1杯のコーヒーに見る「悦己経済」の勢い 中国・淄博市

山東省淄博市博山区にあるカフェでくつろぐ人々。(淄博=新華社配信)

 【新華社済南2月19日】中国山東省淄博(しはく)市博山区にあるカフェ「琢璞・DROP」では、300平方メートル余りの空間の至る所に工夫が凝らされている。同市特産の陶磁器や「瑠璃(るり、ガラスの古称)」が店内を彩り、柔らかな照明と調和して趣を感じさせる。

 店主の鄭若愚(てい・じゃくぐ)さん(36)は、コーヒーが好きで、故郷でカフェを開きたいと願い続けてきたが、ここ2年ほどで多くのコーヒーチェーンが相次いで同区に進出し、機が熟したと感じた。県城(中心市街地)の若者の間でコーヒーを飲む習慣が定着し、スペシャルティーコーヒーに対するニーズが静かに高まっている。

 2025年5月、同区初のスペシャルティーコーヒー店をオープンさせた。店の営業データは需要の旺盛さを裏付けており、祝日・休日には売上高が1日3~4千元(1元=約22円)に上り、平日でも600~700元の収入がある。

 鄭さんは「収入は経費をカバーできている。26年は2号店を出し、デリバリー業務も開始する予定」と感慨深げだ。同区は豊かな文化の蓄積や観光資源を有し、観光を主体とする地域発展モデル「全域観光」へと転換を進めており、鄭さんは故郷の発展がもたらす集客力に強い自信を持っている。

山東省淄博市博山区にあるカフェでくつろぐ人々。(淄博=新華社配信)

 常連客の王梓菲(おう・しひ)さん(29)は、少なくとも週に1度は店を訪れる。「40~50元で友人と心地よい環境の中で午後をゆっくり過ごせ、価値は十分にある」と語った。

 王さんの本音は、中国の県城消費者の新たな追求を示している。彼らはもはや安価な気晴らしでは満足せず、質の高い「体験」に喜んで対価を支払う。

 鄭さんの店からほど近い場所にあるカフェ「白平衡」も人気が高い。店主の李天成(り・てんせい)さんは、フランスのカフェでバリスタとして働いた経験のある「95後」(1995~99年生まれ)で、25年11月に自身のコーヒーの夢を同区で花開かせた。驚いたことに、客層は若者だけでなく、「幼い子を連れたお母さんが親子の時間を楽しんだり、高齢者が新しい味を試そうと立ち寄ったりする」という。わずか十数席の小規模な店ながら、25年のクリスマスには3千元を売り上げ、李さんは県城におけるコーヒー消費の巨大な可能性をはっきりと感じた。

山東省淄博市博山区にあるカフェでくつろぐ人々。(淄博=新華社配信)

 コーヒーの芳醇な香りが小さな街、博山の路地に漂う。これは単にコーヒー文化の定着だけでなく、現代中国人の消費観の変化も映し出している。基本的な欲求を満たす段階から精神的な喜びを求める段階へ、「悦己(自分を喜ばせる)経済」の新たな風がますます勢いを増しつつある。(記者/朱暁光)