東大の推薦型選抜で4位の実績 秋田高校が力を入れる研究の「型」支えるのは「博士号教員」【大学受験特集2026】

都市部と地方の教育格差が問題視されるなかで、東京大学の学校推薦型選抜で、累計合格者数で4位に入るのが秋田県立秋田高校だ。東大の推薦型選抜が始まって11回目になるが、2017年を除いて毎年合格者を出し、累計は16人に上る。地方から東大合格者を次々と輩出する「秘密」を探った。
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秋田高校の強みは熱心な研究指導だ。
「受験のために行っているのではありません」
そう強調するのは遠藤金吾教諭。
秋田県は08年から理数工学系の人材育成のため、博士号を持つ教員を積極的に採用してきた。遠藤教諭も「博士号教員」として採用され、生物の授業を担当する傍ら、生物部や授業で探究の指導を続けてきた。
「研究者として恥ずかしくない状態で大学に送り出したい」
18年間、さまざまな生徒を指導するなかで、遠藤教諭がたどり着いた結論だ。
国内外のコンテストなどで受賞をめざすのではなく、重視したのは研究の「型」だった。研究倫理、研究計画書の書き方、実験条件の組み方、データの統計処理、論文の書き方、プレゼン技法──。研究に不可欠な基礎を、どの時期に、どの順番で教えるかをマニュアル化し、それに沿ってクラス全体に指導している。
研究の基礎は、学習指導要領でも教えることになっているが、体系的に指導するところまで手が回っていない学校も多いという。
「研究には独創性が求められますが、それ以前に方法論があります。論文の形式も実験の組み方も、人類が長い年月をかけて積み上げてきた合理的な知恵です。それを無視して自己流で進めても、説得力は生まれません」(遠藤教諭)
例えば「論文では英数字は半角に統一」「報告書は第三者が誤解しない表現を使う」など、基本の型は細かい。
「生徒が将来、研究者にならなくても、大学では研究をします。指導教員への報告とディスカッションは、社会人に必要なコミュニケーション能力に通じます。将来困らない状態になってほしいという思いも込めています。それらの基礎力が、結果的に大学の推薦入試でも光って見えるのかもしれません」
ある女子生徒は2年生で理数科に進み、生物班のリーダーになった。リーダーになったのは「他のメンバーが忙しそうだったので仕方なく」と、研究に対して積極的なタイプではなかった。
それでも、マニュアルに沿って研究の基本を学ぶうちに変化が見え始めた。

研究データを持ってきて「この薬剤の濃度、先生はどう思いますか?」と質問しにきたのだ。データ処理にも当初は慣れていなかったが、次第に統計処理までできるようになっていった。「論文を読んでいたら、この化合物が条件に合うかなって思いました」と新しい実験条件の提案までするようになった。
授業などを通して研究の型を身に付けたことで、研究の進め方が自身の中で見えてきたのだ。
研究中に笑顔を見せるようになり、学校外でも班のメンバーと研究に熱中するほどになった。
ある日、この女子生徒は「野望があるんです」と遠藤教諭に打ち明けた。将来は臨床医を考えていたが、基礎研究の道に進み、国際的に活躍したいのだという。結果、推薦入試で医学部にみごとに合格し、いまは研究医を目指しているという。
■熊のDNAを研究
全国的な学術イベントは東京など都市部で開催されることがほとんどで、秋田からの移動は予算も時間も多くかかるという不利な面もある。一方、秋田ならではのテーマが生まれることも。
「ハンターをしている方から熊のDNAのサンプルをもらい、分析する研究グループもいます」(遠藤教諭)
大学通信情報調査・編集部部長の井沢秀さんが注目するのは、鹿児島県立楠隼中学校・高校だ。
「宇宙航空研究開発機構(JAXA)の職員による授業があります。本土の公立の中等教育で宇宙について学べるのは珍しいです」
教育ジャーナリストの後藤健夫さんは言う。
「研究は基礎的な『お作法』が大事。それを学び、高校時代から研究に取り組めることは恵まれています。研究も探究も、もっと知りたいと思うことが大事であり、どう学ぶかなんです」
(AERA編集部・井上有紀子)
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