け継いだ器を収納。

「建築家だった父が建てた家には、両親が集めた骨董品や民芸品のコレクションが膨大で。友人たちの助けを借りて自宅で譲渡会を開いたら、毎日100人もの人が来てこぞって買ってくれました。それで、“本物”はちゃんとまた誰かに引き継げるとわかったんです。私も別の知人の実家じまいで骨董品を譲ってもらうこともあるし、そうやってモノが行き来していくことは究極のエコだなって。与えられたものに感謝して、それらを循環させながら生きていきたいと思っています」

剪定された姫林檎の枝は、愛犬の散歩時に拾ったもの。「なにか飾るものはないかな?コンブチャの素材になるものはないかな? と、街路樹や公園、庭木を観察しながら歩いてます。都心でも自然の循環を感じられます」

二部桜子(にべ・さくらこ)

料理家。アメリカの大学でB.F.A.(美術学士)を修得し、アパレル会社に就職。10年間のニューヨーク生活を経て帰国してからもファッションバイヤーやディレクターとして活動。2017年にやさい料理家に転身し、「SHUNNO KITCHEN」をスタート。ファッションブランドのケータリングや野菜の力を最大限に引き出す調理法を学ぶ“野菜の教室”、イベントなどを通じて、「心と体、地球にやさしい食」を発信している。Instagramは@shunnokitchen

●情報は、『FRaU SDGs MOOK 森と海が教えてくれる、きもちのいい暮らし』発売時点のものです(2025年12月)。

Photo:Akiko Baba Text:Shiori Fujii Edit:Chizuru Atsuta

FRaU SDGs MOOK

森と海が教えてくれる、きもちのいい暮らし

2025年12月17日(水)発売 価格:1200円(税込)

▼ご購⼊はこちらから

【Amazon】

https://amzn.to/4hRLuqI

【楽天ブックス】

https://books.rakuten.co.jp/rb/18438571/

【セブンネットショッピング】

https://7net.omni7.jp/detail/1107670693

※ネット書店で売り切れの場合は、お近くの書店でお求めください。

「FRaU×SDGsプロジェクト」の 会員になりませんか?【登録受付中】

2030年のゴールに向けて多くの方に「SDGs」を知ってもらい、“ご自身にできることを見つけてほしい”“アクションにつなげてほしい”そんな願いからスタートした「FRaU×SDGsプロジェクト」。

このプロジェクトの会員の皆さまには、SDGsにまつわるさまざまな情報、今後開催予定のイベント告知、FRaU誌面やFRaUwebの企画参加のご案内などをお送りしています。FRaU主催のイベントに優先的にご参加いただくことができたり、サステナブルグッズの会員限定プレゼント企画に応募できたり、さまざまな特典もご用意。

さらにメールマガジン登録された方には、最新トピックス満載のメールマガジンを毎週配信。イベント告知などはイチ早くお届けします。年齢、性別などの条件はなく、登録も無料。ご興味のある方は、会員登録ページよりご登録をお願いします。

SDGs会員登録(無料)はこちらから▶︎

SDGs会員について詳しく知りたい方はこちら▼

https://gendai.ismedia.jp/list/special/frau_sdgs