トランプ氏と欧州の「蜜月」、イラン攻撃で一部に亀裂

スペインのサンチェス首相は米国のイラン攻撃を厳しく批判した

【ロンドン】過去1年間、欧州首脳の多くはドナルド・トランプ米大統領の不興を買わないように細心の注意を払ってきた。だがイラン紛争を契機に、少なくとも2人の欧州首脳がトランプ氏との「蜜月」に速やかに終止符を打った。

英国とスペインの首相は4日、トランプ氏との舌戦を激化させた。両首相は、米国によるイラン攻撃は国際法違反で無謀だと断じ、支持しない理由を明確に説明した。

スペインのペドロ・サンチェス首相は「何百万人もの人々の運命をロシアンルーレットで決めることはできない」とし、「この紛争に関与する大国は直ちに敵対行為を停止すべきだ」と述べた。

今週に入り、トランプ氏はスペインに対し、米軍の対イラン攻撃への基地使用を認めなかったとして、同国とのあらゆる貿易を停止する構えを示していた。ホワイトハウスのキャロライン・レビット報道官は4日、スペインが米軍に協力することで合意したと表明した。

スペイン政府のアレクサンドラ・ヒル報道官は、同国が現時点でイラン攻撃に協力しているかと問われると、「事実ではない」と一蹴した。

英国のキア・スターマー首相は議員らに対し、合法であり「実行可能で考え抜かれた計画」がない限り、英国は戦争に参加しないと表明。イラン紛争には出口戦略がないと批判し、空爆で政権交代が実現するとは思わないと述べた上、泥沼化した2003年のイラク侵攻を引き合いに出した。

スターマー氏とトランプ氏はここ数日、非難の応酬を繰り広げている。トランプ氏は、スターマー氏が米国の計画を支持せず、米軍が英軍基地から「防衛的」攻撃を開始することを認めるまで数日を要したことに失望したと語った。

トランプ氏は3日、スターマー氏を英国の著名な戦時宰相と比較し、「相手はウィンストン・チャーチルではない」と突き放した。

第2次トランプ政権の発足以来、欧州はトランプ氏の懐柔に努めてきた。同氏がウクライナへの軍事・財政支援を停止した際も不満をあらわにせず、一方的な関税発動にも報復しなかった。また、トランプ氏や米政権高官から激しい批判を浴びても、欧州側は概して挑発に乗ることはなかった。

その理由は単純だ。敵対的なロシアの脅威にさらされるなか、欧州は安全保障に加え、主要なエネルギー供給源、さらには最大の輸出市場として、今なお米国に依存しているからだ。

欧州による抵抗の兆しが最初に現れたのは、グリーンランド問題だった。デンマーク自治領であるグリーンランドの併合を要求するトランプ氏に対し、欧州各国は結束して反旗を翻した。

ドイツなど一部の主要国は、トランプ氏の不興を買わないという従来の戦略に徹している。ドイツのフリードリヒ・メルツ首相は、米国とイスラエルによる軍事攻撃を「イランにとって(中略)そして世界にとって朗報だ」と評価した。戦争を批判することは明確に拒否し、「今はパートナー国を説教する時ではない」と述べた。

フランスのエマニュエル・マクロン大統領は、米国による攻撃は国際法を順守していないと指摘しつつ、米国への公の非難は限定的にとどめている。一方、アイルランドやノルウェーなどは、より率直な発言を行っている。

テヘランの警察施設のがれき

スターマー英首相は、空爆でイランの政権交代が実現するとは思わないと述べた

スペインの社会労働党(PSOE)党首であるサンチェス首相が反旗を翻したことは、それほど驚きではないかもしれない。スペインは軍事費増額を求めるトランプ氏の要求に抵抗しており、ウクライナ支援にも消極的だった。

サンチェス氏はイラン情勢について、「誰かからの報復を恐れるというだけの理由で、世界に害をなす共犯者になるつもりはない」と語った。

こうしたトーンの変化は、特に英国において顕著だ。トランプ氏の再選以来、スターマー氏は同氏と親密な関係を築こうと、なりふり構わぬ努力を重ねてきた。チャールズ国王との面会の場を設けたり、首相別邸でもてなしたりした。英当局者はまた、ウクライナやグリーンランド問題を巡り、トランプ政権への働きかけに舞台裏で奔走してきた。

政治リスクコンサルティング会社ユーラシア・グループの欧州担当責任者ムジタバ・ラーマン氏は、欧州側の目標の一つは米国に紛争の早期終結を促すことだと指摘する。紛争の長期化は欧州に深刻な打撃を与える可能性がある。脆弱(ぜいじゃく)な欧州経済にとって、エネルギー価格の持続的な上昇は大きな打撃となる。中東からの新たなテロや移民の流入にさらされる恐れもある。地理的に、欧州は米国よりもはるかに中東に近い。

トランプ氏は欧州で極めて不評であり、今回の戦争も支持を得られない可能性が高い。調査会社ユーガブの世論調査によると、英国人の49%がイラン攻撃に反対し、支持は28%にとどまる。紛争が長期化するほど、世論の反発はさらに強まる見通しだ。