モネと響き合う現代美術を見に、フランス・ノルマンディーへ。

March 18, 2026 | casabrutus.com | text_Naoko Aono editor_Keiko Kusano

フランス北西部、ノルマンディーで5月から開かれる『ノルマンディー印象派フェスティバル2026』。第6回目になる今年はモネ没後100年を記念した特別エディションです。日本からもアーティストが参加する、注目の芸術祭です。

蜷川実花(参考作品)。(c) mika ninagawa, Courtesy of Tomio Koyama Gallery

印象派の画家たちとも関わりの深いノルマンディーで2年おきに開かれている「ノルマンディー印象派フェスティバル」。現代のアーティストたちがそれぞれに印象派の作品からインスピレーションを得て作品を制作、展示するものだ。2026年はモネ没後100年を記念して、モネにオマージュを捧げる回となる。日本、中国、オランダ、ドイツなど各国からアーティストやデザイナーが集う祭りだ。

中谷芙二子作品(2011年、ラトビア)。 Stone.Fog , Fog Installation #26318, 2011, Pedvale Open-Air Art Museum, Sabile, Latvia, Photo: Ojars Feldbergs

中谷芙二子作品(2018年、アメリカ)。Fog × FLO - Fog × Hill, Fog Landscape #72509 Arnold Arboretum, 2018, Emerald Necklace Parks, Boston, USA Photo: Noriko Koshida

『ノルマンディー印象派フェスティバル2026』参加アーティストの一人、中谷芙二子は戸外で霧のアートを展開する。中谷は1970年の大阪万博ペプシ館で「霧の彫刻」を発表して以来、人工霧を用いた作品を世界各地で発表してきた。日本では〈国営昭和記念公園〉、〈中谷宇吉郎 雪の科学館〉、〈長野県立美術館〉などに常設作品がある。「ノルマンディー印象派フェスティバル」では春に現地入りし、アーティスト・イン・レジデンスで滞在制作を行う。

蔡國強作品(2024年)。Cai Guo-Qiang, Monet’s Garden No.2, 2024. Gunpowder on canvas. Photo by Kenryou Gu, courtesy Cai Studio

蔡國強は5月31日に「昼花火」のイベントを行う。蔡國強は中国出身、一時日本に滞在し火薬を使った作品制作を続けてきた。現在はニューヨークを拠点としており、紙の上で火薬を爆発させて制作するドローイングや花火による独創的な作品、インスタレーションなどで知られる。日本でも〈横浜美術館〉〈国立新美術館〉などで大規模な個展を行ってきた。「昼花火」は色とりどりの煙を発する花火を打ち上げるというもの。今回はモネの庭園があるジヴェルニー近く、天然顔料を使った花火が打ち上げられる。

〈ルーアン大聖堂〉などで作品を展示する蜷川実花(参考作品)。(c) mika ninagawa, Courtesy of Tomio Koyama Gallery

蜷川実花作品は浮世絵を再解釈したもの。(c) mika ninagawa, Courtesy of Tomio Koyama Gallery

写真家の蜷川実花はモネがコレクションしていた歌川広重らの浮世絵を再解釈、〈ルーアン大聖堂〉とその周辺でプロジェクションマッピングやインスタレーションを展開する。ここではフランスの大物ポップアーティストによるDJイベントも行われる予定だ。

サラ・ムーン作品(2012年)。(c) Sarah Moon

サラ・ムーン作品(1997年)。(c) Sarah Moon

サラ・ムーン作品(2013年)。(c) Sarah Moon

地元フランスからは写真家、サラ・ムーンが参加する。彼女は植物学をテーマに、ジヴェルニーやモネが珍しい植物を入手した〈ルーアン植物園〉などを撮影した。モノクロの静かな画面にモネの思いが息づく。

セレスト・ブルシエ=ムジュノ作品(2019年)。Céleste Boursier-Mougenot, Plage, 2019. (c) Adagp, Paris 2026 – Laurent Lecat

同じくフランスのセレスト・ブルシエ=ムジュノは作曲家でもあり、音をモチーフの一つにしているアーティスト。日本でも〈東京都現代美術館〉や〈ポーラ美術館〉で作品を展示したことがある。彼の作品の一つ、水を張った円盤に浮かべた器が触れ合って微かな音を立てる作品はモネの睡蓮を連想させる。「ノルマンディー印象派フェスティバル」では鐘とブランコを組み合わせたオブジェを展示する。彼にとって初めての屋外作品となるものだ。

アイ・ウェイウェイ作品。Courtesy of Ai Weiwei Studio

中国出身のアイ・ウェイウェイは社会問題とも絡み合うコンセプチュアルな作品で知られる。今回はモネとも関係の深いル・アーヴルの〈アンドレ・マルロー近代美術館〉の新館で新作を発表する。2枚の大きなパネルが向かい合うように置かれた迫力ある作品だ。詩人である父、アイ・シンへのオマージュでもある。

ジャック・ペルコント作品(2026年)。Jacques Perconte, À fleur de forêt, muséeMichel Ciry, 2026

スタジオ・ドリフト作品(2021年、アメリカ)。DRIFT, Meadow Superblue Miami, 2021 (c) Oriol Tarridas

スタジオ・ドリフト作品(2021年、アメリカ)。DRIFT, Meadow Superblue Miami, 2021 (c) Oriol Tarridas

そのほかフランス出身のジャック・ペルコントはルーアン駅などで写真や映像による作品を展示する。オランダのスタジオ・ドリフトはルーアンにある〈サント・クロワ・デ・ペルティエ教会〉でインスタレーションを展開する。

ノエミー・ゴーダル作品(2024年)。2024/Studio Noémie Goudal.

ノエミー・ゴーダル作品(2024年)。2024/Studio Noémie Goudal.

モネは移り変わる光や大気、水の揺らぎを画面に描きとめようとさまざまな試みを行った。それらは霧や花火など消えてしまうものを素材とする中谷や蔡、光の一瞬の姿を捉えようとする写真家たちの態度に通じる。モネが繰り返し描いた〈ルーアン大聖堂〉やエトルタの海岸、《印象・日の出》のインスピレーション源となったル・アーヴルの港などに足を伸ばすのも楽しいイベントだ。

『ノルマンディー印象派フェスティバル2026』

2026年5月27日〜9月29日。ノルマンディー各所にて開催。