日中関係が悪化する中…深まる「中韓関係」の実態

習国家主席と李大統領が短期間に相次ぎ会談, 中国の世論調査が示す「意外な結果」, 韓国文化への深い愛情を抱く中国人留学生, 友好ムードの一方、相手国への感情は複雑

最近の中韓関係には回復の兆しも見えてきました(写真:artswai / PIXTA)

日中関係が悪化する中、中国と韓国の関係は対照的な動きを見せている。

【グラフを見る】内閣府が「中国に対する親近感」を調査した。「親しみを感じない」と回答した人の割合

中国外交部やメディアの報道を見る限り、最近の中韓関係は改善傾向にあり、協力も活発化しているようだ。首脳級を含むハイレベル交流が再開・強化され、経済・貿易分野での連携も着実に前進している。

習国家主席と李大統領が短期間に相次ぎ会談

2025年末から26年初にかけて、中国の習近平国家主席と韓国の李在明大統領は、わずか2カ月ほどの間に慶州と北京で相次いで首脳会談を行った。短期間での往来は中韓関係史上でも異例の出来事といえる。

習近平国家主席は1月の会談で「中国と韓国はより頻繁に交流し、往来を深めるべきだ」と語り、中韓関係の改善に意気込む。

双方は「戦略的協力パートナーシップ」の位置付けを再確認するとともに、共通利益を拡大しつつ相違点を適切に管理し、関係の安定的発展を推進していくことで一致した。

経済面でも動きが見られる。中韓自由貿易協定の第2段階交渉は26年1月に北京で行われ、サービスや投資分野を含む協力の枠組み拡大に向けた協議が続いている。こうした動きを背景に、韓国企業の間では中国市場への展開を再び模索する動きも見られる。

国際情勢の不安定化が進む中、韓国の政界・学界・経済界の一部では、中国との協力を現実的な選択肢の1つとする見方も存在しているようだ。

観光分野でも回復の兆しが現れている。26年の春節において、韓国は中国人にとって有力な渡航先の1つとなった。

ウォン安による旅行コストの低下、ビザ手続きの緩和や観光振興策、さらにはKカルチャーの人気などが重なり、中国人旅行者の関心を引きつけている。近頃の日中関係悪化の影響もあり、中国人の海外旅行先が日本から韓国に一部シフトしているとの指摘もある。

韓国から中国を訪れる旅行者も増加傾向にある。転機となったのは、24年11月8日に中国が韓国人に対して15日間のビザ免除措置を導入したことだ。

中国メディアによると、25年の韓国人の訪中客数は約316万人に達し、24年の約231万人と比べて約37%増加した。中国は日本に次ぐ人気旅行先として存在感を強めつつあり、韓国人の海外旅行先の中でも高い伸びを示している。

中国の世論調査が示す「意外な結果」

中国人の対外認識も変化しているようだ。

26年1月に発表された清華大学戦略安全保障研究センターの「中国人の国際安全保障観2025年版」によると、韓国への好感度は対話路線の進展を背景に前年から大きく上昇し、5点満点中2.61となった。日本への好感度は1.90で、調査対象国の中で3年連続の最下位となった。

中国の世論は、経済・文化交流を重視する韓国に対しては軟化する一方、戦略的対立が続く日本には依然として厳しい姿勢を維持している。そこからは、実利と政治を切り離すことが難しい現在の対日認識の構図が浮き彫りになっている。

ちなみに、日本における中国・韓国に対する親近感は、内閣府の「外交に関する世論調査(令和7年9月調査)」からひも解くことができる。

習国家主席と李大統領が短期間に相次ぎ会談, 中国の世論調査が示す「意外な結果」, 韓国文化への深い愛情を抱く中国人留学生, 友好ムードの一方、相手国への感情は複雑

中国に対する親近感。「親しみを感じない」とする者の割合が83.5%だった(出所:内閣府世論調査「外交に関する世論調査 (令和7年9月調査)」)

同調査によると、中国に「親しみを感じる」と答えた人の割合は15.9%で、「親しみを感じない」とする人の割合は83.5%だった。韓国に対しては、「親しみを感じる」と回答した人の割合が54.7%、「親しみを感じない」とした人の割合は44.8%だった。

※「親しみを感じる」とする者の割合は、「親しみを感じる」と「どちらかというと親しみを感じる」を合計したもの。「親しみを感じない」とする者の割合は、「どちらかというと親しみを感じない」と「親しみを感じない」を合計したもの。

韓国で20年間暮らしている中国人の冷さん(50歳女性)に話を聞いた。韓国人と結婚し、2人の娘を育てており、生活はすっかり韓国社会に溶け込んでいる。

彼女によれば、韓国人の対中イメージは世代や経験によって大きく異なるそうだ。中国を訪れたことのない高齢層の中には、中国を北朝鮮やベトナムと同列に捉え、「中国人はマナーがよくない」と考える人もいる。また、実際に中国を訪れた経験のある人々の中にも、その発展ぶりに驚きつつ、公共マナーの面では依然として課題が残ると見る傾向があるという。

冷さん自身は、これまで韓国で差別を受けたことはない。韓国社会は在韓中国人を特別に歓迎もしないが、あからさまに排斥することもないという。ただ、好感度に順位をつけるなら、日本人や台湾人が上位に来て、その次が中国人ではないか、とも冷さんは語る。

習国家主席と李大統領が短期間に相次ぎ会談, 中国の世論調査が示す「意外な結果」, 韓国文化への深い愛情を抱く中国人留学生, 友好ムードの一方、相手国への感情は複雑

韓国の様子。写真はストリート系セレクトショップのALAND(写真:取材協力者提供)

彼女がその転機として挙げるのは、18年の平昌冬季オリンピックだ。大会をめぐり、両国のネット空間では激しい応酬が起こり、反韓・反中感情が広がった。

冷さんにとって特に象徴的だったのが、文化をめぐる論争だ。開会式で中国の朝鮮族が民族衣装を披露すると、韓国で「韓服の盗用ではないか」との批判が起こり、文化的アイデンティティをめぐる対立へと発展した。こうした感情の応酬は、若い世代の相互不信を深める一因にもなったようだ。

韓国文化への深い愛情を抱く中国人留学生

日本と韓国の両方で留学経験のある中国人の趙さん(32歳女性)にも話を聞いた。彼女は12年に来日して慶応義塾大学を卒業し、日本で数年間会社員として過ごした後、24年に韓国のソウル大学に留学した。

彼女はもともと熱心な韓流ファンで、K-POPや韓国文化に強く惹かれてきた。そのため、「現地で学び、暮らさなければ後悔する」という思いから渡韓したという。

趙さんはソウル大学大学院で国際通商を専攻している。大学では国際交流の機会も多い。遊園地ツアーや漢江クルーズ、毎週金曜日の無料コーヒータイムなど、韓国人学生と留学生が気軽に語り合い、ボードゲームを囲む場が設けられている。

そこでは旅行や言語、最新テクノロジーの話題が飛び交い、中国に関心を寄せる学生も少なくない。異なる背景をもつ若者たちが、ゆるやかにつながっていく光景が日常にある。

趙さんは両国の関係について穏やかに語った。「中韓関係って、ずっと緊張したり、また落ち着いたりを行ったり来たりしてきた。それでも、その揺れの中から新しい発展とか、いいチャンスが生まれてくれたらいいなと思っている」。

民間レベルでは、中国に親しみを抱く人もいれば、関心を持たない人もいる。ただ、彼女が出会った学生の中には、中国の都市や文化について生き生きと語る人も多く、その姿が強く印象に残っているという。

習国家主席と李大統領が短期間に相次ぎ会談, 中国の世論調査が示す「意外な結果」, 韓国文化への深い愛情を抱く中国人留学生, 友好ムードの一方、相手国への感情は複雑

韓国の街中の様子(写真:取材協力者提供)

中国人の対韓感情を見ると、大衆文化の分野では比較的強い親近感があるようだ。韓国文化に魅力を感じる中国の若者は少なくない。

筆者が数人の中国人の若者に「韓国と聞いて何を思い浮かべるか」と尋ねたところ、キムチ、K-POP、韓国ドラマ、芸能人、イケメン、化粧品、美容整形などの答えが返ってきた。

いずれも、韓国文化が身近な存在であることを示している。韓国ファッションも若者の間で人気が高く、韓国を「流行の発信地」と好意的に捉える層も多い。

また、歴史問題に関しては、日本に対して共通の立場を取り得ると考える人もいる。

中国の習近平国家主席は、1月に開かれた韓国の李在明大統領との会談で、「中国と韓国は歴史の正しい側に毅然と立つべきだ」とも発言している。この言葉は、日中韓の歴史認識をめぐる対立を背景に、韓国との連携を示唆するメッセージとして解釈されている。

友好ムードの一方、相手国への感情は複雑

しかし、中韓の民間感情は天候のように変わりやすい。伝統文化の起源をめぐる論争やスポーツ大会での摩擦などが中国のネット空間で繰り返され、「文化的ライバル」としての意識も強まっている。

また、韓国が安全保障面でアメリカと緊密に連携していることに対して、中国内で警戒や不満の声も一定程度存在する。多くの研究者やメディアは、近年の中韓関係悪化の大きな転機の1つとして、アメリカ軍が韓国に配備した高高度防衛ミサイル「THAAD(サード)」を挙げている。中国では、これに対して民間からの反対の声も非常に強かった。

韓国人の対中感情も複雑だ。中国は韓国にとって最大級の貿易相手国であり、観光や製造業など多くの分野で経済的結びつきが強い。一方で、政治体制の違いや過去の外交摩擦、中国の影響力拡大への警戒感が韓国内で広がっているのも事実だ。中国人観光客のマナーといった日常的な話題が、否定的な印象を強めることもある。

要するに、両国民の相互認識には「文化交流や経済協力が生む親近感」と「政治やナショナリズムがもたらす対立意識」が併存している。交流が進めば理解は深まるが、外交問題やネット世論が感情を急速に冷やすことも少なくない。

今後の中韓関係では、経済的相互依存を維持しつつ、揺れ動く国民感情をいかに抑え、安定させるかが変わらず大きな課題となるだろう。