モテない中年に共通するある要素、中年男性を蝕む言語化できない孤独の正体

生きづらさを感じる中年男性は増えている(写真:beauty_box/イメージマート)
40代以降の男性の中には、「生きづらい」と感じながらも、その理由をうまく言葉にできない人がいる。そう指摘するのは、坂爪真吾氏(合同会社ヨルミナ代表)だ。その背景にあるのは、感情や欲求を言語化できない「語彙の貧困」だという。さらに、社会的孤立や性的孤立、コミュニティの喪失によって中年男性は孤独に陥る傾向にあると坂爪氏は言う。中年男性が抱える「見えにくい孤独」の正体について、『モテない中年』(PHP研究所)を上梓した坂爪氏に、話を聞いた。(聞き手:関瑶子、ライター&ビデオクリエイター)
──本書では、「モテない中年」を既婚・未婚を問わず40代以降の男性と定義し、その心情や孤独について分析されています。モテない中年の生きづらさは、どのような点にあるのでしょうか。
坂爪真吾氏(以下、坂爪):そもそも、自分の生きづらさの原因を具体的に理解できていないこと自体が、生きづらさなのではないかと感じています。
自分の感情を言語化するのが苦手な男性は少なくありません。何に困っているのかを言葉にできず、結果として生きづらさの根本原因に気づけないのだと思います。本書では、こうした状態を中年男性の孤立の背景の一つとして「語彙の貧困」という言葉で表現しました。
ただし、中年男性の中には無意識のうちに「語彙の貧困」を選び取っている人もいます。自分の気持ちを伝える手段を持つと、「伝えたい」という欲求や「伝わらない悲しみ」と向き合わざるを得なくなる。その状態を避けるために、あえて言語化を放棄しているケースもあるように思います。
──言語化せずに、自分の現状や生きづらさを認識することは可能なのでしょうか。
坂爪:正直なところ、難しいと思います。人は言語で思考しますから、きちんと考えるには言語化は不可欠です。ただ、「きちんと言語化しましょう」と安易に言うのも乱暴に感じられます。あえて言語化しないことで、自身のプライドや世界観を守っている人もいるからです。
本当の気持ちを言葉にした瞬間、自分が壊れてしまうのではないかという不安をどこかで抱えている可能性もあります。そう考えると、簡単に言語化を促すことはできません。
語彙の貧困は、明確な解決策が見えにくい問題です。結局は、不安や恐怖を自覚しながら少しずつ言葉にしていく。その小さな一歩を積み重ねるしかないのではないかと思います。
──中年期以降の男性にとって、「性的孤立」と「社会的孤立」が大きな課題だと書かれていました。社会的孤立はイメージしやすいのですが、性的孤立とはどのような状態でしょうか。
坂爪:私の考える性的孤立とは、単にパートナーがいない、性的行為の機会がないということではありません。自分がどのような性的感情や欲望を持っているのか、それをどうしたいのかを理解できていない状態を指します。
私は風俗や夜職に関わるNPO活動を通じて、多くの男性の話を聞いてきました。その中には、自分が何を望んでいるのか分からないまま風俗に通っている人もいました。
漠然とした欲求はあるけれど、それを言語化できないため自覚できない。そのもやもやを解消したくて風俗に行く。そうした人も少なくないと感じています。
彼らに共通しているのは、「誰と何をすれば幸せを感じるのか」という基本的な部分が分かっていない点です。多くの人が見ているAVなどを基準にして、「これがエロいのだ」と自分を納得させている側面もあるでしょう。
──逆に、自分の性的欲求を言語化できている男性は多いのでしょうか。
性的孤立から抜け出す方法
坂爪:多数派ではないと思います。買春経験のある男性に話を聞いても、なぜそれをしているのかを説明できない人が大半です。外から見れば何らかの理由があるように思えますが、当人はそれを理解していない。「よく分からないけれどもやっている」という状況は、多少の怖さも感じます。
根底にある欲求が曖昧なまま放置されている。それが一部の中年男性の現状ではないでしょうか。
──性的孤立から抜け出す方法はありますか。
坂爪:正論になってしまいますが、「誰と何をしたときに幸せを感じるのか」を自分で考え、言葉にすることが必要です。ただ、今の社会には、それを支えてくれる人や場がほとんどないため、ハードルは非常に高いと思います。
──同性の友だちに相談することは難しいのでしょうか。
坂爪:そもそも自分の欲求が分かっていなければ、相談のしようがありません。また、男性同士の性的な話題は、武勇伝か単なる下ネタに偏りがちです。真面目な話をしにくい雰囲気があります。
極論を言えば、風俗利用者や買春経験者の自助グループのような場があれば、問題は改善するかもしれません。ギャンブル依存と同様に、性の問題で悩む人も一定数います。そうした人たちが集まり、自分の悩みを語れる場は本来あってよいはずです。それが言語化の助けにもなるでしょう。
──55歳で孤独を楽しんでいる男性の「もっと孤独を楽しむべき」「異なるコミュニティの友だちをつくるべき」という言葉が印象的でした。なぜ孤独を楽しむことが友人関係につながるのでしょうか。
坂爪:私自身の話になりますが、昨冬に『人はなぜ爬虫類を飼うのか』(光文社)という本を出版しました。
私は子どもの頃から爬虫類が好きでしたが、周囲の目を気にして公言してきませんでした。けれども、40歳を過ぎて、自分の趣味を正直に表現してもいいのではないかと思い、本を書いたのです。すると、意外にも反響があり、同じ趣味を持つ人と出会う機会が増えました。
孤独を楽しむとは、自分が何に喜びを感じるのかを見つめ直すことです。それを突き詰める過程で人との接点が生まれる。結果として、「孤独でありながら友人がいる」という状態になるのだと思います。
自分の話ばかりしてしまうのは自信のなさの表れ
──特に独身の中年男性の生きづらさの解決策として、「コミュニティの再構築」「関係性を深めるスキル」「恋愛・結婚への動機付け」を挙げていました。
坂爪:中年男性は、コミュニティに属しにくいという問題を抱えています。家庭や地域、職場など人と関係を築く場が減っているのです。
一方で、推し活などを通じて、お金を払えばコミュニティに参加できる時代でもあります。しかし、関係性維持のための課金には限界があります。風俗や水商売も含め、金銭で関係を保つことは根本的な満足にはつながりません。
理想は、無料で参加できるコミュニティに入り、その活動を続けるために必要な範囲でお金を使うという順番です。
──「関係性を深めるスキル」についてはいかがでしょうか。
坂爪:まず重要なのは「人の話を聞く力」です。中年男性の中には、自分の話ばかりしてしまう人も少なくありません。自慢や説教に偏るのは自信のなさの表れだと思います。自分に余裕がないために、優位性を示そうとしてしまうのです。けれども、会話のキャッチボールができなければ、対等な関係は築けません。
そのためには、自己肯定感や自己効力感が不可欠です。「このままの自分でいい」と思えるからこそ、他人の話を受け止められるのです。
もう一つは「同居力」です。他人と同じ空間で暮らす力です。
取材の中で、「人と一緒に暮らせない」という男性にも出会いました。他人に干渉されたくない、だから自分も干渉しない。その結果として孤独に陥ってしまう。同居力とは、すべてを話し合って解決することではありません。解決できる問題とそうでない問題を見極め、後者には目をつぶる。適切な距離感を保ちながら共に暮らす力です。
──「恋愛・結婚への動機付けの維持」とは、どのようなことでしょうか。
坂爪:人は一人でいると、年齢とともに自信を失いやすくなります。「もう結婚は無理だ」と思い込んでしまう人も少なくありません。
そうした中で恋愛をしたり、パートナーを求めたりするには、動機付けが必要です。その根底にあるのは自己肯定感です。「自分には価値がある」と思えるからこそ、誰かに受け入れられる可能性を信じられます。つまり、自己肯定感を保つことが、恋愛や結婚への意欲の維持にもつながるのです。
モテない中年に必要な自己肯定感
──自己肯定感を維持するには、何が必要でしょうか。
坂爪:誰にでも、成功体験はあります。自己肯定感の低い人は、それを自覚できていないだけです。これまでの自分の人生を振り返って、成功体験を棚卸ししてきちんと自己評価をすれば、自信をつけることができると思います。
──モテない中年に、メッセージをお願いします。

坂爪:繰り返しにはなりますが、今回の書籍の取材を通して、そもそも自分の生きづらさを自覚したくない、自覚できていないことが、中年期に新たな生きづらさを招いている例が多いことを実感しました。
生きづらさを認めることはすごく難しいことですし、したくない、できないことも多いとは思います。ただ、そこを自覚せずにいくと、孤独に陥ってしまいます。
ですので、どんな小さなことでもいいので自分の気持ちを言葉にして、相談も含めてそれを他人に伝える機会があれば、少しずつもやもやを解消していけるのではないかと思います。他人からフィードバックを得て、それを受け止めて行動する、思考できれば、一歩一歩前に進んでいけるのではないかと思います。
坂爪 真吾(さかつめ・しんご) 社会起業家、合同会社ヨルミナ代表 1981年、新潟市生まれ。東京大学文学部卒業後、障害者の性問題の解決に取り組む非営利組織・ホワイトハンズを設立。2015年、性風俗で働く女性のための無料生活・法律相談事業・風テラスを開始。2025年、AIの力で夜の世界の課題解決を目指す組織・合同会社ヨルミナを設立。著書に『はじめての不倫学』(光文社新書)、『男子の貞操』『性風俗のいびつな現場』『「身体を売る彼女たち」の事情』『風俗嬢のその後』(いずれもちくま新書)など。
関 瑶子(せき・ようこ) 早稲田大学大学院創造理工学研究科修士課程修了。素材メーカーの研究開発部門・営業企画部門、市場調査会社、外資系コンサルティング会社を経て独立。YouTubeチャンネル「著者が語る」の運営に参画中。
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