IMALU「こんな大変な作業をいつもやってくれてたのか」今になってわかった祖母のありがたみ

2022年8月より、東京と奄美大島の二拠点生活をスタートしたタレントのIMALUさん。コロナ禍でリモートワークが進み、サラリーマンであっても勤務地に縛られずに住みたい場所に住むことが夢ではなくなってきた昨今。実際に都会から拠点を移したIMALUさんの離島ライフを、ご本人に綴っていただきます。

(以下、IMALUさんによる寄稿です。毎月1回更新予定)

「おばあちゃん子」のいとこと語る、家族の記憶

2月初旬、東京で雪が降った日は奄美もとても寒くなりました。我が家はリビングに1台の灯油ヒーターと2つのホットカーペットが置いてあり、寒がりの私はこれらをフル回転させ、毎年一番寒い日を乗り越えています。もちろん内地に比べたら島はかなり暖かいですが、私のような寒がりはどこにいても冬は寒い……。ただ島に住んでいてありがたいのは、寒い時期は一瞬で終わり、ピークを過ぎるといきなりポカポカ天気になることです。2月中旬にはお昼Tシャツで過ごせるほど気温が上がった日もありました。

奄美では『たんかん』のおいしい季節になり、スーパーやコンビニなど様々な場所で売っているのを見かけるようになりました。毎年買ったり、頂いたりして食べているのですが、今年は近所で畑をやっているお兄ちゃんに「これ食べてみて〜」と『スイートレモネード』というフルーツを初めていただきました。「みかんとレモンを合わせた“甘いレモン”みたいな感じ!」と教えてもらい、食べてみると本当にみかんとレモンの間のような味でした。みかんより酸っぱさがあるが、レモンほどではない。そしてグレープフルーツのような酸味が入った甘みがある。とっても美味しく、また新しいお気に入りフルーツが増えました。

ポカポカ天気の日はテラス席で作業(写真/著者提供)

そして2月は東京からいとこが島に遊びにきました。彼女は2年ほど前に初めて島に来て、気に入ってしまい今回がもう6回目。東京から友達や親戚など色んな人がうちに泊まりにくるため、人によって「予定を詰め込むタイプ」や「海でボーっとしたいタイプ」など、様々な旅の過ごし方を見てきていますが、私のいとこぐらい奄美のベテランになると「何もしない」という過ごし方をしています。好きな時に起きて、お昼ご飯を食べて昼寝。また起きて、なんだか出かける気分だったら買い物に出かけ、夜はみんなで晩酌する。この島で“何もしないことが豊かな時間”なんだとか。

私はいとこが9人と多く、中でも彼女は12歳年が上で、私が小さい頃よく面倒を見てくれていました。お姉さんのようで、今では飲み友達でもある不思議な関係。そして私たちが共通してるのは大の“おばあちゃん子”だということ。親戚の集まりではいつも大人数なので、あまり深い話はしないのですが、奄美に住んでから、遊びに来てくれるいとことは一緒に過ごす時間が増え、私が記憶にない頃の祖母のことや、今まで知らなかった家族の話が聞けて、なんだか素敵な時間を過ごしています。

おばあちゃんの思い出の味、コロッケ作りに挑戦

2人でもよく祖母の思い出話をするのですが、今回はそんな話から、【おばあちゃんのコロッケを作ろう】という企画が生まれ、急遽、島でコロッケ作りに挑んでみました。

祖母と幼い頃の私(写真/著者提供)

祖母と一緒に住んでいた私にとっておばあちゃんのコロッケは思い出の味。コロッケ以外でもからあげ、天ぷら、カレー、ハンバーグなど……大好きだった祖母の料理はいっぱいあります。大人になり、祖母のレシピを知りたいと思った頃には既に認知症が始まっていたため、当時レシピが書ける欄があったエンディングノートを購入し、祖母にプレゼントしたことがありました。「おばあちゃんのレシピ知りたいからこれ書いて欲しい!」と伝えたものの、思い出して書くのは一人では難しく、レシピの欄は空白のまま天国に行ってしまったのです。

そんな祖母のコロッケの作り方をいとこが知っていたことは奄美に来るまで知らず……これを機に教えてもらいました。いとこは「おばあちゃん家に行って“コロッケ持って帰りなさい〜”って言って分けてくれた時、嬉しかったんだよね〜」と話してくれました。そうか、私が当たり前のように小さい頃食べていたコロッケは、いとこにとって「おばあちゃん家に行った時にもらえる、おばあちゃんのコロッケ」だったのか。同じコロッケでも思い出の残り方はそれぞれなんだと気付かされました。

コロッケの作り方はシンプルで、特別な調味料も、秘密のトリックもなく、ジャガイモを茹でて、ひき肉と炒めて、揚げるのみ! 強いて言うならジャガイモはゆでてから皮を剥く、炒める時はほんの気持ち塩胡椒が濃いめなくらい……。Googleで「コロッケの作り方」と調べたらできてそうなほどベーシックな作り方なのに、なんでだろうか……不思議と“おばあちゃんの味”が出来上がりました。たまたまなのか、私たちのDNAがコロッケを作るとこの味になるのか……(笑)

私自身コロッケを初めて作ってみましたが、どれだけ面倒くさいかが今になって分かりました。学校から帰ってきた時、いつも祖母はキッチンで夕飯の支度をしていたけど、家事で疲れてるのにこんな大変な作業をいつもやってくれてたのか……と、しみじみ感じる時間となりました。

おばあちゃん子2人の「何もしない」旅の締めくくりは…

そんなコロッケ作りが大成功した数日後。いとこと車で買い物に出かけていると、横断歩道をゆっくりと歩く腰が曲がった島のおばあちゃんを見つけました。あまりにもゆっくり歩くので、走行中の車もおばあちゃんに気を遣ってゆっくり進み、ちょっとした渋滞になっていたほど。「あのおばあちゃん大丈夫かね?」と言いながら通り過ぎ、私たちは簡単な買い物を済ませ、同じ道に戻っていく途中、やっぱりあのおばあちゃんが気になり、おばあちゃんが歩いて行った方向に向かうと、まだ歩いているのを発見。

助手席に乗っていたいとこが「大丈夫ですか〜?」と声をかけると「足を痛めちゃって……」と辛そうにゆっくり歩き続けていたので、どこに向かってるか聞くと郵便局に行きたいんだとか。「乗せていくよ〜!」と言うと「本当に? ありがとう〜」と申し訳なさそうに答え、急遽初対面の島のおばあちゃんを郵便局に送ることに。

「ごめんね〜」と何度も言うおばあちゃん。無事郵便局に到着し、いとこが手助けしながら郵便局の中まで行きました。新しい通帳がもらいたかったらしいが窓口はもう閉まっており、結局何もできず、帰ることに……。「家まで送っておくよ〜」と言うと「お友達がいるから大丈夫」とのことで、近くのお友達のお家まで送り届けました。

郵便局の中まで一緒に行ったいとこが聞いた話によると、おばあちゃんは数年前旦那さんを亡くし、お子さんから車の運転を心配され車も無くなり、1人で暮らしているんだとか。どこに行くのも車が必要な島暮らしには、大変な生活。とはいえ、車の運転が心配なお子さんの気持ちも理解できる。ほんの少しの時間ではありましたが、ご高齢の方の田舎暮らしの大変さを改めて知ることができた気がしました。

お散歩中、海を見るバルー(写真/著者提供)

おばあちゃん子の私たちが少しだけ島のおばあちゃんに良いことができて(自己満ですが)、とても気持ちがいい日でした。いとこの奄美旅は今回も特別なことはせず、“何もしない豊かな時間”を過ごし、東京へ帰って行きました。何もしないからこそ生まれる時間と心の余裕。だからこそできたかもしれないコロッケ作りとおばあちゃん救助。私にとっても、豊かな時間となりました。