外国人が日本の理容サロンを旅の目的地に選ぶ理由 「こんな体験、したことがない」 母国では味わえない日本ならではのおもてなし

日本の理容サロン体験をするドイツ人のシュテファンさん(左)【写真:Hint-Pot編集部】
訪日外国人客が急増するなか、旅のスタイルに変化が生まれています。ショッピングや観光地めぐりといった消費型から、母国では体験できない“ここでしかできないこと”を求める旅へ――そのひとつとして今、関心を集めているのが日本の理容サロンです。SNSを通じて口コミが広がり、来日前から予約を入れて訪れる外国人もいるといいます。その魅力に迫りました。
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「日本旅行を新しいヘアスタイルで始めたかった」
ドイツのマンハイムから来日したシュテファンさんは、東京、大阪、京都、しまなみ海道、広島、宮島をめぐる約1か月の旅を計画しています。来日してまだ2日目、時差ボケが残るなか、まず向かったのは東京・新宿にある理容サロンの「ZANGIRI」でした。
「SNSで見たことがあったし、体験という意味で来てみたかった。それに、自分の日本旅行を新しいすっきりしたヘアスタイルで始めたいと思ったんだ」
予約したのは、洗髪、ヘアカット、シェービング、スカルプケア、フェイシャルケア、耳掃除がセットになったフルコース。オーナーの大平法正さんによると、外国人客はフルコースを選ぶことが多いといいます。ドイツでは洗髪とヘアカットが基本で、それ以外は一般的ではないというシュテファンさんにとって、この日は初めて尽くしのメニューでした。
まず、ヘアカットを終えたタイミングで感想を聞くと、シュテファンさんは横に首を振りながら言いました。
「ただのショートカットではあるんだけど、細やかさや技術はとんでもない。こんな体験、したことがない」

この日のためにヒゲを伸ばしてきたというシュテファンさん【写真:Hint-Pot編集部】
すべてのメニューを終えると、シュテファンさんの表情は、さらに晴れやかなものになっていました。
「今までで最高の体験だった。リラックスできて、なんなら途中で眠りについてしまったほど。昨日到着したから時差ボケもあって、眠りもひどかったんだ。それがすっかりリフレッシュできて、めちゃくちゃ元気になってきた。
それに首や肩周りをほぐしてもらえるなんて思ってもみなかった。大きくて重い荷物を持ってきたから、肩周りがこわばっていたけど、本当にすっきりして最高だ」
あまりの満足感の高さに、ドイツへの帰国前に再来店の予約を入れて、店をあとにしました。

「ZANGIRI」オーナーの大平法正さん【写真:Hint-Pot編集部】
コロナ禍後、インバウンド向けに注力
「ZANGIRI」では、外国人からの予約がコロナ禍後に増え始め、現在は全体の約1割を占めます。YouTubeチャンネルは、登録者数が10万人を突破。予約サイトやインスタグラムを通じた問い合わせのほか、周辺ホテルのコンシェルジュを経由して訪れるケースも。客層はヨーロッパ圏のほか、アジアではシンガポールなどからの来店が多いそうです。
大平さんをはじめ、スタッフは基本的に英語を話せないものの、写真を見せてもらったり、場合によっては翻訳アプリを活用したりしながら対応し、トラブルとは無縁だといいます。
「ただ、ヒゲにこだわりがある人もいるので、そのあたりはしっかり先にすり合わせてやっています」
大平さんが施術において何より重きを置くのは、細やかさと丁寧さです。
「細やかに丁寧に行うことで、『ジャパニーズスタイル』として日本ならではの理容の良さが広まっていけば。とても気に入ってくれて、帰る前にもう一度予約をしてくる人や、『次に日本に来るときにも来る』と言って実際に来てくれる人もいます」
日本の“見えない”サービスが旅の思い出のひとつに
全国理容連合会名誉講師の堀純さんは、日本の理容サービスのきめ細かさの背景をこう説明します。
「サービス業として、理容の技術はすべて心地良さを与えるものだという考え方が定着しているからです。これからも時代のニーズに合わせながら、法律の範囲内で進化していくでしょう」
観光地でも食でもなく、理容サロンに足を運ぶ外国人が増えている背景には、単なるヘアカットだけではない、言葉を超えて伝わるきめ細かさや丁寧さ、心地良さがあるのでしょう。そうした日本ならではの“見えない”サービスに触れるひと時が、旅の思い出のひとつになっているのかもしれません。
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