「アートを日常に」米国芸術家の理念実践 中村キース・ヘリング美術館、山梨県北杜市

黄色いアーチの前で話す「中村キース・ヘリング美術館」主任学芸員の田中今子さん=2026年1月、山梨県北杜市

 山梨県北杜市に米国の芸術家キース・ヘリング(1958~90年)の美術館がある。30年以上前から作品を収集してきた甲府市出身の中村和男さんが2007年に創設。アートを日常に溶け込ませる理念を実践しようと、館内展示にとどまらず県内外でのイベントにも取り組んでいる。中村さんは2025年12月に亡くなったが、スタッフらは「ヘリングの魅力を今後も伝えていきたい」と話す。(共同通信=山田浩平)

 ヘリングは1980年代、ニューヨークの地下鉄構内で展開した創作活動が評判を呼び、31歳で亡くなるまで絵画や彫刻を通し、平和や反差別のメッセージを発信し続けた。

 八ケ岳南麓の豊かな自然に囲まれた「中村キース・ヘリング美術館」(北杜市小淵沢町)。土地の高低差を生かした構造で、順路は上り下りを繰り返し、時に屋外へ飛び出すことも。

 2人組が肩を組んで歩いているような高さ約3メートルの彫刻に、広い空間の真ん中に置かれた黄色いアーチ。収蔵する約300点の中にはタイトルや解説がないものもあり、主任学芸員の田中今子さん(34)は「見る人が自由に解釈できる」と話す。

 中村さんは作品の面白さにほれ込んだ1987年以降、収集を始め、100点ほど集まった2007年に美術館をオープン。施設外でもイベントを開催し、戦後80年の2025年11月には、広島市で約250人の子どもらが絵画に自由なメッセージを書いた「平和のバナー」を制作した。

 昨年の大相撲初場所で、ウクライナ出身の安青錦が作品をモチーフにした化粧まわしを締めたことも話題に。所属する安治川部屋の後援会長だった中村さんが「戦禍の母国のために戦う姿を応援したい」と贈呈した。

 「ヘリングは美術館に固執せず、公園など子どもたちが集まる場所にアートを作る人物だった」と田中さん。自然を生かした展示や、積極的な発信は「アートで社会を明るくした生きざまを体現したもので、中村館長の思いでもある」と語る。

中村キース・ヘリング美術館に展示された作品=2025年12月、山梨県北杜市

キース・ヘリングの作品をモチーフにした化粧まわしを持つウクライナ出身力士の安青錦(中央左)と中村和男さん(同右)(シミックホールディングス提供)

山梨県北杜市の中村キース・ヘリング美術館

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