「フォークリフト運転免許」が1位に! 現場が「仕事・転職」に活かせた――と答える根本理由

物流現場における資格の実効性

 ネット求人大手のエン(東京都新宿区)が2026年3月24日に公表した、1189人を対象とする調査は、日本の働く現場に横たわる理想と現実のズレを映し出している。そこに見えるのは、見栄えよりも実利を優先する姿勢である。仕事に関わる資格を持つ人は66%に達し、資格が職を得るうえで欠かせない条件となっている様子がうかがえる。

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 目を引くのは、現場や技術に関わる職種で、実際に仕事や転職に役立った資格の1位が

「フォークリフト運転免許」

で、割合は12%だった点だ。10%の普通自動車運転免許を上回った。この結果からは、現場で求められる力がどこにあるのかが、ある程度は見えてくる。

 高度化が進むなかで、古く見える技能がなぜ上位にとどまるのか。違和感も残るが、その背景には無視しにくい現実がある。ここから、その流れを順に追っていこう。

物流網に残る物理制約

物流現場における資格の実効性, 物流網に残る物理制約, 資格取得に立ちはだかる壁, 資格取得意欲の高まり, 技能と知識を兼ね備えた人材価値

総合転職サイト「エン転職」上で、ユーザーを対象に実施した「仕事に活かせた資格」に関するアンケート。対象は1189人(画像:エン)

 フォークリフトが1位となった背景には、

「日本の物流網」

が抱える避けがたい物理的な制約があるだろう。ECの定着と小口配送の増加によって、情報のやり取りは瞬時に済むようになったが、実際の品物の移動には必ず重さがともなう。仕組みがどれほど進んでも、荷を動かす手段がなければ供給網は止まるのだ。

 2026年の時点では、労働時間の規制強化も重なり、

「荷役にかかる時間」

をどう縮めるかが企業の大きな課題になっている。効率化はかなり進んだが、その分、現場で荷を扱う作業が全体の速さを左右する場面が目立つようになった。情報上の最適な動きと実際の動きをそろえるには、現場での確かな操作が欠かせない。

 自動倉庫の導入は進んでいる。ただ、形がそろわない荷やトラックへの積み込みでは、人の判断と操作をすべて機械に任せるには費用がかかりすぎる。結果として、フォークリフトを扱える人が、滞る荷の流れを動かし、全体の所要時間を縮める役割を担うことになる。12%が役立ったと答えた背景には、現場の進み具合に直接関わる位置にいるという事情があるのだ。

資格取得に立ちはだかる壁

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総合転職サイト「エン転職」上で、ユーザーを対象に実施した「仕事に活かせた資格」に関するアンケート。対象は1189人(画像:エン)

 なぜ他の技術資格ではなくフォークリフトが選ばれるのか――。

 背景には、働く側が直面する資格取得の壁がある。調査では、取得を妨げる要因として、45%が費用の重さ、38%が時間の不足、36%が学び方がわからない点を挙げている。フォークリフト運転免許は、これらの課題に対して現実的な対応がしやすい。費用は数万円ほどで済み、講習も数日で終わる。実技が中心で、習得までの道筋も見えやすい。

 いまは、身につけた技術がどこまで通用するかを見通しにくい時代でもある。そのため、働く側はかけた時間や費用を

「どれだけ早く取り戻せるか」

を重く見る。フォークリフトは短期間で現場に入ることができ、手当などの形で収入にも反映されやすい。この回収の早さが、12%という支持につながっていると考えられる。

 事務系で14%の支持を集める日商簿記が仕事上の共通の基準であるのに対し、現場のフォークリフトは作業を直接動かす力を持つ資格である。

「誰でもすぐに代われる役割ではない」

その位置を確保することが、不安定な環境の中で収入や立場を守る手立てになっているのだ。

資格取得意欲の高まり

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総合転職サイト「エン転職」上で、ユーザーを対象に実施した「仕事に活かせた資格」に関するアンケート。対象は1189人(画像:エン)

 今後取りたい資格に関する調査でも、気になる結果が出ている。

 全体の60%が新たな資格の取得を望み、20代ではその割合が7割に達する。現場や技術に関わる職種でも、15%が「ITパスポート」を挙げて最も多かった。取得を目指す理由としては、74%が技能の向上を挙げており、今の状態にとどまらず新しい知識を取り入れようとする動きがうかがえる。

 ここで挙がったITパスポートは、情報の扱いに関する基礎知識を広く問う国家資格であり、専門的な開発力というより、業務でデータや仕組みを理解し使いこなす力を測る位置づけにある。

 現場のデジタル化が進むなかで、働く側も情報の扱いに対応せざるを得ない。ただ、実際に役立っている資格の1位が12%のフォークリフトである点は見過ごせない。現場はいまも物理的な作業に支えられているという実情が、ここに表れている。事務や営業で1位となった14%の日商簿記と比べると、現場でITの知識を求める動きには、少し違う意図があるように見える。

 フォークリフトのような作業能力に、データを読み取る力を重ねようとしているのだろう。現場の端末を扱い、仕組みが示す数値を見ながら荷を動かす働き方は、これまでの肉体労働の枠を少しずつ広げている。すでに持つ技能を手放すのではなく、情報を扱う力を加えることで、自分の価値を高めようとする動きが見て取れるのだ。

技能と知識を兼ね備えた人材価値

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現場とスキルの未来調査。

 分析から浮かび上がるのは、企業活動や公的支援の向かう先を考えるうえでの示しである。

 企業にとって、採用や育成の進め方は収益に直結する。資格取得の壁として45%が費用の重さを挙げ、38%が時間不足を訴えている以上、これらを支える取り組みは福利厚生の範囲には収まらない。自社の物流を滞りなく動かすための投資として見る必要がある。74%が技能向上を求めている現状を踏まえると、学びを後押しする環境を整えることが、人材確保に直結していく。

 自動化が進んでも、フォークリフト技能が支持を得ている点も見逃せない。現場がすぐに機械へ置き換わる状況にはないことを示している。高額な機械は想定外の事態に弱く、経営上の負担にもなり得る。一方で、状況に応じて判断し、正確に荷を動かせる人材は、変化の大きい市場で引き続き求められる。

 ITパスポートを目指す15%の動きは、新しい働き方への関心を示すものだろう。ただ、実際の業務を支えているのは12%のフォークリフトという現実でもある。この両者をどう結びつけるか。作業の力と情報を扱う力をあわせ持つ組織が、今後の競争で一歩抜け出す可能性が高いのだ。