米イスラエルの猛攻、耐え忍ぶイラン

イランが保有するホラムシャハルは大型弾頭を搭載し、射程は約1930キロ以上
米国とイスラエルは約1カ月にわたる戦争で、イランのミサイル発射拠点を標的とし、一部には繰り返し攻撃を加えている。だがイランによるミサイル発射は止まっていない。
軍事アナリストや元米軍将校らによると、イランは戦争初期の空爆でペルシャ湾沿岸近くの基地やトラック発射台が大きな打撃を受けた。そのため現在は、自国領土の奥深くからより長射程のミサイルを発射しているという。イランが発射するミサイルは、1日約12発と大幅に減少しているが、イスラエルや湾岸地域のアラブ諸国にある防空体制が手薄な場所を標的としており、より大きな被害をもたらしている例もある。
また発射されるミサイルの数が減っても、イラン政府が目標を達成する上で役立っている。同国の狙いは戦争を長引かせ、原油輸出国である湾岸諸国と米国に経済的コストを課し、現状を乗り切って次の戦いに備えることにある。
米中央軍の司令官を務めていたジョゼフ・ボテル退役陸軍大将は、イランは「初期のような大規模な斉射は行っていないが、今はその必要もない」と指摘。「実際のところ何かを突破させさえすれば、費用対効果は大きい」とした。
イランのミサイル発射システムは、米イスラエルによる持続的な爆撃に対して回復力を示している。またドナルド・トランプ大統領は、今後数週間での戦争の早期終結を目指している。ミサイルやドローンを使用してイランが中東諸国を脅かすことがないようにすることは、戦争の主要な目的の一つだったが、現在はこの目標が達成されないまま残る可能性が浮上している。

ホラムシャハルは広範囲に小型の集束弾を散布する大型弾頭を搭載している
イランのミサイル兵器が損傷を受けながらも依然として機能している状況で終戦となれば、同国は時間をかけて再建し、地下基地からミサイルを回収して、生産工場を再び稼働することが可能になると一部のアナリストは指摘する。
米シンクタンクでイラン体制の打倒を支持している「民主主義防衛財団(FDD)」のイラン担当ディレクター、ベーナム・ベン・タレブル氏は、「作戦を早期に打ち切れば、生き残った政権や残存国家は、戦争後のシナリオでほぼ確実にそれらのミサイルや発射装置を取り出すだろう」と述べた。
イラン政府のミサイル能力に対処することの難しさは、ヤズド市近郊のイマーム・フセイン戦略ミサイル司令部に対する米国の継続的な攻撃によって示されている。同施設は大型弾頭を搭載し1200マイル(約1930キロ)以上飛行できるミサイル「ホラムシャハル」の重要拠点として知られている。21日に撮影された衛星写真では、地下施設が部分的に陥没している様子が確認できる。また基地から煙が立ち上っている様子もあり、米国の最近の攻撃による被害を示している。
米国とイスラエルの戦闘機は、ヤズド市の南の不毛な山岳地帯に掘られたこの施設を、少なくとも3回攻撃している。戦争初期の1回の攻撃では、空爆が地上の建物を破壊し、山腹にある入り口を損傷させていた。
イランがヤズドから発射を続けられているかは不明だが、攻撃が数週間にわたって繰り返し行われていることは、イランが米国とイスラエルの空爆作戦に適応する方法を見つけていることを示唆していると、軍事アナリストたちは述べている。
カーネギー国際平和財団の核政策プログラムの非常勤研究員であるニコル・グラエフスキー氏は、「彼らは爆撃作戦に耐えられている」と述べ、「作戦の維持できる何かを、彼らは行っている」とした。
海岸から500マイル離れた孤立した砂漠の都市であるヤズドは、米国とイスラエルにとって困難な標的となっている。イスラエルは昨夏のイランとの12日間の戦争中も、イラン国内の最も深い部分への攻撃の一つとして、日中の作戦で同施設をまず破壊しようと試みた。だが2月28日に今回の戦争が始まって以降も、米国やイスラエルの戦闘機は少なくとも2回この施設に戻っている。
米イスラエルによる爆撃が打撃を与えている兆候も見られる。イランは2017年に最新型のホラムシャハルを開発し、より安定した推進剤へと改良してミサイルの発射準備にかかる時間を短縮した。しかし発射中に数発が爆発し、有毒な燃料を空中に噴出させた例もあったと事情に詳しい関係者は述べた。
イランのその他の基地も、複数回にわたって攻撃を受けている。イラン南部にあるもう一つのミサイル施設ハジアバドでは、数週間にわたって空爆が激化している兆候がある。商業衛星会社プラネット・ラボが戦争2日目に撮影した基地の写真には、地下施設につながるトンネルの外で破壊された車両3台が写っていた。中央軍が3月20日に公開した動画では、同じ場所が再び重火器で攻撃される様子が映っていた。

攻撃を受けたイラン南部ハジアバドにあるミサイル基地
米軍とイスラエル軍は、イランのミサイル能力を入念に破壊していると述べている。
両国の軍用機は、イランのミサイル搭載移動式発射台を追跡し、数十カ所の洞窟基地の上空を旋回して、車両が発射のために出現した際に攻撃。さらに重爆撃機からの波状攻撃でこれらの施設に爆弾を投下し、一部ではイラン側の兵器を埋没させてきた。
その結果、イランは開戦初週のように数百発のミサイルやドローンを発射する能力をもはや持っていないようだ。同国のミサイル生産施設は壊滅的な打撃を受けており、かつて手ごわかった兵器庫についても、迅速な再建ははるかに困難なものとなっている。

ミサイル攻撃で大きな被害が出た現場を訪れるイスラエルのネタニヤフ首相(3月22日)
中東地域の最高司令官であるブラッド・クーパー海軍大将は25日、米国がイランでこれまでに1万カ所の標的を攻撃し、イスラエルが「さらに数千カ所」を攻撃したと述べた。またイランのドローンとミサイルの発射率が90%以上減少しているとも指摘。イランではミサイル、ドローン、海軍艦艇の生産施設の3分の2以上が破壊されている。
米中央軍が公表した動画の声明で、クーパー氏は「米軍と地域の近隣諸国を攻撃するイランの能力は、大幅に低下した」と述べた。
イスラエル軍は、イランが保有すると推定される470基の移動式ミサイル発射台のうち約330基を破壊または無力化したと発表している。これらの発射台の約半数は空爆で破壊され、残りの半数はイスラエルが地下施設へのトンネル入り口を攻撃したことで使用不能となったという。発射台は攻撃前に地上に出現するまで、このような地下施設に隠されている。イスラエルは、イランが戦争前に最大2500発の弾道ミサイルを保有していたと推定している。
それでも、イランはホラムシャハルやその他の種類のミサイルを発射する能力をまだ維持していることを示している。
イランは先週末、イスラエルのディモナとアラドの両都市を攻撃。この際には兵器庫の中で最も射程が長く、最大重量を運べるホラムシャハルを使用したとみられる。ミサイルは広範囲に小型の集束弾を散布する大型弾頭を搭載している。

3月22日にミサイル攻撃を受けたイスラエルのアラド
米シンクタンクのスティムソン・センターのケリー・グリエコ上級研究員は、攻撃に関する公開情報の分析結果として、イランのミサイルは戦争初期よりも高い確率で標的に命中していると述べた。イランは軍事目標への発射から、石油施設、ホテル、民間地域への攻撃にシフトしているという。
グリエコ氏は「命中すれば、より大きな影響を与える」と述べた。
イランは国内各地に独立したミサイル司令部を設けており、現在の発射率を維持するには各司令部が1日に1発から2発撃つだけでいいと専門家たちは述べている。イランの部隊は、航空機が近くにいないことを確認したうえで、発射台を急いで出して攻撃することや、空爆で崩壊したトンネルで撤去作業を行える。
ミサイル防衛擁護同盟(MDAA)の上級研究員で、数十年にわたってイスラエルの防空システムの開発に携わったタル・インバル氏は、「イランは非常に広大な国であり、あらゆる場所に監視の目があるわけではない」と述べた。